ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

マキャベリの『君主論』から

故バリー・ルビン先生(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130503)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130925)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140204)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140205)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140214)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140219)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140306)の遺書のような最後の著『沈黙の革命』(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140425)を読み終わったところである。
要するに、現在もなお、形を変えたマルクス主義の孫世代の「第三の左派」が、いかに現在のアメリカの「進歩派リベラル」を名乗る人々によって席捲しているか、それがどれほどアメリカ本来の発展の基盤となった自由主義を崩壊へと導いているか、その意味で、オバマ政権がいかに危険なのか、ということを渾身の力を振り絞ってまとめた著であると言える。
今の中東情勢を見ていると、アメリカ外交の混乱や弱体化が裏付けられている。つまり、ISISなどのムスリム過激派勢力に足下を見られているということだ。
そして、日本の国力低下の一原因として、この「第三の左派」勢力の影響を受けている点も否めない。
一言で「アメリカは」というが、アメリカにも大きく分けて、この勢力と、それに断固反対する伝統尊重の保守派とがある。だから、日本が「アメリカの言いなりになる必要はない」と公言する時、その「アメリカ」なる対象を誰と定めているのか、あるいは、どの政権を指しているのか、または、どの思想を有する政治勢力を意味しているのか、はっきりさせなければならない。
ではここで、久しぶりにフェイスブックからの転載を(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140609)。

https://www.facebook.com/ikuko.tsunashima

24 June

Daniel Pipes: What does the fall of Mosul mean?
www.meforum.org
http://www.meforum.org/4734/fall-of-mosul
http://www.danielpipes.org/14484/isis-conquests-iraq


The implications of the fall of the key city of Mosul to the Islamic State in Iraq and the Levant (ISIS), a designated terror group, can be understood in three...


何とも暗澹たる中東展望。分析は鋭く、的確だと思います。日本から見ていると、(だからあの時、言ったのに)というところでもありますが、当時は当時なりの大義名分があったのでしょうねぇ。

24 June
河合一充 『くだん日記』「イラクの教訓 イスラエルの考え方の正しいことを証明」
kawaikazu.blog73.fc2.com


私:全く同感です。最近、マキャベリ君主論』を読みました。学生時代には権謀術数だと教わり、そのように試験答案に書かなければならず、敬遠しておりました。今読んでみると、現在の日本に対する示唆を記していることに驚かされます。フィレンツェの君主が進言を無視して中立政策を取り、自国軍を持たなかったばかりに、結局は主導権を失った無念さが、教訓として伝わってきました。


お返事をいただきました。
Kazumitsu Kawai トップリーダーの決断が誤れば、その国あるいは組織は優れた部下が居ても危なくなりますね。


私:河合一充先生のおっしゃるアメリカによるイラク政府軍の訓練と防衛の件ですが、もっと具体的に、前もって懸念されていたのが、アメリカのダニエル・パイプス先生です。


以下の拙訳をお読みください。
「特殊作戦部隊の気に懸かる将来」
http://www.danielpipes.org/blog/14483

昨今の国防政策を巡って、喧しいデマゴギーやら何やら、本当に恥さらしみたいな日本のメディア。ところで私、マキャベリ氏から、多くの教訓を得ていたのだった(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140605)。彼も、誤解されたフィレンツェの官僚だったようだ。実体験から来る苦い教訓を、わざわざ書き残してくださった古典を、どうして我々が「権謀術数」の一言で断罪してしまえるのだろうか。
日本では、どうやらビジネスマンの実用書として読まれているみたいだ。いかにも日本的という気もするが、中立政策の危うさとか、自国軍を持たない国は滅びるとか、愛されるよりも恐れられる指導者の方がいいとか、なかなかよいことが書かれている。
以下に抜粋を。

・非武装が、あなたのうえにおよぼす弊害はさまざまだが、とくにそれによって、あなたが人に見くびられることである(p.111)。


・君主は、かたときも軍事上の訓練を念頭から離してはならない。そして平時においても、戦時をもしのぐ訓練をしなければいけない。(中略)一つは行動によるもの、もう一つは頭を使ってするものである。(中略)自分がつねに猟場に行き、狩猟をとおして困苦に耐えるように、身体を慣らしておくことである。(中略)第一に、自分の国をよく知るようになり、領土の防衛についてより深い理解がもてる。第二に、各地の地形の概念がつかめ、実地を知り、たとえどんな地方におもむいて、あらたに探索する必要がおきても、らくに把握できる。(pp.112-113)


・頭を使っての訓練に関しては、君主は歴史書に親しみ、読書をとおして、英傑のしとげた行いを考察することが肝心である。戦争にさいして、彼らがどういう指揮をしたかを知り、勝ち負けの原因がどこにあったかを検討して、勝者の例を鑑とし、敗者の例を避けねばならない。とりわけ英雄たちが、過去に行ったことをそのままやるべきである。(p.114)


・聡明な君主は、こうした態度をこそ守るべきである。平時にあっても、断じて安逸をむさぼることなく、この心がけを金科玉条として励み、逆境に立ったばあいにも、十分に生かせるようにしなくてはいけない。(p.114)

これに関して、パイプス先生の中東分析法を巡って、6月20日付でマキャベリについても論じたメール交換をご紹介する。

1.インテリジェンス官僚は、通常、一般向けに公開された情報(例えば、新聞雑誌、テレビ・ラジオの番組、政府統計、広告等)の90パーセントを、最も重要な分析情報として用いると聞いております。
それに同意されますか?ご自身の分析にも適用されていますか?


パ:全くだ。政府にいた時には国家機密情報を利用して、ほとんど自分の分析には追加しなかった。あちこちの詳細だけだったね。


2.これらの一般情報において、どのように、歪曲された陰謀プロパガンダから正確で信頼できる情報を見分けられますか?時々、一つの情報の中で、その両方が巧妙に入り混じっていますが。


パ:僕は、『陰謀』の自著に膨大な時間を費やしている。もし興味があれば、送ってあげられるよ。


3.ツィッターの目的は何ですか?


パ:大半は、ブログや論考文を書く時間や興味がなかったりする、小さな考察を出すためだ。第二に、ブログや論考文を知らせて、フォロアー人数を増やすためだ。


4.マキャベリは、中立政策が国を破滅的な状況に導くであろう、最も危険な政策だと書きました。日本では、客観性あるいは成熟という名のもとに、困難な状況下で、中立的な立場や、いわゆる「バランスの取れた」見解を保つことが、美徳だと考えられているように私は思います。でも、特に先生のお仕事を学ぶと、徐々にマキャベリに同意するようになってきます。


パ:マキャベリの時代のように、領土を巡ってプリンス達が争っていた事柄には、中立主義は素晴らしい。拮抗する生命(暮らし)の展望が闘争中にある今日では、中立主義は素晴らしくない。善と邪悪の間で、中立であってはならない。

最後の、「善悪に関しては、中立主義ではなく、断固とした立場を取るべき」という点について、6月21日から22日にかけてのやり取りから、続きメールを。

私:えぇ、同意いたします。でも、典型的にアメリカ風の善悪間のこの二元主義は、あまりにも単純過ぎるようだと批判をする人々もいます。

そのお返事。

パ:ファシズム共産主義、あるいはイスラーム主義のような、恐ろしい全体主義イデオロギーを扱っている時、それは単純ではない、と僕なら言うね。

私:私は、そのような特定のイデオロギー問題に適用された方法論やアプローチについて語っていたのです。主にそれは、アメリカ合衆国が世界の中で、国としてあまりにも多様であまりにも巨大なので、政治的アプローチは、できる限り単純でなければならないからだと、私は推測します。

送ってあげる、と言われた『陰謀』の本は(http://www.danielpipes.org/books/conspiracy.php)、実は2012年に入手して既に読み、ブログにも書き(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120131)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120524)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120610)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120612)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120618)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120804)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130508)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130605)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130630)、以前にも何度かメールでお知らせしてあったのだが、国内外を飛び回り、ご多忙なために、すっかりお忘れらしい。蛇足ながら、以前にも「買わなくていいよ。送ってあげる」と言われた小さな本があるが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120519)、待てど暮らせど、結局は送られてこなかった。つまり、私の憶測に拠れば、それは文字通り受けとめるべき言葉ではなく、単純に「僕の仕事に理解を示してくれて、とても嬉しいから感謝の意を」という意図なのだろうと思う。
ニューヨークでも、ペンとメモ帳を返礼に手渡されたが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140510)、後で私の日本土産を見てご由緒に驚き、「もっとあんたにぴったりの物を送るよ」とまで言われたものの、娘さんに渡した名刺に住所があると返事をした途端、面倒になったのか、娘さんが教えなかったのか、送られてはこなかった。
こういう何とも言えない愛嬌というのか脇の甘さというのか、悪気のない忘却がある点、やっぱり「パイピシュ先生」(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120616)なのだ。私のような一般市民レベルとも「友達」(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140508)関係が成立する、いわば両成敗的な側面だ。
だから、あまり悪意だとは考えていない。いつでも聞き流している。欲しいものは自分のお金で買うし、特にパイピシュ先生におねだりして買って欲しいものがあるわけでもない。意見交換の時間を割いていただけるだけでも、私にとっては得難い経験だ。
余談だが、陰謀への対処法については、私も過去ブログ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120612)で対策を披露した。
さて、マキャベリについて少し回りくどい書き方をされているのは、恐らく日本文化に対する遠慮からだろう。日本は日本で、よくわからない文化だが、少なくとも戦後は、特にアメリカの利害を損ねることはしていないからだ。ただし、マキャベリの教訓は、もっと辛辣だ。

・決断力のない君主は、多くのばあい中立の道を選ぶ。(p.26,170)
・そして、おおかたの君主が滅んでいく。(p.170)

ついでながら、今日投稿したアマゾン宛感想を転写(http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4121600029

「権謀術数と教わったが...」 2014/6/26
by  ユーリ

君主論』(中公クラシックス)(単行本)


マキアヴェリと言えば「権謀術数」。そのように学校教科書には書いてあって、試験でもそのように書かなければならなかった私の世代。そのため、長い間、読むのをためらっていた。
でも、ふとしたきっかけでこの訳文を入手し、読んでみた。今の日本が直面している国防問題の低迷なデマゴギー(?)に対する強力な示唆だとわかる。つまり、マキアヴェリ自身が、不毛な偏見に悩まされてきたということだ。
随所で「マキ」と愛称を出して訳し分けている訳者氏の、マキアヴェリに対する深い愛情と綿密な研究姿勢がうかがえる。

今の日本への教訓:自国軍を整備しない国は滅びる。愛されるよりも恐れられる指導者の方がよい。

フェイスブック転載の続きを。

どうぞ。日本でも有名なクラウトハマー氏へのインタビューです。
「チャールズ・クラウトハマーとの対談:アメリカの『偉大な成功物語』」 :: Daniel Pipes
http://www.danielpipes.org/14510/

24 June

これを訳して提出した時には、「長文を訳してくれて、ありがとうね!」と大喜び。難しいと痛感したのは、当時のクラウトハマ−氏の見解が、微妙にパイピシュ先生と異なっており、しかも、結果的には、パイピシュ先生の方が現在の知見では妥当だった、という点。つまり、いくら中東分析をしっかりやっているつもりでも、情勢に応じて、論客に対する注目度が違ってきてしまうのだ。
上記のインテリジェンスに関する質問は、実は、この訳文をつくる過程で生じた問い。大切なのは、政府の仕事をしていた時に機密情報に触れていたパイピシュ先生が、情報そのものの質と当否を実地で経験し、実は一般情報から見抜く方が重要だと悟られていることだ。
続きを。

日本に好意的だというパイプス論拠の一つがこれ。2013年8月11日にメールで提示されました。少しずつ訳して、やっと昨日提出できました。2012年に原著を読んだ時には、(どうして変な事例ばかり集めて本にまとめたんでしょう)と不思議で、時々、笑わされました。恐らくは、ユダヤ人の歴史にある悲劇性の原因を探りたかったのでしょうねぇ、パイプス先生。ほろ苦さとペーソスの漂った本です。かなり時間をかけて書いた本だとおっしゃっていました。よろしければ、原著をどうぞ。


「補遺A:悪意から出たのではない反セム主義」 :: Daniel Pipes
http://www.danielpipes.org/14511/

「英国やその他どこでも、地位にある多くの人々に私は尋ねてきた。なぜ国はシオニストに屈服したのか。そして、彼らの誰もストレートな回答を与えることができなかった。金ではな...

この訳文には、先程「この貴重な翻訳を、本当にどうもありがとう!」と、喜びメールが届いた。これこそが、上記の“Conspiracy”のほんの部分訳。このように「混乱したユダヤ人観」を持つ日本だからこそ、「悪意なき反セム主義」だと、大目に見てもらっているわけだ。あまり自分流の勝手な思い込みで好意を寄せ付けない方が、あるいは賢明かもしれない。
「自分流の勝手な思い込み」に関しては、同じフェイスブックから以下の三点をどうぞ。

「負けても忘れないマナーの心!日本人サポーターの観戦マナーが世界中で絶賛される」


私:この話、うれしい反面、どこまで真意が伝わっているのか不安。というのは、マレーシアやインドなどでは、「日本人のマナーの良さ」としてではなく、「あ、やっぱりこの日本人達は下層階級の小間使いだったんだ」と勘違いして、堂々と差別してきたからです。そんな経験を少ししたことがあります、私。
19 June

お二人(ユーリ注:アンドリュー司祭と第三代クアラルンプール大司教)とも、過去に面談させていただいたことがあります。問題は、こちらの意識と見通しの方が先行していて、現場の長の意識が曖昧で甘いことです。はっきり言ってしまえば、こちらの見通しの方が、残念ながら当たっているのです。物は試し、とでも言いましょうか。現地主導も善し悪しです。


Church 'greatly disappointed' with verdict

Father Lawrence Andrew, editor of Catholic weekly The Herald, said the church was "greatly disappointed" with the Federal Court's decision today.

Speaking to the press outside the court room, Andrew had few words for the four out of seven judges who decided against the publication's appeal.

Read more here: http://www.malaysiakini.com/news/266536
24 June

今でこそこんなチャート(ユーリ注:キリスト教で‘Allah’を使用していた経緯)が簡単に出てくるマレーシアですが、私が問題に気づいた1990年5月頃には、半島部のクリスチャン達は、「我関せず」「センシティブ」の一点張りで、資料もなく、ただたらい回しにされるだけでした。
24 June

(転載終)