ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

マレーシアの ‘Allah’ 問題の続編

本当に久しぶりに、「神の名」を巡るロバート・ハント先生(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%A5%CF%A5%F3%A5%C8%C0%E8%C0%B8)とのやり取りです。再びフェイスブックからの転載を(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140108)。

(https://www.facebook.com/robert.hunt.5621)
6 January
A small introduction to what is happening in Malaysia - where Progressive Muslims are willing to stand up to the Islamists in public.


Progressive Muslims defend Klang church
beta.malaysiakini.com
Amid threats of protest by Muslim pressure groups at a church in Klang this morning, progressive Muslims made a stand outside the church to defend their fellow Christian ...


・(Lily):I am just wondering when this long-term issue will be ended, Dr. Hunt. Marina has taken a small initiative as always, but is it really leading to a real solution?
7 January
・Robert Hunt:I know what you mean. I think until the political leadership changes nothing will really change. They need leaders capable of getting rid of the radical nationalist/Islamists that control JAIS.
Yesterday
・(Lily):Thank you for the reply, Dr. Hunt. Yes, I totally agree with you.
6 minutes ago

これだけだと背景がわからないかもしれませんので、少し補足を。
マレーシアにおけるマレー語を使用するクリスチャンの「神の名」(Allah)問題で、スランゴール州のムスリム当局と緊張が高まる中、第四代マレーシア首相マハティール氏の長女マリナ・マハティールさんが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/archive?word=%22Marina+Mahathir%22)、クランにある比較的大きな白壁のルルド聖母マリア教会の前で、花束を手に、仲間の「進歩的ムスリム」達と立ち、クリスチャン達への抑圧措置に対する抗議姿勢を表明しました。それが冒頭のニュース(出だしのみ)です。英語ブログの方には、マレー語ニュースと英語ニュースの両方を掲載しました(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20140105)。つまり、「ムスリムといっても、進歩的なムスリムはクリスチャンの‘Allah’使用に反対しませんよ」という意思表示です。
実はこのマリナさん、長年、エイズ患者のためのNGOを率いて活動してきましたが、数年前のムスリムによる教会放火事件の際にも(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100111)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100112)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100113)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100118)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100126)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20101231)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120124)、クリスチャン側に立って「これはマレーシアじゃない」と発言し、キリスト教側を擁護していました。さらに、1年ほど前、過激なムスリム集団がクリスチャンのアラビア語系の語彙使用に断固反対すべく、マレー語訳聖書を燃やせという騒動を起こしていた際、その反対表明として、KLCC前の大広場へ自発的に集まって静かに読書にふけるデモンストレーションを誘導したのもマリナさんでした(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20130131)。(但し、ややこしいことには、その時の「読書」材料たるや、その数年前にマレーシア当局によって発禁扱いになったカレン・アームストロング(http://www.danielpipes.org/13754/)の別の著作だったというおまけつき。)
要するに、元首相の娘としての公的立場を生かして、いわば‘穏健な’モダン・ムスリムの立場を出し、クリスチャンにも理解を示しているというわけです。それを「進歩的」と呼べるのかどうか私には何とも言えませんが、現地のクリスチャンにとっては、一つの雄弁な味方ではあります。
マリナさんは、お母様と同様、普段はトゥドン(スカーフ)なしで活動していますし、家庭でも英語で育ち、英国で高等教育を受け、マレー語では自分を充分に表現できないと公言するムスリマです。確か一時期、神戸にも暮らしていたことのある、著名な政治家の娘ならではの特権階級に属しています。英語紙にコラムを書き綴り、社会活動も活発で、確かに「ムスリムと言っても、私だってムスリムですよ」という自己表明として最適モデルのお一人でしょう。
彼女が立ち上がるのは大変結構だと思いますし、何もムスリムから行動が出ないよりは遙かにましですが、しかしお父様が現役首相だった1980年代に始まった語彙使用禁止問題について、娘マリナさんの力で、三十年以上も続いている本件を解決する見通しが果たしてあるのかどうか、というのが私の疑問です。それで、ハント先生へコメントしたというわけです。
それに対するハント先生の応答は、「意味していることはわかる。政治指導者達が変わるまでは、何も本当には変わらないだろうと思う。スランゴールのムスリム当局(JAIS)をコントロールしている、過激なナショナリストあるいはイスラミスト達を取り除く能力のある指導者達が必要だ」というものです。
まさかお返事がいただけるとは思ってもみなかったので、ちょっとうれしかったです。しかも、十数年前から、マレーシアの神学校でのリサーチを手伝ってくださり、いざという時、さりげなく車を出してくれたり、家に泊めてくださった華人の方が、何年かのアメリカ滞在から戻って来られてしばらく経った現在、ちゃんと見ていてくれて、私のコメントに「LIKE」ボタンを押してくれたのも、とてもうれしいことでした。