ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

学究肌で一途な性格

学究肌で一途なダニエル・パイプス先生の性格は、うまく運べば専門性で凄い力を発揮するものの、個人面では、下手をすると人間関係がこじれる可能性もあります(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120405)。
これまでにも、輝かしい才能と学歴と経歴をお持ちなのに、不満を溜めながら職場をどんどん替えてこられた理由の一つが、まさにこれ。少しでも異論があると、一人で誰とでも堂々と対論を挑み、相手が折れないと自分から居場所を探して動いてしまったらしいのです。ある場所でのご講演でも(http://www.danielpipes.org/7436/the-threat-to-israels-existence)、「うまくいかなければ離婚だ」と言い切っていらしたので(ついでにご自身の私生活でも実践なさったようです!)...。普通ならば、そこで家族のためとか将来のためを考えて、ぐっと我慢するかもしれないのですが、余程ご自身に自信をお持ちなのでしょうか?
極東の日本国に住む私としては、一年以上経ってコツがつかめたので、毎度のことながら「かわいいおじさま学者パイピシュ先生」と思っていますが...(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120508)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120528)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120607)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120616)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120627)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120804)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120812)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120924)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121101)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121128)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121129)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121230)。
先日のペサハのセデルのご報告の時にも(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130331)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130403)、実は一悶着ありました。私がユダヤ教に関心を寄せていることは素直に喜んでくださったのですが、どうしても黙っていられない一点があったようで、わざわざ私の書いた文を引用して、反論されたのです。

私:「お隣に座られたミルトス出版社の社長様は、先生に私が一貫して温かく受け入れられてきたことを喜ばれました。社長様がおっしゃったのは、世界中のユダヤ人は事実上、家族なのであって、彼らの間で激しい政治討論があるように見えても、深いレベルでは相互に理解し合っているのだということです」。

1968年の大学紛争以来、それまで友達だと思っていた仲間を失って孤立しながらも、人生を賭けて左派勢力と闘って来られたパイピシュ先生(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120507)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120731)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120917)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120924)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121020)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121117)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121129)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121225)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130124)、この指摘にカチンとこられたようで、早速、次のように書き送って来ました。

パ:「残念ながら、意見を異にせざるを得ないんだけど、これは僕の経験では全くないよ。僕を攻撃する左派ユダヤ人は敵なんだ。共通項なんてない。深いところでの理解なんてないよ」。

相変わらず、子どもみたいに真っ正直で真っ直ぐなパイピシュ先生。読みながら笑っていたら、(かつてアメリカ駐在中に、ユダヤ人と一緒に仕事をしたことのある)うちの主人が「ユダヤ人って、とっつきにくいけど、そうやってストレートに書いてくるなんて、正直な人なんだよ、パイプス氏は...」。
しかし、その正直さが仇になっている面もありませんかねぇ...。「敵」だなんて、けたたましい。もうちょっと外交的に振る舞っていれば、もっと楽な人生になったかと思うのですが。

そこで私は、書きました。

何を差し置いても、私の意図を誤解なさらないでいただければと願います。中東の専門家ではない者として、私は各見解に関して、特に否定的な判断をする立場にはありません。それに、あの社長様は、日本の政治的宗教的な次元で、むしろ保守的な立場を取られていると思います。民族主義的で大変に誇り高い日本人でいらっしゃいます。


1. ミルトス社のミッションは、ユダヤの歴史と文化、イスラエル国家、ヘブライ語聖書学、中東の国際関係について、日本人にとっての一般理解を促進することです。そして、イスラエル大使館にも認められてきました。それゆえ、ミルトスの社長様は、ユダヤ史やイスラエル国家の現在の政治状況について、全体像を提供するために公平でなければならないのです。


2. 社長様が、かつてベンジャミン・ネタニヤフ氏より感謝状を受け取られたことを、私は知っています。1997年にミルトス社が、ネタニヤフ氏の『テロリズムとはこう戦え』を邦訳出版されたからです。ですから、先生のお立場も理解なさっていることと、私は信じています。


3. 同時に、ミルトス社は、ユダヤ人国家の異なった側面を紹介するために、故イツハク・ラビン氏による『ラビン回想録』やキブツの歴史に関する本も出版してきました。そのような話題について大半の人々が充分に理解していない日本で利益を生むために、ユダヤ人の間にある他の政治思考を扱うのは、ミルトス社のような小さな会社にとっては自然だと私は考えます。それは、左派対保守派の二分法とは全く無関係です。


4. 私自身に関しては、イスラエルでも日本でも社会主義を支持しません。例えば、歴史において、どのように労働党がアラブ人に何回も裏切られてきたかを私は見ています。他の例では、本質的なその集団志向、人工的な平等主義のために、キブツ制度で子ども達がうまく育たなかったことを私は見ています。同時に、キブツは、初期ユダヤ人国家にとって、組織的に自分達で土地を耕すために部分的に必要だったというのが私の理解です(ユーリ後注:(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20130930)を参照のこと。キブツ生活の長かった作家アモス・オズ氏も、皆が同じ食べ物、同じ服、同じ地区、同じ仕事をすることで、わがままや嫉みやゴシップなどが消えると考えたものの、これはナイーブで非現実的な考えだったと述懐され、その代償として自己犠牲と一定の抑圧が存在したと査定されています。)


5. 今日の結論は、内部の視点と外部の視点があるということです。非ユダヤ人として、私は先生の著述から、一歩一歩、内部の視点を今でも学んでいるところです。理論的には、先生は分析において全く正しいと私は考えています。なので、ここで繰り返しますが、いつでも基本的に先生を支持して参りました。いずれにしましても、外部者として、私はユダヤ人の内部口論に触れる望みはありません」。

言わずもがなですが、「理論的には」の含みは「実践面では違う方法もあり得る」、「基本的に」のニュアンスは「各論細部では異論もあり得る」ということです。(後注:キブツに関する言及は、かなり前に英語か日本語の研究論文で、「皆が平等だという高邁な社会主義的理念を掲げたキブツでは、かえって子どもの個性がうまく育たず、やはり親が育てた方が伸びる」という調査結果を読んだことに基づきます。)
だいたい、アメリカの国益を中心とした中東専門のシンクタンクの所長/会長さんと、日本ではマイナーだとされる分野の一般理解促進のための出版社の社長さんとでは、親イスラエル派という点で一致していても、見方に幅の相違が出てくるのはやむを得ないのではないでしょうか?どう頑張っても我々は外側からしか理解できず、最初から限界がある上に、包括的理解に留まらざるを得ないのです。しかも、例えば、ベン=アミー・シロニー先生(http://www.facebook.com/?ref=tn_tnmn#!/shillony)やドナルド・キーン先生(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120407)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120507)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130116)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130125)や故グロータース神父さま(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120411)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120522)などの日本研究のように、外国人の日本理解だって、我々が気づかない盲点を指摘したり、かなり好意的なものが前面に出ていませんか?だからといって、我々が「いえ、日本人同士は天皇制では鋭く対立していて...」と反論したとしたら、ただ苦笑されるのみでは?かくいうパイピシュ先生だって、昔書かれた日本論、相当な日本贔屓でしたよ(http://www.danielpipes.org/topics/16/japan)。

...さすがに、パイピシュ先生、負けて悔しいと思ったのか、何らお返事はありませんでした。ところが、特別に頼まれた最新の論考文を訳して数日後に送ったところ、やっぱり気になっていらしたのか、即座にお返事がありました。「よくやったね、ありがとう」。
これですよ、これ。もう、ほんとに、だから「パイピシュ先生」なんですってば...。
しかし、これほど片意地張って頑張らなければならない必然性というものがあります。少し古い記事ですが、以下のニュースをどうぞ。


http://www.afpbb.com


イスラエル・フィルの公演を親パレスチナ集団が妨害、英プロムス」

2011年09月02日 16:20 発信地:ロンドン/英国


【9月2日 AFP】英ロンドン(London)の夏の風物詩となっているクラシック音楽祭「プロムス(Proms)」で1日、ズービン・メータ(Zubin Mehta)指揮によるイスラエルフィルハーモニー管弦楽団(Israel Philharmonic Orchestra)の演奏が、パレスチナ・グループの抗議に繰り返し妨害されるハプニングがあった。


 ロイヤル・アルバート・ホール(Royal Albert Hall)でのイスラエル・フィルの公演は、デモ隊が会場前に宿営してコンサート客らに「チケットを破いてしまえ」などと呼びかけていたことから、厳戒態勢の中で行われた


 しかし、厳しい入場検査にもかかわらず30人ほどのデモ隊がホール内に侵入。イスラエル人バイオリニストのギル・シャハム(Gil Shaham)氏がマックス・ブルッフ(Max Bruch)のバイオリン協奏曲を演奏しようとすると、これを大声で叫んだりブーイングをしたりするなどして妨害し、BBCラジオ3(BBC Radio 3)の中継が中断するなどの影響が出た。


 抗議を行った親パレスチナ・グループのセーラ・コルボーン(Sarah Colborne)氏は先に、イスラエル・フィルがイスラエル軍の慰問公演を行うなど軍と強い結びつきがあることを理由に「平和と人権を支持する人は公演に行かないよう」呼びかけていた。


 プロムスは1895年に始まった英BBC主催の夏の人気クラシック音楽祭で、8週間で約100公演が行われる。今回のイスラエル・フィルの公演は、ズービン・メータ氏との初共演から今年で50年になることを記念するもので、メータ氏にとっては2003年以来のプロムス出演だった。(c)AFP

私が、「イスラエルフィルハーモニー管弦楽団の来日公演はいつも成功しています」とパイプス先生に書いたのは(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130403)、こういう事例が西洋諸国で発生していることを前から知っていたからです。それにしても、下品なグループですねぇ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120926)。ギルさんも、演奏家として覚悟の上だとは言え、演奏直前のただでさえ緊張感の漲る時にこんなことが起こるなんて、芸術家として腹が立ちますよね!
イスラエル・フィルとギル・シャハムさんについては、過去のブログをご覧ください(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070704)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070727)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070728)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071006)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071013)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071019)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090209)。
数年前に、大阪のイシハラ・ホールで江口玲氏とのリサイタルが開かれた際(これは、上記ミルトス社の『みるとす』誌が誌面でご紹介くださったので、即座に電話でチケットを申し込み、鑑賞が可能になったものです)、サインをいただいて「素晴らしい演奏をありがとうございました」と英語で申し上げたら、「来てくれてありがとう」と英語で返しつつも、一瞬悲しそうな曇り顔になったギルさんを、今でもはっきりと覚えています。(舞台ではあんなに楽しそうに音楽している(musizieren)のに、どうして?お疲れなのかな?)と思ったことまで記憶に鮮明です。
ちなみに、今朝のFM-NHKラジオでは、ギルさんの演奏が放送されました。日本での彼の人気は上々です。

後注:パイプス先生とお仲間学者さんから、新たな原稿が届きました。さすが、日本にはない視点です(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20130420)。確かに、気を張ってユダヤ系左派勢力と戦っていないと、本当に「ユダヤ人国家イスラエル」が内部から知的崩壊する兆しはありそうです。改めてパイプス先生に敬礼!