ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

『外務省の掟』から学ぶ

外務省の掟−徹底検証!外務省なんていらない』(ビジネス社 2001年)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150204)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150214)から、興味深いと思った箇所の部分抜粋引用を。


国際法のルールを守るということだ。それに違反する行動を日本が起こしてはならないし、逆に相手国が国際法を侵した場合には厳しく抗議して拒否しなければならない。これが外交の大原則である。(p.11)
・なぜ毅然とした態度がとれないのか。そこまで強い態度で出れば、必ず相手の反応も変わる。(p.11)
・外交機密費の使い方は絶対に公表してはならない。これは世界共通の認識である。(p.12)
日露戦争の際、在ロシア情報収集の担当だった明石元二郎は機密費として当時で10万ポンド(100万円)という大金を使った。彼の工作により1905年1月22日、ペテルブルグで「血の日曜日」が置き、それが第一次ロシア革命につながった。(pp.12-13)
・オックスフォードやケンブリッジの古典とか歴史などの一般教養の深い人が外交官になるケースの方が多い。専門家をつくらないのは、外交とは、それまでに出来上がったそれまでの自分の教養と全人格でぶつかっていく仕事だということがベースにはある。特別な専門知識は専門家に任せればいいという考え方。だから、イギリスの外交官には、歴史とか地理にものすごく造詣の深い人がたくさんいる。そういう人が、自分の教養で相手国の教養の深い人にぶつかって、お互いの尊敬と信頼関係のなかで情報を交換することができれば、かなりいい外交ができる。(p.23)
・現在の大きな潮流の一つとして、もう一次情報は互いに隠さないということが挙げられる。(中略)一次情報は共有で、それをどのように分析して、情勢判断をするかということが重要であるという考え方に変わっている。アメリカ・イギリスでは複数情報を集めて複数判断をする訓練をつんでいる。たとえば国務長官が何かしようとする。こういう情報だというと、それでいいのか、それと反対の情報はないかと聞いて決定する。(p.27)
・テレビや新聞で知るのは当たり前。なにからでもいいのだ。(p.28)
・「情報」というのは、一種の教養みたいなものである。教養とは共有する知識であり、情勢判断するにはありとあらゆるとらわれから自由でなければならない。一次情報の共有や複数情報の問題もあるが、これを取り扱う人間は、心理的に度量が広くなければならないということだ。自分の拾った情報だから自分だけがもっていて、他人に教えないとか、自分が判断したんだからよけいなことを言うなとか、そういう度量の狭さを全部克服しないといい情報は出てこないのだ。(p.30)
・歴史の断面を切り取ってみると、「情勢判断」は、希望的観測というのが一番よくないということがわかってくる。(p.31)
・正しい戦争でも負けるのだ。(中略)正しいから勝つとは限らないということなのだ。(p.32)
・一次情報は、九割までが公開情報だった。彼は、秘密情報を一切読まない人だ。「ソ連の公開情報だけを読んだ。これを本当に毎日毎日読むんだ」と後に語っている。(p.33)
・実は限られた資質を持つ人にしかできない。この方法は外交官の鉄則なのである。資質として、なによりも分析能力が必要となる。外務省の知的な仕事の七割は国際情勢の流れを見極める情勢判断といってもよいのではないか。外交官にとって外国の公開情報を飽きずに徹底的に読むことは生命線である。これは言うはやすく、相当につらい仕事である。しかし、くり返し、慣れてくると、膨大な公開情報の中から−要するに毎日ただ新聞を読むわけだが−あれっと思うところが出てきたり、国際情勢の変化を見落とさないようになる。そこまでの眼力を高める努力というか、人格の変容が求められる。長い面白くもない論文や記事をきちんと読んで整理するという根気、あるいは緊張感。国際情勢を絶対見逃さないという緊張感がいつも求められる、これが外交官である。(p.34)
・国際情勢の情報は外務省と防衛庁が担っている。(p.34)
・外交官の仕事は公開文書の分析や電子情報の情報分析が中心である。(p.34)
・一番大事なのは集まってきた情報を総合的に判断し、間違いのない判断を下すことである。国際社会における一国の影響力の基礎は軍事力である。この点に関して「軍事力を国際社会における影響力として行使しない」と決めている日本の力はゼロである。(p.34)
・戦後の日本は、武力を持っていないから情勢判断を見極めるしかないのだ。だからどの大使も情勢判断の電報を一生懸命書く。電報を見ればその人の能力がわかる。(p.35)
・他人には見えにくい研鑽の中で、自分の見識を高めたうえで、アメリカ、イギリスの一級人物から相手にされるようにならなければ、外交官の仕事などできない。一流の人物が、こちらをひとかどの人物だと思ってくれたら、情報交換でもなんでもできるようになる。そうすると、こちらの情報や自分で考えて分析して出来上がったものを相手にぶつけ対話が生じてくる。それによって、情報の精度が飛躍的に上がっていく。(p.35)
アングロサクソン覇権の時代は、今後半世紀、あるいは二一世紀全般を通じて継続すると見ている。(p.36)
・日米同盟を堅持するということである。(中略)アングロサクソンと仲良くするということにつきる。(p.36)
・日本がいくら一次情報のために走り回っても、アメリカのもつ情報の何十分の一にすぎないということがある。(p.37)
・1995年の国防総省報告で、それまでは日米同盟に代わる日米中露の四カ国条約を考えていたという執筆者のジョーゼフ・ナイ自身。(p.37)
アメリカの情報と常時つき合って、情報判断をすり合わせているだけで、情報の量、質、正確度が格段に上がってくる。(中略)日米同盟を堅持するという指針しか見えてこないのである。現在は、外務省、防衛庁、あらゆるところがアメリカの情報とすり合わせをしている。情報というのは交換が原則だから、すり合わせのためには、こちらも材料はもっていなければならない。しかし、アメリカはいま日本の情報能力が限られているのを知っている。知っていて交換という形でこちらに教えてくれているのが現状である。(p.38)
・情報通が話し合っている限り、騙されるということはまずない。一次情報を全部集めて総合判断を教えてくれるのだが、この総合的判断では嘘を言わない。日米が同盟国である限り−。(p.38)
アメリカを無視して中国の公式文書と政策だけ見ていたのではわからないのだ。(p.39)
・日本外交にはその重要性によって、国別に格差がある。したがって大使の序列も国の重要度によって決まるといってもよい。(p.39)
・ロシアのスパイが日本の防衛庁の人間などを籠絡する常套手段だが、食事をしたり、冠婚葬祭にお金を届けたり、子供が病気と聞いたらお金を渡したり。そうやってまずお互いに信用する、信頼関係をつくることが重要になる。(中略)信用できるということにならなければ、情報などくれない。(pp.40-41)
・十年間は継続して情勢判断に専念してほしい。その間、毎日、毎週、毎月の情勢の動きを間断なくフォローし、そしてその間にその前の十年間、二十年間、百年間に遡って過去の経緯にも通暁してほしい。そして、また、その間に古今東西の歴史をひもといてほしい。そうやって、歴史の大きな流れを知り、歴史の流れのなかの現在の地位をつねに把握していてほしいのである。また年齢は六十歳以上がよい。総合的な判断力は年と経験とともに進む。(中略)現役中よりもいまのほうが、はるかによく物事が見える。人間というものは年とともに体力は衰えるが、総合判断能力は、耄碌してくるまで伸びつづけるように思う。(p.43)
・これを新聞、雑誌等に個人名で公表することによって、各方面の判断を仰ぎ、さらに判断に磨きをかけ情報の精度を上げることができる。また、すぐれた情勢判断はすべて国民に知らしめ、国民自体が正しい情報判断に慣れていることが重要である。(pp.44-45)
・要は、日常の雑務に煩わされないで常時欠かさず、部下に任せないで自分で資料を読んで考え、時流に超然として流行の議論に迎合することなく、また、政策論に調子を合わせることなく、あくまでも客観的判断と分析を貫けるような組織をつくることである。そして、その組織は内外において尊敬され、外国の最高情報機関と高度の知的交流ができねばならない。(p.46)
・特にアラブ諸国では軍事的な役割を果たせない国はほとんど価値がないと思われる傾向が強い。安全保障はとにかく重要なことなんです。(p.57)
・中東和平のこととか湾岸戦争のこととかではいろいろ本省に注文をつけていました。どうも日本の論調がおかしいと思ったからです。日本の論調では、サダム・フセインのやっていることにも言い分があるとか、アメリカはまったくアラブに支持されていないとか、それほどイラクは悪者ではない、というような感じでよく言われていました。しかしフセインは悪い奴で非道な独裁者であることは普通のアラブ人なら誰でも知っていることですし、彼がパレスチナ問題をもち出したのも政治的に利用しただけなのもすぐわかることです。したがってフセインは悪い奴ですよ。アメリカがちゃんとガツンとやっとかなくてはフセインがなおさら図にのって悪いことをして、周りが迷惑することになるわけです。日本がこれに協力するのは当然のことです。そういった部分を中近東にいる立場として意見しました。(pp.58-59)
・まず国際的な常識として、大使は元首が任命するというのは当たり前のことで、そうでなくては先方の国がまともに扱ってくれなくなります。(p.62)
・日本には諜報機関がない。これからの世界情報戦で、そんなことで生き残れるのか(p.64)
・主流派は北米局に籍を置くグループだ。(p.66)
・金の使い道の記録だけは正確に残しておくべきだ。(中略)きちんと記録を残しておけば、(中略)戦略的な情報収集活動が可能となる。(p.94)
・外との関係を意識すれば、日本は日本の文化伝統をきちんと身につけて外国に発信できるようになろうとか、だらしない子供を育てていては世界と渡り合えないといった発想になっていくのではないか。(p.98)
・すべて本当のことを書きましたし、表現に多少大げさな部分もあるかもしれませんが、意図的な誇張はありません。事実ばかりなので、逆に抗議もされないということなのかもしれません。(p.107)
・心得は、一、誰よりも努力する。二、誰もが嫌がることを進んでやる。三、倫理的に身辺の清潔を保つ。(p.114)
・キャリアとしてのエリートレースに負けた人が、品性というかモラルを非常に落としてしまうようです。今まで挫折を味わったことのない人が大きな挫折をしたときに、現世利益に走ってしまうように感じられました。(p.120)
・中国系のチャイナスクールとか、ロシア系のロシアスクールとか。彼らのグループは次官になれませんから。親米派で米政権とのパイプが太い官僚がエリートの階段を上っていくんです。入省後にハーバード大学などに留学して、将来、米政府の中枢で活躍する人材らと親交を深め、帰国後は主に北米局に籍を置きながら、日米外交の最前線に立つ。(p.184)

(部分抜粋引用終)