ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

塩野七生氏からの助言

塩野七生日本人へ リーダー篇』文春新書752(文藝春秋
(2010年)より部分要約抜粋(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20131029)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20131211
ユリウス・カエサル「見たいと思う現実しか見ていない」(p.12)
・1.結局は軍事力で決まる(p.12)
 2.アメリカ合衆国への一極集中
 3.国連の非力
 4.日本の非力
・軍事とは所詮、自らの血を流しても他者を守ること(p.13)
・愉快なのは、ローマは敗者への市民権授与に積極的であっただけではなく、その指導者層ともなると、自分たちの家門名の分与にも積極的であったことだ。(p.21)
相手がどう考えてどう出てくるかを知って“勝負”に臨むのは、ゲームに参加したければ最低の条件である(p.29)
・日本同様第二次世界大戦の敗者であるドイツだが、この国は東ドイツを併合したことで左派の絶対数が増え、それが動きを鈍くしている。それに、世界大戦を二度闘って二度とも敗れた国に、私ならば、優れた政治センスまでは期待しないだろう。(p.32)
イタリアは、第二次世界大戦を、敗北したのかしないのか判然としない感じで終えた国だが、おかげで軍隊を保有しつづけ、その海外派兵を憲法は禁じていない。(p.32)
・国会にかけたときに常に反対側にまわるのは、再建共産党を名乗る共産主義者緑の党のみである。(p.33)
・われわれ日本人は「アメリカによる平和」であろうと何であろうと、国際情勢を左右できる政治力もなければ経済力もなく、ましてや軍事力もない。そのうえ、第二世界大戦当時には日本なりにはあった大義さえも、敗戦後の戦犯裁判で、大義ではないとされた経験をもつ。(pp.64-65)
・他者が考えつくことと同じことを考えていたのでは、絶対に勝てない。疑問を常にいだき、その疑問を他者が考えつきもしなかったやり方で解決していく。それには思考や発想の柔軟性こそが不可欠で、これこそが勝敗を分ける鍵になる(p.69)
・常に頭の一部でフォローしながらも他の事柄にも関心を寄せることで、テロの脅威には伸縮自在な距離で臨む生き方である。(p.72)
傲慢とは、心中にひそむ劣等感の裏返しでしかない(p.76)
・国際政治の世界で主役なる条件
 1.拒否権をもっていること。
 2.常任理事国であること。
 3.海外派兵も可能な軍事力。
 4.核をもっていること。
 5.他国に援助も可能な経済力。(p.81)
・経済力と国力は同じではないという現実(p.83)
・常に勝ちつづける秘訣とは、中ぐらいの勝者でいつづけることにある(p.83)
・戦争は成功したが戦後処理を誤ったとは、今のヨーロッパでは支配的なアメリカ政府観である。ブッシュ政権の閣僚たちはそろいもそろって世界に冠たる有名大学出身の秀才ばかりなのに、なぜ誤ってしまったのか。(p.96)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20131017
学校秀才には想像力に欠ける人が少なくない。(p.97)
他の多くの面ではアメリカに協力しても、テロを戦争と断じないほうが、日本にとっては得策と思う。(p.99)
・そのイスラエルだが、他国の意見には、EUの意見さえも耳を貸さないことでは有名だが、アメリカだけは無視できない。(pp.101-102)
イラクでは、アメリカは困っている。これ以上追いつめられると、アメリカは手を引き、もう自国の外への介入など真っ平、と考えるようになるだろう。(中略)アメリカに、せめては名誉ある撤退への道は開いてやるべきである。彼らに、イラクではうまくいったと言わせ、思わせるためにも。(p.102)
・自己反省とは、絶対に一人で成されねばならない。決断を下すのも孤独だが、反省もまた孤独な行為なのである。(p.109)
・アマチュアがその道のプロさえも越えるのは、プロならば考えもしなかったことをやるときなのだ。それには、徹底した現情直視と、それまでの方式、つまり常識、にとらわれない自由な発想しかないのである。(p.115)
・地位や権力や財力を持っている人は危険が迫るやいつでもどこにでも逃げられたの対し、地位もなく権力もなく資力もなかった庶民は、そこに留まるしかなく、地中に埋めたナベ・カマを掘り出すことさえもなく殺されていったのである。(p.118)
・かつては下部構造は上部構造に代わりうるとする説が流行ったが、あれも今では人間性に無知な人のいだいた幻想であったということが明らかになっている。(p.119)
関与できないのに影響だけは受ける立場にいる外国人から見れば、ブッシュが勝ったほうがよいのではないかと考えている。(p.123)
・なぜなら、どの社会でも過激派と穏健派の分かれ目は思うほどにははっきりとしてはいないからで、穏健派はしばしば、凱歌をあげる過激派に引き寄せられてしまうからだ。勢いづいた人は、誰にとっても魅力的に見える。その結果、少し前までは少数派であったのが、実に簡単に多数派に一変する。(p.124)
・過去の誤りを冷徹に見極わめ、勝ったことで確実にした地位と権力を活用して、軌道修正に踏み切れる人。(p.124)
民主党は本来的に親中国で嫌日であるからで、アメリカから突き放されて日本ははじめて、自分の国の行方について真剣に考えるようになるだろう。共和党時代のような微温的状態から、頭から冷水を浴びる状態になるのだから。(p.125)
日本人は、眼の前に突きつけられた課題の解決能力ならば、非常に優れている。(p.131)
・ヨーロッパでは、現状の問題点を指摘し対策の必要を訴えながらも為政者からは無視されてきた人を、「カッサンドラ」と呼ぶことになる。まるで、有識者や知識人の別称でもあるかのように。(p.141)
・武器をもたない予言者は、いかに正しいことを言おうが聞き容れてもらえないのが宿命だ(マキアヴェッリ)(p.144)
・宗教がかくも長きにわたって存続できるのは、いっこうに成果が表れないがゆえ、ということだった。(p,148)
・そのときこそが日本人の柔軟性が活きてくるときだから、われわれ日本人はそのときを、自信をもって待っていればよいのである。(p.151)
徹底した情報収集とそれを駆使しての冷徹な外交(p.169)
・戦術
1.懐柔作戦。支配される側の存在理由を認めてやりながら、支配権を行使していくやり方。
2.強圧作戦。圧力をかけることで支配しようとする考え方で、どの分野でもナンバーワンでないと気がすまない国家の特異とするやり方。(p.172)
・ただし法王庁は、謝罪するともしないとも答えていず、つまりは無視でいくらしい。(p.174)
レパントの海戦の史的価値が西欧で強く認識されるのは当然としても、トルコ側では無視というのには言葉もなかった。(p.179)
・歴史を科学と見なす傾向の強い欧米では、宗教にも勝敗にも関係なく、歴史叙述は科学的で客観的で、歴史認識の共有にも成功しているかというと、必らずしもそうではない。(p.179)
EU共通の歴史教科書とは、それぞれの国が自分たちに都合の良い部分を取り出して教えることになるか、それとも、誰にも読まれないか、のどちらかになるだろう、と。日韓でも日中でも、学者たちが集まって歴史認識の共有を目指すのは、時間とカネの無駄である。(p.182)
・法廷に引き出されたときの「証拠」を、今から集めておくためだ。(p.182)
重要な問題ほど、単純化して、有権者一人一人が常識に基づいて判断を下す必要がある。(p.187)
・問題を単純化したうえで常識に基づいて判断を下すならば、日本の有権者も成熟したことの証拠になり、民主主義も、借りものなどと恐縮する必要もなくなるだろう。(p.187)
・「武器」とは、事後でも読むに耐え、情報はすでに知っていても読みたいと思わせ、それでいて読んだ後に満足を与えられるもの、つまり、情報の「読み」なり「解釈」なりで勝負したもの、を書いたり言ったりする能力でしかない。(p.199)
・読む側のこれまでの人生で蓄積したすべてが深く関与せざるをえない。自らの理性と感性と悟性をすべて投入してこそ、事実の列記に留まらない生きた歴史に、肉迫も可能になってくるのだから。(p.200)
・人は誰でも、自分自身への誇りを、自分に課せられた仕事を果していくことで確実にしていく。だから、職を奪うということは、その人から、自尊心を育くむ可能性さえも奪うことになるのです。(p.210)
・それを可能にするには、職を与えるしかないのだ。そして、自分自身への尊厳を持てる人が多ければ多いほど、その社会は健全化する。(p.211)
・義務も加えたのは、義務も課されないところに自尊心が確立できるわけがないからである。(p.212)
・時代の後を追うのではなく、時代は先取りしたほうがよいのではないだろうか。(p.212)
・それでもヨーロッパは、ルネサンス啓蒙思想を経験したことによって無知と狂信の度合は相当に低下し、今ではもはや、他の宗教関係の神像であろうと文化破壊は蛮行だとする考えが常識になったようである。(p.215)
・大国でないがゆえに問題を討議するグループからさえもはじき出されている日本は、実効力のあるアイデアを主張しても他国が乗ってこない(p.222)
・腰を落ちつけて、日本人だけで解決できる問題に、われわれのエネルギーを集中してはどうであろうか。→経済力のさらなる向上(p.223)
・これは、敵を二分したうえで一方をたたく戦法だが、一致団結していることが防衛上での最善の策でもあるわれわれとしては乗らないほうがよい。それに、日本人自身にとっても良くない。中国と韓国はしきりと日本に、ドイツの戦後処理を見習えと言ってくるが、あれも見習わないほうがよい。(p.227)
・翻訳とはそれをする人の考えを通過することなしには成り立たないからで、それによるまさかの場合の弊害さえも回避するには、日本人が英訳し、英語が母国語である人には添削を依頼する程度に留めておいたほうがよい。(pp.228-229)
韓国人と日本人が同じ歴史認識を共有できるわけがありません。しかし、「歴史事実」は共有できる。(p.237)
・「武士に二言はない」日本は決めるまでは遅いが、やると決まればやり遂げる、という方針を常日頃から宣言し、宣言したからには必らず実行するのである。(p.247)
・援助物資を送るのも、治安が確立されていない地方では強奪される危険が常にあり、物資がほんとうに援助を必要としている人々の手に渡らない場合が多いが、その問題を、軍隊を送らないでどう解決するのだろう。(p.252)
(引用終)