ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

キャンパス・ウォッチ北海道編

北海道と言えば、広大な大地に豊かな自然の恵み。明治期以降に開拓が本格的に始まったポテンシャリティの高い土地。
...というのが、私の従来のイメージだったのですが、今回、初めての北海道に対して、新渡戸稲造氏のご高説(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070807)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070808)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070809)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070810)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070823)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080217)やクラーク博士の名高い明言とは裏腹に、(これが現実だったのか)という新たな発見がありました。一言で言えば、本州育ちの土着人間にとっては、北海道は何かとよろず人工的だという印象を与えたということです。
北海道へは、主人はスキー旅行などで何度か学生時代から訪れていたようですが、どうも私、学生時代もとにかく結構忙しくて、国内旅行は思ったよりはできなかったというのが実感。結婚してから、予想に反して国内旅行が楽しいことに気づき、チャンスのあるうちに精一杯という方針に切り替えました。
北海道出身の同世代の女性と知り合った時、「北海道だから、盆暮れなどの親戚づきあいというものがない」と聞き、びっくりしたことがあります。ということは、桜開花や紅葉など、季節のずれもさることながら、毎年恒例の交通渋滞ニュースなどとは無縁の生活だということです。日本語を留学生に教えていた頃、「日本は南北になが〜い」というふざけた例文が教科書に出て来て、あまりいい事例を充分に挙げられなかった記憶がありますが、確かに、経験値と知識とが直結しない好例とは言えましょう。
ただ、旧帝国大系の中では名古屋大学よりも先に設立されたという北海道大学をキャンパス・ウォッチしてみて、いささかがっかり。大学の敷地はさすがに広々として、樹木に北国らしい特徴がはっきり出ていて、三鷹ICUの美しいキャンパスを何倍か広げたようなお散歩向きとは思ったものの、「え〜!今の北大ってこんなの?」と、自分の母校以上にがっくり。
偏見だ、一部だけで判断しないで欲しい、とおっしゃいますか?いえいえ、氷山の一角という言葉に表されるように、外部の目には、一部で全てが反映される恐ろしさってあるのだと思いますよ。それに、こう見えても、結構、国内のさまざまな大学をこれまで学会等で訪問してきたので、別に初めての北大だからって、舞い上がっていたつもりもありません。
1.理学研究科のある建物の3階の女子トイレ内では、とんでもない貼り紙。ウォッシュレット付の何とも贅沢なトイレなのですが、昨年12月中旬辺りに誰かが「大量のトイレットペーパーを流して詰まった」らしく、赤字で注意表示がしてありました。日本語だけだったので、留学生が犯人ではないということでしょう。つまり、小学高学年で女の子だけ集めて女の先生から細かく指導されることさえ、18歳以上の立派な大人の女性が高等教育機関で実践できないという証左。もしかして、何か間違って落とした物が「大量のトイレットペーパー」と表現されていたのかもしれませんが、そうだとしたら、それはそれで一大問題。それとも、ストレス発散のために、そんなことをしたとか?う〜ん、よく理解できない貼り紙でした。
2.生協食堂の入り口に「組合員の声」みたいな掲示板があり、「学生は貧乏なのです。もっと値段を下げて欲しい」みたいな文句。しかし私が思うに、国立大学とは、昔から苦学生という言葉があったように、経済的に恵まれなくても、努力でさらに高度な勉学を続けたいと願う者にも、実力さえ一定水準以上であれば広く門戸を開けていたはずで、そこが、裕福な子弟しか入れないようなお金持ち私立大学とは違う良さ。つまり、お金がないならないなりに、奨学金とアルバイトで工夫して、栄養失調にならないような健康的な食生活をいろいろと考えて4年間を過ごすことが、君の将来を決定するのですよ!それを他人のせいにしていては、ベクトルが間違っています!幼稚園の子みたいなことを書くな!
3.大学の学生自治会とは、政治づいた元気のいい学生運動と相場が決まっていたもの。とはいえ、TPP反対みたいな檄文が、かの誇り高き札幌農学校から発展したという農学部を頭にした北大にも、堂々と掲げられていたこと。これも方向性が間違っていて、そういう世の中の流れであれば、先手を打ってハイテク農業をイスラエルから学び、最高の品質を売り出す戦略を考えるのですよ。「さすがは北大農学部の生み出した農業技術は見事だ」と、他国に有無を言わせぬ商品として、涼しい顔でさり気なく差し出す。あまりに古くさい文言を並べているので、(ちょっと君、今何歳?)と尋ねたくなってきました。
4.大学前の郵便局とは、大抵は外国郵便も多く、論文や研究関連の資料を郵送するので、中央郵便局の次ぐらいに有能な職員が、テキパキと仕切っているところだと長年思っていました。ところが、北大前郵便局。せっかくなので(お土産がてら北海道らしい記念切手を)と思い、三種類ぐらい切手シートを選んで窓口に差し出したところが、なんともモタモタしていて、10分ぐらいは待たされた次第。え〜っと、私の今住んでいる人口3万人程度の小さな町でさえ、2分もかかりませんけど...。
5.大学構内の北大名物を販売している場所で、記念に北大ボールペン(シャープペンシル付の4色)を買ったのですけど、これがインクの出が悪く、早くも字が書きにくくなってしまいました。どこの製品なんでしょう?中国製?もしかして....。

ただ、名誉のために付け加えますと、5月連休中とはいえ平日だったので、自転車で黙々と講義に向かう真面目な学生さん達と出会いました。おしゃべりしている学生さんを一人も見かけなかったのが、とても新鮮。信州大学でも(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100726)、いかにも地味だけれど清潔そうな自転車通学の学生さん達を見かけて、懐かしくも安心感があったのですが、そんな感じ。関西に来てから、周囲の有名私立大学の自慢タラタラを聞かされて、ほとほと閉口していたのですが、やっぱり国立大学は税金でまかなわれているので、それなりの自覚を在学生も卒業生も誇り高く持ちたいもの。
ところで、昨日書いた本の中から早速、『ライシャワー大使日録』を読み始めています(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130503)。大変におもしろく、すいすい読めます。ワシントンの話なども出て来て、これもそれも、ダニエル・パイプス先生から依頼された訳業のおかげで、実感もひとしお。ところで、特に興味を引いたのが、次の箇所。

ICUの雰囲気はどうも気になる。何もかもアメリカ人が支配しているものだから、学生たちの間にこれまでどこでも味わったことのない、アメリカへの敵意のようなものがある。よそでは感じられないような敵意だ。私は以前からICUは日本には向かないと考えている。」(p.61)

よくぞ書き残してくださいました!かつての自分の感想も思い出されます(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091125)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091126)。