ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

陰謀の渦巻く世界との対処法

2012年6月10日付「ユーリの部屋」の「コメント欄」に書いた2冊を再現します。
"The Rushdie Affair: The Novel, the Ayatollah, and the West"
"The Hidden Hand: Middle East Fears of Conspiracy"

昨日は、ずっとこの2冊を読んでいたのですが、最初は笑いながら(しかし、こんなつまらないニッチ側面を、大真面目にコマゴマと調べて、よく本にまとめる気力があるわねぇ)と、ダニエル・パイプス先生の胆力に感嘆!それでもやめられなくなって、読み続けるうちに、(待てよ。この私でも、思い当たる事例がかなりあるということは、肩書きを有した日本の一部の関係者も、しっかりと惑わされているということではないかしらん?)と、だんだん深刻な気分に...。
「最初から、あなたのことは、陰謀論に引っかかる人だなんて思ってないよ」とパイプス先生から言われているのですが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120505)、しかし、己の過信には、常に用心するに越したことはありません。それに、パイプス先生ご自身、英語メディアのみならず、日本の中東研究者の一部からも、かなり「あいつは抑圧的で権威主義者だ」「あれこそが陰謀論家だ」と、さんざん非難されていたことを思えば、何だか空恐ろしくもなってきます。
というのは、直感的に、私との関わり方や応答の仕方からしても、マレーシア関連の記述からしても、パイプス先生(この頃、私が勝手に親しみを込めてつくった綽名では「パイピシュ先生」)がそんな人だとは思えず...。かといって、世の批判をマル無視して一途に、というのも何だかなあ....などと、いろいろ判断に戸惑う時間やエネルギーの浪費が懸念されるからです。
訳文については、先月から他の用事をほったらかしで没頭するうちに(というより、没頭せざるを得ないほど、魅力的かつ重苦しい内容と量産状況だったので)、だんだんとパターンが飲み込めてきました。そして、併行してユダヤ教に関する本を読むうちに、(世俗的なように見えるけれども、確かに、パイピシュ先生はユダヤ教徒でいらっしゃるわねぇ)と納得。
陰謀論」なるものについての、一般人としての私の対処法は―
・普段から、できる限りたくさんの本を読むように努める。物事の判断材料は、その積み重ねで養っていく。
・何でも日付入りで記録を取り、メモを残す習慣をつける。それによって、自分の行為や思惟に対しても客観性を残す。
・裏表のないような生き方を心がける。
・(あれ?)という素朴な直感を大事にする。
・怪しげな本や人との付き合いは避ける。
・自分なりの好みや経験知を大切にする。
・当座流行のイデオロギーや思想にではなく、伝統に培われ、批判に耐えて残ったものに価値を置く。
・何でも逆らうのではないが、尊重しつつも「権威」に盲従しない。
などでしょうか。
パイプス先生のすごいところは、例えば私の領域ならば、飽き飽きして放り投げたくなるような、マレーシアでのごちゃごちゃ騒動のオンパレードに関しても、どういう速読術を使っていらっしゃるのか、ものすごい情報量を集めた上で、あっさり一文で分析し切っている点。お父様の仕事ぶりを近くで見て育ち、家の中では、いつでも知的な会話ばかりで、テンポの速い生活を過ごしていたそうですから、自前なのでしょうねぇ。
もっとも、思考パターンというものがあり、私がそれまで読んでいた文献とは、明確に異なる特徴があります。それは、路線としては同じ方向ではあっても、パイプス先生の場合は、非常に強く明言するところです。