ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

降誕祭の希求

降誕祭が近づいた昨今、世界では気になる動きが出ています。以下は中東と欧州ですが、インドネシアのボゴールでもムスリムから、カトリック共同体に対する抑圧の動きがあるそうです(参照:http://www.asianews.it/news-en/Catholics-in-Bogor-(West-Java)-not-allowed-to-celebrate-Christmas-Mass-20302.html)。自分とその周囲の平和を楽しむばかりのクリスマスではなく、我々に与えられた考察すべき深い課題として受けとめたいと思います。

メムリ」(http://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=IA65210

Inquiry and Analysis Series No 652 Dec/23/2010


「ジハーディストのクリスチャン攻撃と反キリスト煽動―クリスマスシーズンで急増中―」
R.グリーン(MEMRIの研究員)


この数週間中東及び西側でクリスチャンに対する攻撃、威嚇が急増している。次に紹介するのは、その現状である。ちなみに本報告は、MEMRI有料サイトのジハード・テロリズム脅威モニター(JTTM)記事を全文紹介するものである。


・中東のクリスチャンに対する攻撃と脅し


カミリア・シェハタというコプト派のエジプト人女性がイスラムに改宗し、そのため本人の意志に反してコプト教会に監禁されているという話が流布した。そしてこれが引金となってジハーディストの煽動が始まり、行動を求める声が高まっている。著名なサラフィ・ジハードの聖職者が、シェハタを解放するためなら武力の行使が認められるとするファトワをだしている。例えばタルトウシ(Abu Basir Al-Tartousi)は、「たといよこしまな(コプト派総主教)シェヌーダや…ほかのよこしまな主教や聖職者など女性達を拉致した者共の死体の山を踏み潰すことになっても構わない。教会のドアを蹴破り、一人ずつ探さなければならない。これは犯罪ではない。アッラーの思召しである。宗教的責務である」と言った※1。モーリシャスの聖職者シンギティ(Abu Al-Mundhir Al-Shingiti)は、自分のだしたファトワで、「この(エジプト人)クリスチャン達の殺害は…許される…」と規定した。ジハード組織(Jama'at Al-Tawhid Wal-Jihad)の長でガザの聖職者マクディシ(Abu Walid Al-Maqdisi)は、「イスラム諸国に住むクリスチャンは、最早ズィンミーイスラムの支配権を受入れ、人頭税を払って保護して貰う書の民)の地位を享受できず、保護をうける資格がない。正当な攻撃対象である」と述べた。


イラク


この煽動の波に呼応した事件が、10月31日の恐るべき教会襲撃である。バグダッド聖母マリア救世教会をアルカーイダ系のISI(Islamic State of Iraq)が襲撃し、52名を殺害した。ほかに数十名が負傷している。襲撃時にこのISIがだした声明によると、この襲撃はカミリア・シェハタ事件に対する報復であり、バグダッドの教会は「腐敗した多神教の巣窟であり、反イスラムの戦闘司令部としてイラクのクリスチャン達に使われてきた」由である。この組織はエジプトのコプト教会最後通牒をつきつけ、48時間以内にシェハタを解放しなければ、エジプトのクリスチャンとその宗教施設及び諸機関は、ムジャヒディンの正当な攻撃対象になる、と警告した。
先の襲撃はサラフィ・ジハードのウェブサイトMinbar Al-Tawhid Wal-Jihadのシャリア委員会委員バグダディ(Sheikh Nasser Al-Din Al-Baghdadi)によって追認された。同委員は「イスラムムスリムに対する戦争」を仕掛けているのであるから、イラクのクリスチャンを攻撃対象にするのは合法である。と述べている。
この教会襲撃の後、バグダッド市内のクリスチャンの家を襲撃する事件が次々に発生した。ジハードフォーラムShumukh Al-Islam上でよく知られるひとりの執筆者は、イラクのクリスチャン聖職者を攻撃対象とする?ヒットリスト?を掲載し、ISIに全員を殺害するか、或いはエジプトのコプト教会に監禁されていると称するムスリムと交換するため人質にとれ、とアドバイスした。


・エジプト 


12月17日、グローバルジハード・メディアフロントが、eジャーナルSawt Al-Jihadの第37号をだした。記事の大半はカミリア・シェハタ事件とエジプトのコプトに関する内容である。アニス(Abu 'Abdallah Anis)の書いたトップ記事は、「コプトは?グローバル十字軍?によってムスリム世界の中心に送りこまれたスパイである」と強調している。アニスによると、コプトはエジプトの政治と経済を支配し、自己の文化に固執し、若者のイスラム離れを促し、キリスト教へ誘導して改宗を迫っているコプトアメリカのエジプト征服を待ち望み、その手助けをしている。一方アメリカはコプトを使って、ムスリムの抵抗を弱め、ムスリムに対する心理戦を実施している。コプトの究極の目的は、世界のクリスチャンが共有するが、ムスリムをその宗教から引き離すことにある。コプトイスラエルと共謀し、エジプトから分離したコプト自治国をつくろうとしている。以上がアニスの主張である。
この12月には、ジハードメディアのYakin Centerが、エジプト国内外のコプト派著名人リストを発表した。ISIがコプト派社会に、監禁中のムスリムを解放するよう教会に圧力をかけよと要求しており、リストはその要求に対応したもので、そこに秘められた目的が奈辺にあるか明らかである。


・クリスマスシーズン中の攻撃予告


西側では、この数週間に起きた事件のうちスウェーデンで発生した自爆未遂事件が、最も深刻な懸念材料となっている。12月11日、スウェーデン国籍を持っているイラク出身のアブダリー(Taimour ‘Abd Al-Wahab Al-Abdaly)が、クリスマスシーズンで賑わうストックホルムのショッピングセンターで自動車爆弾を爆発させようとした。アブダリーはこの10年間イギリスのルートンに居住しており、単独行為なのか組織細胞のひとつとして行動したのか、今のところ不明である。犯行当日、一通信社に録音メッセージを送っており、そのなかで本人は、スウェーデンを初めとするヨーロッパ諸国を威嚇している。


先週イラク内務省のテロ取締まり担当幹部が、クリスマス時にISIがアメリカ、イギリス及びヨーロッパ諸国でテロを意図している、と発表した。最近イラクの治安部隊がISIの幹部ひとりを逮捕し、本人の自供にもとづく情報といわれる。


西側でクリスマス時に攻撃をかけるというアイディアは、ジハードフォーラムのメンバー達もいろいろ論じている。フォーラムShumukh Ak-Islamの著名寄稿家であるムハダブ(Yaman Mukhdab)は、クリスマスシーズン中アメリカの"柔い下腹部"を攻撃するよう、ムジャヒディンにアドバイスしている。配電網を破壊し大都市で大規模停電を起せというのである。インターネットを通してSCADA(送電管理システム)に侵入して、ハッキングをする方法で、「歴史に残る忘れられないクリスマスプレゼント」になる、とムハダブは言っている。
偽情報を欧米の警察や治安機関及び通信社に山のように送る方法も、フォーラムで論じられている。クリスマスシーズンにテロが発生するという偽情報を流して撹乱、社会を混乱させるのである。


‘アイマン435’と名乗るひとりのフォーラムメンバーは、クリスマス時にエジプトの教会を爆破せよと主張し、その教会リストを掲載している。それには、エジプトだけでなく、アメリカ、イギリス、フランス、スウェーデン、オランダ、オーストラリア及びドイツ所在のコプト派教会が含まれている。更にこの人物は、"殲滅的奇襲"攻撃をかけるための、イラスト入り手製爆弾作りのマニュアルも掲載した。このマニュアルは前にこのフォーラムにのせられたことがある。
“秒読みが始まった”と題して西側を威嚇するフォーラムメンバーもいる。この人物は、クリスマスの爆弾男アブデュルムッタラブ(Umar Farouk Abdulmuttalab)の写真と、“クリスマスの贈物”と称して爆発装置の図解を掲載した。


イスラミスト達は、キリスト教諸国の若いムスリム達を対象に宣教活動も行なっている。クリスマス行事に参加するなと要求し、神学と思想を中心にすえてキャンペーンを展開中である。シリア生まれのムハンマド(Sheikh Omar Bakri Muhammad)の運営する英語版ウェブサイトIzharudeen.comはその典型である。本人はイギリスのイスラミスト組織Al-Muhajirunのリーダーであったが、「クリスマスー業火への道」と題する記事を掲載した。邪悪なクリスマス行事に参加するなと警告を発し、彼等はイエスの誕生を祝っているのであるから、イスラムは信徒の行事参加を禁じており、「ムスリムは自分と自分の家族をクリスマスから守れ」と呼びかけた。


※1 MEMRI JTTMの「教会の襲撃をエジプトのムスリムに呼びかけるタルトウシ師」 (Sheikh Abu Basir Al-Tartusi Calls on Egyptian Muslims to Storm Churches)を参照。


(引用終)