ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

キリスト教連合と 『ヘラルド』裁判

昨日のマレーシアの電子版新聞『マレーシア・キニ』(http://www.malaysiakini.com)によれば、Rustam A. Sani氏が昨朝早く、呼吸困難で逝去されたとのことです。64歳でした。
この方のマレー語著作『新マレー人とマレーシア民族』(“Melayu Baru dan Bangsa MalaysiaUtusan Publications &Distributors SDN.BHD.1993/1994)には、言語問題についても触れられていたので、マレー語の勉強がてら日本語訳を試みたことがあります。1996年の頃でした。
まだ、その当時のマレーシア研究は、今ほどの多彩な広がりがなく、インドネシアとの並行ならともかく、マレーシア専門という研究者も限られていたので、素人くさくそんなことを思いつきました。しかし、やってみると、文章に繰り返しが多く、曖昧な議論が続くことに嫌気がさして、まもなく自然消滅してしまいました。
ただ、亡くなったとの報道に接し、改めて本を開いてみると、当時は何がなんだかさっぱりわからなかったことが、今では、背景などがつかめるようになっているので、それなりにマレーシア研究が進展してきたのだなあ、と改めて思います。また、結局、いくらこの方の著作を読んでも、マレー人である限り、現在の私の研究テーマに関しては、所詮、触れられることがないのも、よくわかります。ですから、私が迂遠の経過を辿ったのも、むべなるかな、というわけです。

ところで、マレーシア・キリスト教連合(CFM)から、次のような求人広告(私訳)が出ていました(http://www.ccmalaysia.org)。

CFMの管理職秘書兼調査オフィサー求む
任務:CFM管理委員への報告書作成
目的:マレーシアのキリスト教会に影響する問題に関して、CFMが語れるよう補佐すること
義務:1.現行の国家問題の分析と可能な応答を提供すること
2.国内の政治的、宗教的、社会的傾向が、特に、信教の自由と市民の自由を侵害する時、問題を特定し、追跡し、分析すること
   3.キリスト教の研究センターや関連団体と連携し協力して調査すること
   4.CFMの管理委員に依頼された時には報告書の要約を準備すること
   5.教会指導者を教会メディアを通して教会員に問題を喚起するよう、教育的な資材で助けること
   6.緊急事項に応じて、CFM管理委員からの指示を受けること
条件:・CFMに連なる教会の活発なメンバーであるクリスチャンであること
   ・CFM憲法に明記されている目的を分かちあうこと
   ・推進技術とチームワークの能力を有すること
   ・キリスト教共同体か関連する団体での国を代表する経験を有すること。マネージメント能力があれば有利である
   ・政治や宗教や文化の領域で充分な調査能力を持つこと
   ・教会一致運動の協力やパートナー関係に基づく教会のビジョンを有すること
   ・草の根レベルの意見や関心に耳を傾け理解すること
   ・CFMの使命や目的やプログラムを遂行できる能力があること
   ・強いCFMのイメージを作り出す能力を持つこと
   ・職位が要求することを理解する支援的な家族がいること
必須条件:・高等教育の学位は最低限必要
     ・研究と証明できる管理行政の技術
     ・英語とマレーシア語の充分な言語能力
     ・組織遂行能力
給与:これはキリスト教環境における困難な地位である。CFMを通じて神に奉仕する熱意を持つ人を指名したく願っている。資格と経験に応じて給与を決める。交渉可。

(以上)(ユーリ注:あいかわらず表がアップ段階で乱れています。何卒ご了承ください。)

どなたに決まるんでしょうか、とても楽しみです。条件は厳しそうですが、外部の調査者として、私にとってもこれは切実な希望です。どうも、マレーシアのキリスト教関係の管理職の人々は、とにかく各種交渉と資金集めと会合に忙し過ぎます。スピーチや声明のような文書ばかり書いていて、本当のリサーチ文献がほとんど出ていないからです。欧米系宣教師の入国および長期滞在が困難になってから久しいので、目の前の事柄に対応するだけで精一杯という感じなのです。これは、民族と宗教に基づく教育政策の結果、人材が欠乏している証拠でもあります。

...と書いていたら、マレーシアからメールが届きました。カトリックのクアラルンプール大司教の女性秘書フランシスカさんからでした。「『ヘラルド』発行の件で、マレー語版に‘Allah’ の語彙を用いなければ許可を出すという条件だったのだけれど、私達がその条件に従わなかったので、結局のところ、内務省を相手取ってカトリック側が法廷に提訴したの。4月25日に、今後もライセンスがとれるかどうかで、大司教が第一回目の審問に赴く予定です。どうか覚えて祈ってください」との由。
ちょうどそれに該当するマレーシア発個人ブログが、Google Alertの検索に乗って届きました(2008年4月24日付“Lily's Room"(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20080424))。
実は、このところずっと『ヘラルド』についてブログ上で書きませんでしたが、あの騒動の後、毎週なんとか届いてはいます(参照:2007年12月25日・2008年1月7日・1月8日・1月16日付「ユーリの部屋」)。You Tubeにも、英国からのテレビ取材が投稿されていて、私もお目にかかったことのある編集長Rev. Fr. Lawrence Andrew がインタビューに応じていました。
上記の大司教は、二度お目にかかったことがあります。詳細は、次の拙稿にあります。「クアラルンプール大司教表敬訪問記」(「マレーシア研究会会報No.21」(2001年9月号 pp.22-25))「カトリック教会クアラルンプール大司教の退任」(「マレーシア研究会会報No.27」(2003年10月号 pp.24-30))(http://homepage2.nifty.com/jams2006/NLindex03.html#christianity

なんだかマレーシアは、ますます妙な方向に時間とエネルギーを費やしているような気もします。何とかうまく解決の道が見つかりますよう...。