ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

最近買った本の小話

昨日の「ユーリの部屋」に書いたカトリック新聞『ヘラルド』の発行許可に関する内容は、電子版マレーシアメディアの2007年12月20日付『マレーシアキニ』にも、記事が掲載されました。また、華人や一部のインド系に支持者を有する野党DAP(民主行動党)の前党首だったLim Kit Sinag(林吉祥)氏のブログにも、本件に関する国会での氏の発言が掲載されています。
本日付の英語版はてな日記“Lily’s Room”(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2)に、上記二つの複写を転載しておきました。ご興味のある方は、どうぞお読みください。ただし、後者には、先月あたりに騒動となったインド系中下層の人々によるデモ騒動についても言及されています。その件は、12月初頭に名古屋の南山大学で開催されたマレーシア研究会の研究大会初日でも、質疑応答の際、触れられました。

さて、遅ればせながら、2007年12月15日に京都で買った本について、少し書いてみましょう。

1.犬養道子『マーチン街日記』中公文庫1979年初版/1994年4版

2007年12月18日付「ユーリの部屋」で、前田護郎先生の『聖書愛読』から、冒頭にカール・ヒルティの引用をさせていただきました。実は、私がヒルティを知ったのは、学部生時代に読んだ犬養道子氏の『幸福のリアリズム中公文庫1984)がきっかけだったのです。その後、どうやら犬養道子氏が、ヒルティの思想をかなり模倣して書いているらしいことに気づいてしまいました。それはともかく、ヒルティにはすっかりやみつきになり、岩波版『眠られぬ夜のために第一部・第二部の二冊)は、何度も繰り返して読み(白水社版も手元にあります)、マレーシア滞在時代も毎朝通読していました。
ただし、その割には、当地の実生活で生かせなかったのが、何とも残念というのか、そもそも無理だったというべきなのか…。ところで、マレーシアのキリスト教指導者層は、ヒルティを知っているのでしょうか?こういう本こそ、マレー語でも翻訳されるべきなのでしょうが、恐らくは、可能になったとしても、実現は遠い将来になるでしょうねぇ。
ちなみに、故三浦綾子さんの『道ありき』の英語訳が、クアラルンプール郊外のブミプトラ系マレー語教会の入り口に置いてあるのを見かけたことがあります。それから、首都圏にある聖ヨハネカトリック教会の英語ミサでは、神戸のスラム街で奉仕した賀川豊彦氏の話を聞いたことがあります。意外と、日本のキリスト教は、このような形でマレーシアに紹介されているのです。

マーチン街日記』から逸れてしまいましたが、この小さな日記風の本が、なぜかカトリック書店に並べてあったので、いささかびっくりしました。キリスト教の話は、日曜日のミサに出かけた記録が中心で、しかも、説教内容や教会活動にそれほど深く触れられていないのに、です。正直なところ、舞台は1964年から1965年の北米東北部ケンブリッジ周辺で、その割には主観的な素人っぽい書き方なので、それほど読まれたようにも思えないのですが。
ただ、今回買ってしまったのは、1994年に第4版が出ていたことにも驚いたからです。結局のところ、主人のかつての留学先や地名が描かれているという理由で、私にも成長の跡というのか、理解できる部分が急激に拡大していることに気づいたのです。
この本自体は、同じく学部生の時、大学図書館から借りて読みました。でも当時は、何やらアメリカの歴史事情がよくつかめないままに読もうとしたのと、登場人物の把握が難しく、地名もピンとこなかったので、さっと斜め読みして返却したことを覚えています。同じ著者の『私のアメリ新潮社1966年)や『アメリカン・アメリ文芸春秋1978年/1992年第14刷)を通して読むと、視点や内容に重複があることに気づくのですが。
ともかく、著者が今の私とほぼ同年齢だった時の著作ということもあり、背景理解の可能なページがほとんどになったという点で、意義のある本でした。そして、この本の中で犬養氏は「私は70歳ぐらいまでしか生きないだろう」と述べているのですが、あにはからんや、86歳の今も、執筆を続けていらっしゃいます。何はともあれ、この気力だけは、見習いたいものです。

2.岩波文庫フランス名詩選』と『唐詩

これで、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、中国の詩集が揃いました。岩波版でスペイン語の詩集もずっと探しているのですが、今のところ見つかりません。スペイン・ラテンアメリカ関連では、政治詩のような個人詩集はあっても原語なしの日本語訳だけだったりして(←あまり意味ないですよね?)、まだ入手できていません。あったとしても、やたら高価で、ちょっと買えそうにありません。
スペイン語圏というのは、古今東西のすぐれた詩を集めた本を出していないのかとも思ったのですが、もしご存じの方がいらっしゃったら、是非ともお教えください。かえすがえすも、1999年8月に主人とマドリードやトレドを旅行した時、本屋さんに立ち寄るべきだったと残念です。スペイン語が話せなくもないのに、どうしてこういうもったいないことをしたのか、と。
さまざまな言語ですぐれた詩に少しでも触れることで、マレーシア研究のために、偏ってさびつきそうになっている言語感覚に、新鮮な刺激を添えたいのです。

3.ペトロ文庫教皇ベネディクト16世霊的講話集2005年・2006年(二冊)

ペトロ文庫なんて、初めて聞くカトリック出版社だと思っていたら、やはり2005年10月に創設されたもののようです。やはりこういうものをまとめて読んでおかないと、マレーシアでのムスリム・クリスチャン関係で、カトリック共同体の動向がつかめませんので。2006年9月の例のレーゲンスブルク大学での講義も、もちろん加筆と脚注を添えた上で、掲載されています。この講義とムスリムの反応については、また後日、書き加えたいことがあります!