ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

再び日高義樹氏の講演会へ

1月20日の土曜日の午後、日高義樹氏(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%C6%FC%B9%E2%B5%C1%BC%F9)の新春講演会に行ってきた。
同じ主催者による会合だが、今回の会場は大阪国際交流センターで、私にとっては二度目(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170123)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170124)。あれから早くも一年が過ぎたことに、深い感慨を覚える。
昨年、「翻訳頑張って」と励ましのお言葉を直接にいただいたものの、思いがけず、当初の予定がまるで変わってしまったことは、過去ブログで記した通りである。だが、今振り返っても、昨年に起こった全てのことが、私にとっては必要なプロセスでもあった。もしも、時間との競争で焦りながら訳文作業を進めていたとしたら、イデオロギー上の拮抗や憲法や国防を巡る現状問題、天皇家に対する世論の分裂状態等を含めて、長年気になっていた論点や血縁ルーツや国風文化等を、自分なりに考え直すきっかけさえ得られなかっただろうからである。
既に詳述したことでもあり、ここでは繰り返さない。
さて、チケットを早目に購入して楽しみにしていた講演会でもあったが、一年を経て、今回は前回よりも気分は晴れやかであった。昨年は、いわば枯れ草に火がついたかのような興奮状態で、脳内がポッポと沸騰していたが、その後、日高氏の80年代の著作を数冊まとめて図書館から借りて読んだこともあり(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170202)、日米関係を巡る時代の趨勢や、日高氏の40年に及ぶワシントンでのお仕事の骨子を踏まえて、おっしゃっていることがスッと納得の行くように入ってきたのである。
所用のために25分ほど遅れて会場に到着したが、中高年を中心に大勢の人々が集まり、熱心に聴き入っていた。二百名収容のホールだが、凡そ百数十名はいたのではないだろうか。
今回の講演の主旨は、(1)北朝鮮の毒ガス生産とミサイル問題に対する、日本側の危機感のなさ(2)人柄を取り沙汰されがちなトランプ現大統領だが、米国の減税政策は非常に成功しているため、恐らくは再選されるであろうこと (3)いつまでも日米安保条約に基いて、自己犠牲の下にアメリカが日本を助けてくれるとは考えない方が良いという厳しい警告(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150821)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150822)、であった。

北朝鮮の毒ガス生産は世界一であり、中国、ロシア、シリア、イラク北朝鮮から購入していた事実は、なぜか日本で報じられていないとの由。恐らく5年以内に起こるであろう恐るべき事態、特に東京オリンピックが狙いであろうことに対して、日本側の備えは万全なのか。今後、北朝鮮は韓国を飲み込んで南北統一へ向かい、それによって在日米軍が日本から撤退する可能性もある。その場合、日本に金を出せと要請して、経済的に無謀な要求が予測される。
安倍総理は「日米お助け条約」などと称して改定を行ったが、ジョセフ・ナイ氏への十数年前のインタビューによれば、尖閣諸島騒ぎの頃から「日本を守ることをアメリカは考えていない」らしいことが、無言回答によって察せられたという。
昨年12月20日には、トランプ政権の要人ほぼ全員が集合して、アメリカの国益のみで考える新戦略決定として「現実戦略」を打ち出した。要点として、軍事同盟は無駄だから数年で止めよう、世界中の軍事基地から引き上げよう、外国の米軍を全部撤退させよう、という話になっていたようである。
現時点で最も恐ろしいことは、サイバー攻撃であり、同盟国も不要になる可能性が高まっていることである。つまり、日本を防衛することを米国は全部破棄することになるという意味である。
アメリカの絶対的な力が落ちていることは確かで、過去には朝鮮戦争でもベトナム戦争でも勝てず、中東でも勝てていない。特に中東では、ここ16年も戦っているにも関わらず、である。
より深刻で恐ろしいのは、これに対する日本側の危機意識のなさである。「日本は良い国だ」と自我自賛しているが、外国から見ると奇妙である。
平和憲法」の是非についても、従来は、何でも反対の社会党(「だってコミンテルンだもん」)、平和主義の公明党細川氏や鳩山氏のせいにしておけば通用したが、今や既に「日本のことを会話で話題にしなくなったアメリカ」が現状であるという。「アメリカから見て、遠く小さくなった日本」とも語られた。
また、「日本経済が好調なのは、あと5年」との見通しも語られた。一方、アメリカでは「中国は信用できないので投資できない」と言われている。北朝鮮は、食べ物もろくに食べずに切り詰めて、日本並みの能力で毒ガスを生産してきたが故に、「これは使うでしょう」。その現実を、どのように理解するか。
最後に、トランプの悪口ばかり言っている人々対して、なぜそれが間違っているのかを示された。
アメリカの政府には二重性がある。一つはホワイト・ハウスであり、もう一つはシンクタンクである。前者は、税金によって養われている官僚が4年から8年のスパンで仕事をする場所である。大統領が交替すると全部スタッフが入れ替わるので、目の前の仕事だけに集中する傾向がある。一方、後者は日高氏が所属しているハドソン研究所のような場で、アメリカの企業から資金をもらって、政策ペーパーを書く作業を通して長期的思考を持っている。
(この日高氏の言葉から、「大統領の表面的な言動に振り回されず、その背後のシンクタンクの動向をじっくりと注視せよ」という意味だと、私は解した。)
今回の講演のまとめとしては、「自分の国のことは自分で守れ」「『移民を入れろ』というアメリカの言うことを聞く必要はない」ということだった。引き続く15分間の質疑応答の後、新春メッセージとしては「自分のことは自分で守れ」と強調されていた。
「来年も是非いらしてください」という主催者および聴衆からのお願いについては、「私も年を取って、来年来られるかどうかわからない」と日高氏はおっしゃっていた。
だからこそ、一期一会として、昨年と今年、お目にかかれた機会を、改めて非常に貴重なものと感じる次第である。
今回の新著『米朝密約 なぜいま憲法改正、核装備か』のサイン会は遠慮したが、昨年よりは並ぶ列が短かったかと思う。しかし、昨年いただいたサインの感動は、今でも忘れられない。
その後、昨年と同じ「仲間ハウス」へ有志でぞろぞろと歩いて行き、一時間ほどの懇親会となった。
そこでの話題で興味深かったのが、慰安婦問題(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%B0%D6%B0%C2%C9%D8%CC%E4%C2%EA)。日高氏によれば、アメリカで韓国人は嫌われている。財閥のために仕事がやりにくい韓国では、駐留米軍に特別給与がつくそうである。従って、アメリカで在米韓国人が慰安婦像を建てたとしても、日本側は放っておけば良い。慰安婦問題そのものについて、アメリカは日本を非難していないが、安倍総理が大金を払って口封じを試みたのは最悪のやり方だと言われている。既に済んだ話である上、日本側に資料があるならば、それを出して「もう二度とやりません」と韓国に対処すれば良いのに、お金で解決しようとしたのは間違いだ、との由。

仲間ハウスで、例によって参加者が順に短く自己紹介をする時があり、私は以下のように質問をさせていただいた。

「〇〇市の近くに住んでいるAと申します。昨年の今日(ユーリ注:実は一日違いの間違い)、この場所で、リチャード・パイプス教授のことで先生に質問した者です。あれから、図書館で80年代の先生のご著書を数冊借りて、必要箇所をコピーしてファイルしました。(クリアファイルの複写を示す。)今回の質問ですが、トランプ大統領による『エルサレムイスラエルの首都』宣言に対して(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20171207)、日本は国連で反対決議に賛同しました。その時、ニッキー・ハレイ国連大使が、『反対した国を私は見ている。資金を撤退する』と言いました。そのことは、在日米軍の撤退につながるのでしょうか?」

そのご回答。

「つながらないけれど、アメリカのペンタゴンユダヤ人が大嫌いで、大尉以上には偉くなれない。ユダヤ人の人種問題と在日米軍とはつながらない。国連が反対するのは、国連が旧共産国と中東諸国に乗っ取られたからだ。国連を三年間取材したことがあるが、話し合いの場ではなく、アラブに乗っ取られた国連。イスラエルは一国だが、アラブ諸国は数が多いから、これは数の暴力。日本を大きくするのを助けたのはユダヤ人である。日本は棄権するぐらいがいいのではないか?アメリカがエルサレムに大使館を移すことは、アメリカの問題である」。

そして、「国連で日本が反対したのを、よく見ていますね?」と褒められた。だが、これは日本でも繰り返し報道されていたことであり、広く知られたニュースではなかったかと思う。(現に、今朝のNHKラジオ・ニュースでも、再びエルサレム移転の報道がなされていた。)
参加者からは、「中東和平の仲介に立ちたい安倍さん」とのコメントも聞かれた。
その後しばらくして、佳境に入った辺りで、「先生の飛行機の都合があるので」とお開きに。記念写真を撮った後、お車で帰られるのを、昨年と同様に皆で見えなくなるまで見送った。

今回は、日高氏の言葉一つ一つに納得がいったばかりではなく、いただいたご回答の「日本は棄権するぐらいがいい」と同意見だったことも(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20171222)、大変に満足のいくものであった。

注:上記のアメリカの国連大使のお名前は、「ニッキー・ヘイリー」と訳出されているものもあるが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170515)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20171222)、私は「ニッキー・ハレイ」と訳している(http://ja.danielpipes.org/article/18147)(http://ja.danielpipes.org/article/18158)。

ウォール・ストリート・ジャーナル』(http://jp.wsj.com/articles/SB12404974170281193886104583647402597124668?mod=newspicks

「トランプ政権、大使館のエルサレム移転計画を加速➖ 新設はせず、既存施設の改修で来年から業務開始へ」

By Felicia Schwartz and Jess Bravin
2018 年1月19日 15:54 JST


【ワシントン】ドナルド・トランプ米政権は、在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移転する計画を加速させており、既存施設を大使館として改修し、来年から業務を開始する方針を決めた。米当局者らが明らかにした。
 レックス・ティラーソン国務長官を含む政権幹部らはこれまで、エルサレムに大使館を新設すると述べていたが、方針を転換する。ティラーソン長官は移転が完了するのは早くとも3年後との見方も示していた。
(後略)

(引用終)
相変わらず、米国の福音派が後押ししているかのような記事が他にもあるようだ。私自身、それに対して否定はしないが、必ずしも100パーセント与しないのは、上記の日高氏の言からも察せられよう。

[2018年1月29日追記]

フェイスブックhttps://www.facebook.com/ikuko.tsunashima)からの転載。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26164180W8A120C1FF2000/
「トランプ氏、大使館のエルサレム移転『来年始める』イスラエル首相と会談」
2018/1/26


エルサレムへの米大使館移転は「予定よりも早く進んでいる。来年のどこかで小規模に始めたい」と語った。(引用終)

← 国連の反対決議で、日本は「棄権」の立場を取り、静観するのが妥当だったのでは、と改めて思う。

(転載終)