最初から本筋に触れていれば
4日前に近所の図書館で借りて読んでいるのが、
E・G・ヴァイニング(著)小泉一郎(訳)『皇太子の窓』文春学藝ライブラリー(2015年4月)
である。
今更というところだが、過去に読んだことのある皇室ジャーナリストと呼ばれる人達の著述や発言、隔月の美容院で眺めていた週刊誌記事、テレビの特集番組で紹介されていた内容を思い出してみると、かなり実相は違うというのが正直な感想である。
本著は1951年にアメリカで出版され、即座にベストセラーになったという(p.493)。
訳文が丁重で皇族に対する敬語が使われていることもあって、なかなか興味深い。また、共産主義の浸透に関する率直な記述等、史実記録としても貴重だと思われる。
敗戦のショックにも関わらず、日本人は表立ってアメリカ占領軍に抵抗したり反抗したりせずに、温かく礼儀正しく、アメリカのフィラデルフィアからクウェーカー教徒のヴァイニング夫人をお迎えした。そして、皇太子(今上陛下)を始めとする天皇家や皇族方の英語の家庭教師および教育係として、四年間を共にしたのだった。
ヴァイニング夫人という方の人となりや日本観察は、いかにも古き良き時代の教養あるアメリカ人そのものであり、とても好感が持てる。また、日本の上流階級の方々が、どのように英語をお習いし、どのような本を読まれていたのか、その一端が伺える。
もっと早くから読めればよかったのだが、今となっては仕方がない。
学生時代から、専門分野以外に乱読を続けてきた私だが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20171218)、一つの理由としては、自分の視野の狭さを少しでも打破したかったことと、そもそも誰の言っていることが本当なのか、不安で落ち着かなかったから、ということが挙げられる。決して暇潰しではなかった。
時間やエネルギーを節約して物事を正確に理解するには、やはり学生時代に世界観の諸相の原理を学んでおくことだろう。また、しっかりとした歴史を学ぶことで、現在を直視し、将来を予測する訓練をしておくことだろう。さらに、いい加減な論評もどきで判断せずに、評価の定まった良質の基本書籍を段階を追って読んでいくことだろう。
あまり手を広げるつもりはなかったのだが、手当たり次第、気になった分野を少しずつ学んできた。
もうこの辺りで、整理をつけなければならない。後はノートのメモやリストを手がかりに、少しずつ纏めていく時期に差し掛かっている。
というわけで、最後に、今注文中の本を二冊。
Richard Pipes, "The Unknown Lenin:From the Secret Archive (Annals of Communism Series)" Yale University Press (1999)
(以上)
上記二冊のテーマに関して、学生の頃から本筋に触れていれば、もっと国内外の理解が楽だったはずである。残念だが、無知なままの延長では心許ないので、今からでも補えればと願っている。