ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

“The O’Reilly Factor”

東洋経済』(http://toyokeizai.net/articles/-/148867


米国でバカ売れしている「日本叩き本」の正体:トンデモ本が3カ月で50万部も売れた!
2016年12月11日
ピーター・エニス(Peter Ennis)東洋経済特約記者(在ニューヨーク)


・米国で2017年1月にドナルド・トランプ大統領が誕生することを受けて、日米関係の先行きに気を揉む人も少なくないだろう。そんな中、米国では『Killing the Rising Sun: How America Vanquished World War II Japan(日出る国をやっつけろ:米国はどうやって第2次世界大戦で日本を屈服させたか)』というショッキングなタイトルの本が売れ続けている。


保守系政治コメンテーターのビル・オライリー氏らが書いた同書は、今年9月13日に発売された。1945年8月に広島と長崎で行われた原爆投下の正当性を検証するという「歴史書」にもかかわらず、発売初日に10万部を販売。その後も売り上げを伸ばしており、ニールセン・ブックスキャンによると、11月末時点で約49万部も売れている


・しかし、『Killing the Rising Sun』について、タイムズ紙はおろか、ほとんどどこのメディアも取り上げていない。また、歴史や日本を専門とする学者やジャーナリストでも、読んだという人はほぼ皆無。50万部近くも売れているというのに、メディアでまったく話題にされていないこの本には、いったい何が書かれているのだろうか。


・物語はまず、1939年10月12日、午前10時の米大統領執務室で、時の大統領、フランクリン・ルーズベルトと、ニューディール政策のアドバイザーのひとりであるウォール街の金融マン、アレキサンダー・ザクスが話しているところから始まる。ナチス・ドイツポーランドへ侵攻し、第二次世界大戦が幕を開けてから6週間。ナチスによる原爆開発が懸念される中、米国も開発を進めるべきだとするアルベルト・アインシュタイン博士による手紙をザクスが読み上げる場面が描かれている。この瞬間、「まさに大量破壊兵器の時代が幕を開けようとしていた」。


・物語の舞台はその後、米軍と日本軍による戦闘現場や大統領執務室、ときには皇居に移り、旧日本軍による残虐行為や熾烈な戦い、そして原爆投下の決断に至るまでの経緯が描かれていく。登場人物も、米国大統領や多くの米兵、さらには昭和天皇や「原爆の父」と言われるロバート・オッペンハイマーと幅広く、それぞれの思惑が克明に記されている。


・関係者などの言葉は、過去に公表されたものを使っているほか、最近、保守系ラジオ番組に出演した際には、「多くの米兵たちの手紙を参考にしたり、こうした文献を研究している人など、多くの米軍関係者の話を聞いた」とオライリー氏は話している。同書の最後には、5ページにもわたる参考文献が掲載されている。


オライリー氏自身も初めに「この本に書かれていることはありのままの事実」と書いているが、これをノンフィクションとして扱うのは違和感がある。同書の中には、多数の歴史的認識の誤りや、歪曲表現が散見される。前述のラジオ番組でも、旧日本軍が第2次世界大戦中に2000万人もの中国人を殺害したという記述の情報源を聞かれ、「1930年代に行われた残虐行為については、米国の新聞もレポートしており、記録として残っている。ただ、米国人の記者がたくさんいた欧州と違って、太平洋諸国にはほとんど記者がいなかったうえ、マッカーサーによる言論統制が厳しくほとんど事実が伝えられていない」と答えている。


・さらに、オライリー氏は最終的に米国が原爆投下を決めた背景には、日本古来の「武士道」を重んじる文化が大きく関係していると指摘。日本を降伏させるには核兵器の使用以外に手段はなく、日本侵攻を未然に防ぐことによって多くの命を救うことができたと結論づけている。前述のラジオ番組では、「日本人は極端に熱狂的で狂信的であり、武士道にのっとって天皇のために死ぬような人たちだった。小さな子どもも、女性も含めてみんなそう生きていた」と語っている。つまり、「そういう国民と戦うのは、ドイツ人と戦うのとは話が違う」というわけだ。


・もちろん、「原爆投下は正しかった」とする結論はオライリー氏らの主観であり、間違いだとは言えない(実際、2015年の米ピュー・リサーチ・センターの調査では、半数以上の米国人が「正しかった」と答えている)。


オライリー氏はこの本を書くにあたって、オバマ大統領を含む5人の大統領経験者に、当時の大統領ハリー・トルーマン氏による原爆投下の決断が正しかったかどうか聞いている。これに対して、ジミー・カーター氏とブッシュ親子からは「正しかった」とする手紙が届き、それがそのまま掲載されている(ビル・クリントン氏、オバマ大統領からは返事が来なかった)。


・この極端な見解が詰まった歴史書を上梓した背景には、今年5月のオバマ大統領による歴史的な広島訪問がある。オライリー氏らの訴えは非常に明確で、ひとつは、原爆投下について謝罪すべきではないということ、もうひとつは、オバマ大統領が考えている「核先制不使用」という新たな政策は断固として拒絶されるべきだということだ。


オライリー氏は米国人なら誰でも知っている政治コメンテーターで、20年間続いている自らの名前を冠した報道番組「ザ・オライリー・ファクター」は、保守系テレビ局フォックス・ニュースの中で高い視聴率をたたきだしている


少なくとも歴史家や日本専門家などのエリート層はこの本を読んでいないため、米国の戦略担当者における歴史的認識や、今後の対日政策への影響は皆無といっていい。また、共和党寄りとされるフォックス・ニュースには、トランプ氏に近しい人物も少なからずいるが、今のところオライリー氏はトランプ氏と一定の距離を保っており、その影響力は限られていると見られる。


・歴史的事実の信憑性に疑いがあること、オライリー氏自身が過剰に保守的な側面があり「危険」であることから、取り上げたくないというのは頷ける話ではある(取り上げることで余計に売れる可能性もある)。


オライリー氏の本を読んだという歴史家や日本専門家を見つけることはできなかったが、こうしたエリート層が無視しているオピニオンリーダーやポピュリストが米国でひそかに支持を広げていることは、トランプ氏が次期大統領に選ばれたことで証明された。エリート層からすれば、オライリー氏や同氏の「Killing」シリーズは、しょせんタブロイドであり、米国の「恥」なのかもしれない。しかし、こうした現象から目を背けることは、今の米国の真の姿から目を背けていることになるのかもしれない。

(部分抜粋引用終)
このビル・オライリー氏によるフォックス・ニュースの番組『ザ・オライリー・ファクター』(Fox News: The O'Reilly Factor)には、かつてダニエル・パイプス先生も何度か出演されている。

http://www.danielpipes.org/spoken/


January 9, 2002:Unresolved Problem
April 4, 2002:Top Story: Interview with Daniel Pipes
August 19, 2002:Impact: Al Qaeda among us
September 30, 2003:The Guantánamo Arrests – What Do They Mean?
February 2, 2005:Professor [Shahid Alam] Compared Terrorists to Founding Fathers

(部分抜粋引用終)
思えば、9.11発生からイラク戦争が泥沼化するまでのパイプス先生は、メディア出演や各種講演など、あちこちで引っ張りだこだった。そして、中東フォーラムの組織も新たにオフィスを構え、スタッフを増やし、プログラムも次々と拡大して、忙しくも大変に充実した時期だったと言えよう。
映像を見ても、髪の毛が黒々とふさふさしていて、今よりもスリムで、もっと知的なイメージがある。
あれから十年以上経って、まさか私などが邦訳に従事することになるとは、誰も予想していなかっただろう。
そして、1996年に開始して以来、二十年ほど続いた人気番組だったが、パイプス先生と一日違いで同い年のビル・オライリー氏は、セクハラ疑惑のため、この度、降板することとなった。

http://ironna.jp/article/6357


米フォックスニュース、保守派に人気の司会者を解雇 セクハラ疑惑で
BBC
2017年04月20日 17:15


・米フォックスニュースは19日、保守派に人気の名物司会者ビル・オライリー氏を解雇したと発表した。複数の女性に対するセクハラ疑惑が取りざたされるオライリー氏の番組からは、50社以上のスポンサーが撤退していた。


・フォックスニュースは「疑惑を徹底的かつ慎重に精査した結果(略)ビル・オライリーは復帰しない」と短く声明で発表した。


オライリー氏が司会する番組「オライリー・ファクター」のスポンサー企業のうち50社が、スポンサー契約を終了させていた。


・1996年に放送が始まった「オライリー・ファクター」は、平日夜放送の60分番組で、政治の話題を中心としたトークショーだった。保守層の視聴者の多いフォックスニュースの看板番組のひとつで、1回の視聴者数は400万人近く。

(部分抜粋引用終)
テレビ番組は、年老いていく容姿も関係するので、引き際としては適切かもしれない。だが、ご本人を含め、恐らくはパイプス先生にとっても、まさかこのような結末になるだろうとは、ピーク時のあの頃、誰も予想していなかったことだろう。