ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

ダグラス・マレイ氏

やっと昨日になって、英国人の保守派論客であるダグラス・マレイ氏のさわり部分を、少しだけご紹介できた(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170316)。本来ならば、昨年9月の欧州旅行前にしておくべき作業ではあったと、今にして思うところである。
とにかく、あの一週間の旅行前には、旅テーマに沿ったパイプス・コラムがリーディング・リストとして列挙されていたので、その全部の訳文を作成するだけでも精一杯だったのだ。少なくとも極東から一人参加する私は、まずは訳文を完成させておくことが前提条件であり、それがクリアできれば、旅程でも困らないだけの準備ができると思った。
それは実現できた。だが、ダグラスさんのことは、その何年も前から英語ブログでも引用してきた方だったので(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20090218)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20130309)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20150108)、せっかくお会いできるとわかっていたならば、もっと知識の上で準備しておくべきだった。そうすれば、もっと具体的な質問やお話ができたかもしれないのに、と後悔している。当時は、とにかくアップアップで、ファイルは作成してあったものの、読んでも頭に収めきれなかったのだ。ある程度の冷却期間と、まとまった時間が必要だった。
英国人はよろず控えめなところがあり、内心で何を考えているのか、アメリカ人よりもわかりにくいところがあるという印象がある。それに、階級制のこともあるので、とかく下手に近づけない感覚もある。英語でもっと自由に話せればよいとも思うが、英語力以上に、内容や背景の共通理解の方が重要だと思う。
彼は大学では英語専攻だったこともあって、良い英文を書く。文章の終わり方がピリリと引き締まっていて、品の良いユーモアもあり、おもしろい。エリート教育を受けている人は、難解な英語で高尚な文章を書くのかと思いがちだが、凡その政治志向が理解出来、トピックに馴染みがあれば、それほど難しくはない。
私にとって印象的で興味を惹かれた文章は、「イスラームを研究して無神論者になった」(https://www.spectator.co.uk/2008/12/studying-islam-has-made-me-an-atheist/)「生涯最高のチャンス」(https://www.spectator.co.uk/2011/09/chance-of-a-lifetime/)「クリストファー・ヒッチェンスのこと」(https://blogs.spectator.co.uk/2011/12/remembering-christopher-hitchens/)「悪い識見が悪い政治をつくる」(http://www.standpointmag.co.uk/outsiders-diary-november-2016-douglas-murray-free-speech-goes-bad?page=0%2C0%2C0%2C0%2C0%2C0%2C0%2C0%2C0%2C0%2C1)である。
〔2017年3月19日補記〕もっとおもしろかったのが、トランプ大統領には会ったことがないが、トランプ氏のご両親とは知り会いだという記述だった(https://www.spectator.co.uk/2016/10/donalds-always-been-the-outgoing-one-meeting-the-trump-parents/)。ちょうど、私達の欧州旅行から帰って一ヶ月も経たない2016年10月29日付の「日記」叙述で、こんな風に書かれている。

I have never met Donald Trump, but I knew his parents. A fact that makes me feel about 100 years old. Which was actually nearer the age Fred and Mary Anne Trump were when, as a teenager, I made my first trip to New York. I remember riding backwards in their limousine on the way to lunch with the extended Trump clan and the lovely Mary Anne apologising that her son Donald would not be joining us.

(部分抜粋終)
「自分が100歳ぐらいになった気がする」とも。初めてニューヨークを旅した時に、ご両親に昼食をご馳走になっていたのだ。だからこそ、複数の歴代大統領に親子でお仕えした経験から「ネバー・トランプ」陣営だったパイプス先生(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160723)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160804)とは異なり、ダグラスさんは「ドナルド・トランプは、それほど悪くもないだろうよ」(Donald Trump won't be as bad as you think)(https://www.spectator.co.uk/2016/11/donald-trump-wont-be-as-bad-as-you-think/)と書けたのだろう。世代差が歴然としている。〔補記終〕
ところで、正統な英国人として英国国教会の信徒だった彼が、2008年以降、無神論者あるいは不可知論者であるという。または、「文化的クリスチャン」だと名乗っている。この辺りの変遷プロセスは、数年前の私ならば馴染みのある話題だったが、今ではちょっと時期外れかもしれない。
とは言え、複雑な物事を素直に真っ直ぐに捉え、常識的な判断から思考展開される点、育ちの良さが窺える。だからこそ、たくさん書ける上、読みやすいのだろう。