ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

レッテル貼り思考の陥穽

一ヶ月と二週間かけて、ようやく右目の充血が収まって元通りになってきた(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170219)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170303)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170306)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170313)。しかも、数日前の再診では、眼圧もすっかり正常値に戻り、網膜も角膜も正常、矯正視力も問題なし、とのことだった。
確定申告書も、電車に乗って久しぶりに列を作って提出したが、ものの10分もかからずに全て終了した。
これで、懸案だった最低限の用件が終わったことになるが、再発が怖いので、今月末までの二ヶ月丸々、ゆっくりすることに決めた。
その間、何をしていたか。昨年の欧州旅行で知り合った英国人論客のダグラス・マレイさんの活発な言論活動に関して(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20090218)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20130309)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20150108)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20161208)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20170201)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160726)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160802)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161018)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161024)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170123)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170131)、映像(http://itunalily.jp/wordpress/)および各種出版物に掲載されているコラム一覧(http://henryjacksonsociety.org/author/douglas-murray/)(https://blogs.spectator.co.uk/author/douglas-murray/)(https://www.gatestoneinstitute.org/author/Douglas+Murray)(http://standpointmag.co.uk/writers/?showid=DOUGLAS%20MURRAY)をざっと眺めていたのである。
ヘンリー・ジャクソン協会とは、ロンドンの保守系シンクタンクで、ダグラス・マレイ氏は三十代にして副所長を務めていらっしゃる。(最近、日本大使館が反中国プロパガンダ用にお金を渡したというニュースが流れてきたばかりだが、その真偽や是非はともかくとしても、全体的に、日本の主流にとってはありがたい政治路線だと言える。)そもそも、ヘンリー・ジャクソンとは米国の民主党上院議員で、パイプス先生のお父様が1970年代にアドヴァイザーを務めていらした時期がある。ケンブリッジ大学の関係者を中心に、その名を冠して2005年に立ち上げたシンクタンクであればこそ、保守派かつタカ派であるというのは、充分に頷けるところである。
ダグラスさんは、普段、ほぼ最低三日に一本の割合で、英国版『スペクテーター』にコラムを書き、ロンドンの『スタンドポイント』誌にも日記や論考等を掲載する他、ジョン・ボルトン氏(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140521)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160630)が長を務めるニューヨークのゲートストーン研究所にも、2009年から129本の論考文を掲載している。(ちなみに、パイプス先生は8本を掲載(https://www.gatestoneinstitute.org/author/Daniel+Pipes)された。)その合間に、討論会や講演やテレビ出演を頻繁に行い、大活躍されている。
典型的な英国知識人の英語なのだが、思想路線はパイプス先生と重なる面が多く、トピックに関しても非常にわかりやすい。また、ウィットに富む文筆の才能に恵まれ、弁論や討論でもキビキビとして鮮やかだ。しかも、イートン校やオックスフォード大学で教育を受けているのに、なぜか一般大衆と同調するような、いわゆる「ネオコン」政治思想を堂々と披露されている(https://www.amazon.com/NeoConservatism-Why-Need-Douglas-Murray/dp/1594031479)。勿論、英国では少数派の親イスラエルだそうだ。
「エリート教育を受けた英国人にしては、珍しいんじゃないですか?」と、ある朝、ホテルの通路を偶然一緒に歩く成り行きになった時に質問してみたが、「え〜、そうですね、珍しいでしょうね」と戸惑いながら同意された後、「あ、朝ごはん...」とさり気なく避けられてしまったので、ずっと気になっていたのだった。
彼は欧州連合の各都市を旅していて、現在の移民問題をよく熟知しているのだが、親近感は米国にあるようだ。また、2007年1月に左派のケン・リビングストーン市長が主催したロンドンの討論会で、パイプス先生から指名され、ペアを組んで以来の知り合いなのだが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161018)(http://ja.danielpipes.org/article/12705)(http://ja.danielpipes.org/article/13801)、そのこともあって、今回、パイプス旅団に加わったようだ。だが、パイプス先生が個人的に喧嘩をしたり対立したりした何人かの人々とも(http://www.danielpipes.org/blog/2003/08/christopher-hitchens-rants-again)、実は親しくつながっている、ということがわかった。
例えば、まだ学生だったダグラスさんの処女出版の作品を非常に褒めて、2011年に亡くなるまで良き友人(my late friend)だったのは、故Christopher Hitchens氏だった(https://blogs.spectator.co.uk/2011/12/remembering-christopher-hitchens/)(https://twitter.com/douglaskmurray/status/351422334885830656?lang=en)。その辺りは、中庸を重んじる英国人だけあってか、ダグラスさんもさすがに長幼の序に従って「パイプス博士」を立てつつも、人間関係は誰とも良好に保っていらっしゃる。旅行中も、能動的な参加ではあっても、決して目立つことなく、非常に協調的な方だった。

ところで、その欧州旅行について、パリやベルリンやストックホルムで、ムスリム密集地区(http://ja.danielpipes.org/article/13224)(http://ja.danielpipes.org/article/15465)(http://ja.danielpipes.org/article/16324)(http://ja.danielpipes.org/article/16607)を実際に歩いたり、バスで通りがかったりしながら、各地域の地元ガイド役からお話を聞き、政府要人やシンクタンクの研究者との討論に触れ、元イスラミストの活動家だった人および現役イスラミスト集団の話なども聞いたのだが、これまで、なかなかその整理ができていなかった。
話の筋そのものは、1990年代前半のマレーシア滞在経験や、日本の大学や学会で二十数年前から学んできたイスラーム研究のおかげで、理解に何ら問題はなく、欧州現状についても英語ニュースなどで知っていた通りだったので、何ら驚かないが、日本の報道では、異議申し立てをする側がとかく「極右」扱いされがちだということが、どうも腑に落ちなかった。
ごく平凡な保守中道の日本の私にとっては、何も「極右」ではなく、こんな状態なら、こういう言論が出て来るのも自然ではないか、と思わされた。それこそが「言論の自由」であり、そういう言論をも認めることこそが「寛容の精神」ではないのか。なのに、街の景観を汚し、殺人を犯したり、暴力手段に訴える移民集団や、ウェブサイトの影響から一人で過激化する一匹狼の方に、むしろ配慮が寄せられるというのは、どうしたことだろうか。
ダグラスさんの言論は英国の主流メディアで人気があるが、彼の場合は「イスラーム恐怖症」「極右」と呼ばれず、「保守論客」で通っている。
しかし、今日、選挙結果が明らかになったオランダのヘルト・ウィルダース氏には、常に「極右」レッテルが貼られている(http://ja.danielpipes.org/article/15471)。実は、パイプス先生と共に(http://ja.danielpipes.org/blog/11561)(http://ja.danielpipes.org/blog/12329)(http://ja.danielpipes.org/article/12682)(http://ja.danielpipes.org/article/12846)(http://ja.danielpipes.org/article/12863)(http://ja.danielpipes.org/blog/14400)(http://ja.danielpipes.org/article/14420)(http://ja.danielpipes.org/blog/14703)(http://ja.danielpipes.org/article/15327)(http://ja.danielpipes.org/blog/15392)(http://ja.danielpipes.org/article/16309)(http://ja.danielpipes.org/article/16585)(http://ja.danielpipes.org/16876/)(http://ja.danielpipes.org/article/17269)、ダグラスさんもウィルダース氏を擁護されているのだが(https://www.spectator.co.uk/2017/01/geert-wilders-doesnt-threaten-dutch-liberalism-hes-defending-it/)、その辺りはどのように折り合いをつけるのだろうか。

ところで、こんな記事を『ニューズウィーク』(日本版)で見つけた。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/post-7176.php


オランダ極右党首に巨額献金する「トランプ一派」の思惑とは
2017年3月15日
山田敏弘(ジャーナリスト)


アメリカ人の「右派活動家」であるデービッド・ホロウィッツが、オランダの選挙で台風の目になっている極右政党・自由党ヘールト・ウィルダース党首に多額の寄付をしていたことが判明した。その額は、2015年から合計15万ドルにも上り、2015年だけを見るとオランダ国内の個人寄付としては最高額だった。


・ホロウィッツ側は、寄付金は政治活動のための支援金ではなく、ウィルダースヘイトスピーチなどで裁判になっていた件の費用を援助するためのものだったと言い訳をしている。ただ政治資金として記録されている以上、この言い訳には無理があるし、逆に怪しさが残る。


・ちなみにイスラムに対して否定的な他の有名アメリカ人歴史家も、裁判費用としてウィルダースに金を援助していることが分かっている。


・他国の選挙に干渉するというのは、言うまでもなく主権侵害だ。アメリカの偏った思考の人たちが他国の政治家を金銭面で支援するのは、2016年の米大統領選を操作しようとサイバー攻撃を行なったロシアと、根本的には同じ考え方だと言えるだろう。

(部分抜粋引用終)
文中の「デービッド・ホロウィッツ」氏に関しては、過去ブログで言及したことがある(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120811)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121107)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130102)。
イスラムに対して否定的な他の有名アメリカ人歴史家」とは、言うまでもなく、ダニエル・パイプス氏のことである。ご本人がツィッターで認めているからである。

https://twitter.com/DanielPipes


Mar 14
Utter ineptitude: The @PittsburghPG gets every detail wrong about @MEForum financial support for @GeertWildersPVV. http://www.danielpipes.org/blog/2004/10/department-of-corrections-of-others-factual#PPG

(転載終)
のみならず、ブログ上でも反論されている。(赤字はユーリの追加によるもの。)

http://www.danielpipes.org/blog/2004/10/department-of-corrections-of-others-factual#PPG


Donations to Geert Wilders: Concerning Geert Wilders and the elections in the Netherlands tomorrow, the Pittsburgh Post-Gazette editorial board writes: "David Horowitz and Daniel Pipes are reported to have put some $150,000 of foundation money into his campaign."


Every single part of this statement is false.

Let's count the mistakes.


1. "David Horowitz and Daniel Pipes" are not a single entity. He heads the David Horowitz Freedom Center; I head the Middle East Forum. Each of our actions are unrelated to the other's.


2. "are reported": Both Horowitz and I have repeatedly confirmed that we in some fashion have financially supported Wilders. Why the shyness?


3. "to have put some $150,000": No, Horowitz has indicated he put in $150,000 while I said the Middle East Forum Education Fund contributed "six figures" of U.S. dollars. Sounds to me like the total comes to more than $150,000.


4. "of foundation money": What foundation? Neither Horowitz nor I head a foundation.


5. "into his campaign": I have made it clear in every interview that the MEFEF monies went to Wilders' lawyer when Wilders was under criminal indictment for his opinions. Here's one example: a New York Times story a week ago states that MEF "provided money in the 'six figures' to help pay legal bills in Mr. Wilders's trial over the film, but specifically to a legal fund, and has not provided political support." Can it be more clear that not a penny of our money went to Wilders personally, or his political party, nor his campaign?


It's bad enough that reporters often make mistakes – that's what editors are for. But there's no recourse when the editors themselves can't get the facts right. Shoddy journalism.
(March 14, 2017)

(部分抜粋引用終)
本件は、今に始まった話ではない。2010年時点(http://ja.danielpipes.org/article/15273)でも、「お金を集めている」と公表されている上、2014年4月上旬にニューヨークでお会いした時にも、既に私から確認している(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140511)。
アメリカの偏った思考の人たち」と書かれているが、パイプス先生のお父様はハーヴァード大学の名誉教授でレーガン政権の補佐官だった上(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170123)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170124)(http://ja.danielpipes.org/article/15326)(http://ja.danielpipes.org/search.php?cx=015692155655874064424%3Abgir-17q9zm&cof=FORID%3A9&ie=UTF-8&q=%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B3&sa=%E6%A4%9C%E7%B4%A2%E3%83%90%E3%83%BC)(http://ja.danielpipes.org/search.php?cx=015692155655874064424%3Abgir-17q9zm&cof=FORID%3A9&ie=UTF-8&q=%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B3&sa=%E6%A4%9C%E7%B4%A2%E3%83%90%E3%83%BC)、お母様と共にポーランド市民権を再び取得されている(http://ja.danielpipes.org/blog/14259)。また、母方の祖父母が、イスラエルのバル・イラン大学でポーランドユダヤ共同体の歴史文化研究の講座に名を冠せられている(http://www1.biu.ac.il/indexE.php/indexE.php?id=3&pt=20&pid=4&level=1&cPath=4&type=1&news=1663)(http://www.danielpipes.org/17349/radical-islam-eastern-Mediterranean)。パイプス先生ご本人は、バル・イラン大学から2006年にシオンの守護者賞を受賞されている(http://ja.danielpipes.org/article/13142)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120608)。
「偏った思考」の持ち主が、こういう係累と輝かしい経歴をお持ちのはずがないではないか。
過去ブログでも触れたように(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120815)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160630)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160702)、ウィルダース氏のイスラーム理解には私が同意できない点が幾つかあるが、オランダで選挙を経て選ばれた政治家として、オランダの現状と将来を考えての論であれば、その立場も認めていかないと、オランダの誇る「寛容の精神」にとって、大きな矛盾になるのではないか。