ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

ダグラス・マレイ氏の新著

若手の英国人作家ダグラス・マレイ氏の新著『欧州の奇妙な死:移民・アイデンティティイスラーム』(ユーリ拙訳)が、5月2日に英国で販売された。
(ユーリ注:英国のアマゾンでは「5月4日」となっているが、ご自身はツィッター上で「5月2日」と表示されていて、英国中の書店で販売されたようである。)

https://twitter.com/ituna4011

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Douglas Murray‏ @DouglasKMurray May 2


My new book - 'The Strange Death of Europe: Immigration, Identity, Islam' - is available in bookshops across the UK from today.

(転載終)

https://www.amazon.co.uk/Strange-Death-Europe-Immigration-Identity/dp/1472942248/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1494664221&sr=1-1&keywords=DOUGLAS+MURRAY



The Strange Death of Europe: Immigration, Identity, Islam
4 May 2017
Continuum Intl Pub Group




The Strange Death of Europe is a highly personal account of a continent and culture caught in the act of suicide. Declining birth rates, mass immigration, and cultivated self-distrust and self-hatred have come together to make Europeans unable to argue for themselves and incapable of resisting their own comprehensive alteration as a society and an eventual end.
This is not just an analysis of demographic and political realities, it is also an eyewitness account of a continent in self-destruct mode. It includes accounts based on travels across the entire continent, from the places where migrants land to the places they end up, from the people who pretend they want them to the places which cannot accept them.
Murray takes a step back at each stage and looks at the bigger and deeper issues which lie behind a continent's possible demise, from an atmosphere of mass terror attacks to the steady erosion of our freedoms. The book addresses the disappointing failure of multiculturalism, Angela Merkel's U-turn on migration, the lack of repatriation, and the Western fixation on guilt. Murray travels to Berlin, Paris, Scandinavia, Lampedusa, and Greece to uncover the malaise at the very heart of the European culture, and to hear the stories of those who have arrived in Europe from far away.
This sharp and incisive book ends up with two visions for a new Europe--one hopeful, one pessimistic--which paint a picture of Europe in crisis and offer a choice as to what, if anything, we can do next. But perhaps Spengler was right: -civilizations like humans are born, briefly flourish, decay, and die.-

(転載終)
前宣伝もご自分のツィッターhttps://twitter.com/DouglasKMurray)上でなさっていたが、いざ販売された途端、いきなり一週間でベストセラー五位に入り、今やさらに上昇中。
メディアでも取り上げられており、あちこちで引っ張りだこだ。ちょうど、9.11直後からイラク戦争までのダニエル・パイプス先生のような感じで(http://ja.danielpipes.org/article/13270)、これまで沈黙していた保守派の英国人ないしは欧州人にとって、待ち望んでいた雄弁な武者である。
8ヶ月ほど前に欧州旅行でご一緒した頃よりも(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161007)、かなりお疲れの表情。特に「今やヨーロッパは第三世界になりつつある」と強く言い切った後で、唇を固く結んでふと涙ぐみそうになっている瞬間(00:32)には(http://www.lbc.co.uk/radio/presenters/nick-ferrari/immigrants-are-making-europe-less-european-author/?utm_source=Direct)、こちらも近隣諸国との関係から日本の現状と今後を思い、共感する面が大きい。
つくづく私は、思いがけず自分が予想した以上の幸運に恵まれてきたのだ、と思う。今なら、あの頃のような時間的精神的余裕が、彼にはないだろう。
ベルリンのホテルの一室でドイツのイスラーム事情を聞く時、たまたま斜め前に座った彼の方から、にこやかに微笑みながら、振り向いて握手してくださったのだ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161018)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170327)。
その後、ホテルの通路を歩いていた時にも、近づいてきて、東京の法律事務所で三年間、働いていたというお兄さんの娘さんが日本生まれだということを話してくださった(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160802)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161018)。「おもしろかった」と。
そして、最終日にストックホルムのホテルで、皆で円状に座って自己紹介をした時も、ニコっと振り向いて「それならいいよ」という表情を送ってくださった(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161018)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170131)。
自己紹介といっても大した話ではなく、「非英語母語話者なのに、この英語圏の旅団に加えてくださり、感謝申し上げます。皆様の話される英語は、大体、80%から85%はわかります。新しいトピックは、ついていくのが遅れますが、それでも理解は可能です。私は、2012年春からパイプス博士の訳業をしています(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120330)。パイプス博士が率いる旅行は、今回が二度目の参加で(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150511)、ここには既に知り合いも何人かいるので、今年は気が楽です。パイプス博士との遭遇は私の意志を遙かに超えたことで、それ以来、世界観が劇的に変化してきました。あまりにも高いレベルなので、圧倒されっぱなしで、毎日、いろいろと勉強が大変です。冷戦期だった院生時代に、お父様のリチャード・パイプス教授のインタビューを日本語で読んだ時、ハーヴァードには凄い教授がいらっしゃるのだと驚き、非常に感銘を受けたことを覚えていますが、まさかその24年後に、そのご長男から翻訳を依頼されるとは、想像してもおりませんでした(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140922)。日本ではイスラームが禁止されているのかという質問もありましたが、そんなことはなく、イスラームも含めて、どの宗教も自由に調和的に実践できる、自由で世俗的な国が日本です(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161023)。ですが、私は、10年以上前に京都の大学で、日本人のイスラミスト教授の下でマレーシアについて教えていたことがあり、その教授は2014年10月に世界的に有名になりました(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141010)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141011)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141012)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160122)。ISISとつながっていたからです」というようなことを述べた程度である(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161024)。
ダグラスさんの著述は、知り合う前から英語や日本語のブログで時々引用していたので、良く書けていると感心していたが、パイプス訳者としては、少なくとも旅程が終了した後のスウェーデンの会合でお会いできると最初からわかっていたのに、事前に著作を一冊も読んでいなかったのがまずかった。そのことについても、「あ、いいんですよ」と、さり気なく心遣いしてくださったダグラスさんだった(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161018)。
2007年1月下旬に開かれたロンドンの討論会で(http://www.danielpipes.org/blog/2007/01/my-debate-with-london-mayor-ken-livingstone)、パイプス先生のご指名によりペアを組み、赤い市長のケン・リビングストーン組と対抗して、事実上の勝利を勝ち取ったのがパイプス=マレイ組だが(http://ja.danielpipes.org/article/12705)(http://ja.danielpipes.org/article/13801)、その時、冒頭で「私はダニエル・パイプス博士が好きです」と、堂々とダグラスさんが述べていたことも、今から振り返れば意義深い。
その当時、日本では、パイプス先生に対して「ネオコン」「シオニスト」「ユダヤ陰謀」などと悪口がネット上で飛び交い(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120505)、ミアシャイマー=ウォルトの『イスラエル・ロビー』本も一部で席巻していた(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120803)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120804)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120807)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140804)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150204)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170329)。だが、「あれは全部間違っている」と断言した後、パイプス先生は欧州に目を向けて、ますます仕事に励んでいらしたのだった(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170405)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170407)。
2ヶ月ほど前に調べた範囲では、ロンドン討論会の前後から、ハーグ、カリフォルニア、コペンハーゲン、フロリダ、ワシントン、ニューデリー等でも、会合でパイプス先生達と一緒に言論活動をされていたらしい。オーストラリアの新聞に寄稿したり、カナダのテレビ番組にも出演したり、パイプス先生と活動の場が重なっていた。道理で、政治志向がパイプス路線と非常に似ているのだ。
その華やかながらも地道な努力の成果が、10年後の今、英国で確実に開花していると考えることもできよう。
残念なのは、英国では5月2日販売なのに、なぜ、日本と米国のアマゾンでは、ハードカバー版が9月5日発売予定なのか、ということである。そんなに売れているなら、早く読みたいのに....。
PS1:
驚いたことに、アマゾンの部分提示を読むと、冒頭の著作の中で、ダグラスさんは、シュテファン・ツヴァイクの『昨日の世界』(Die Welt von Gestern)について言及されている。実は旅の前半、パリのホテルの晩餐で、ゲストとしてパイプス先生の知り合いの三人のジャーナリストを招いて語っていただいた時、私の斜め前に、偶然にもルノーカミュ氏が座られた。カミュ氏が震える声で涙ながらに「欧州の置換」について語った感情的なスピーチを聞いていた時、私がまさに思い出していた作家が、ツヴァイクだったのだ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080229)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110327)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110403)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110414)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110506)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140227)。
そのことは、フィリップ・カーセンティ氏の新著のお知らせを受けて(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170329)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170401)、パイプス先生宛のメールに私は書いた。それに、あの旅行中、パリのホテル近くの書店で、私はフランス語で書かれたツヴァイクの本を一冊、買い求めたのである(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161007)。
PS2:
2017年5月7日放送の1時間55分ほどのBBCラジオ・スコットランドによるダグラスさんのインタビューが非常に興味深い(http://www.bbc.co.uk/programmes/b08pgz87)。
苗字がスコットランド系のご本人はロンドン生まれだが、父方はアイルランド系。ゲール語は話せない(話さない)と述べている。祖父が校長先生だったという。13歳で自分が同性愛であることに気づいたが、そのことも包み隠さず、率直に語っている。感覚が鋭く、優れた知性に富んでいるが、家系の影響に加え(ご両親が公務員と学校教師)、中途で転校して良い環境にも恵まれたためであるようだ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170325)。
討論ではキビキビと厳しいが、リラックスした場では、とてもチャーミングな人だと感じる。つくづく、あの旅の前にもっと準備しておくべきだった。そうすれば、多少は会話が弾んだかもしれない。
例えば、「ストレスだと診断された飼い猫は、今はお元気ですか」(https://www.spectator.co.uk/2016/10/donalds-always-been-the-outgoing-one-meeting-the-trump-parents/)「どんな音楽がお好きなのですか」「楽器は何か演奏されますか」「好きな作曲家はどなたですか」(https://www.spectator.co.uk/2011/09/chance-of-a-lifetime/)「不可知論でいらっしゃる今は、正統な英国人として、アングリカン・コミュニオンについて、どんな風にお考えですか」「無神論になるきっかけとなったイスラームを、どこで勉強されたのですか」(https://www.spectator.co.uk/2008/12/studying-islam-has-made-me-an-atheist/)「19世紀から前世紀までの大英帝国の植民地支配について、誇りに思っていらっしゃる点は何ですか」等。

[参考]
ダグラスさんについて言及した英語ブログの一覧表。

http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/archive?word=%22Douglas+Murray%22


•2017-05-10  Whither Europe?
•2017-05-09  Macron was elected
•2017-05-05  What is ‘far-right’ ?
•2017-03-30  Tariq Ramadan
•2017-03-27  Saudi Arabia’s message
•2017-03-22  Contradictory ideas
•2017-02-01  Trump’s immigration ban
•2016-12-08  Legacy of the late Edward Said
•2015-01-08  “Charlie Hebdo” attack in Paris
•2013-03-09  Lars Hedegaard and Islam (1)
•2009-02-18  Sharia issue in Britain

ダグラスさんについて言及した日本語ブログの一覧表(但し、上記でアドレスを添えたものは除く)。

•2017-05-07  トルコの競争力低下
•2017-04-09  いつまで続くのか?
•2017-04-06  ケン・リビングストーン元市長
•2017-04-01  映像ホームページを整理して
•2017-03-27  西洋文明は何処へ?
•2017-03-25  ダグラス・マレイの新保守思想
•2017-03-20  同床異夢?
•2017-03-18  ダグラス・マレイ氏の受賞
•2017-03-17  ダグラス・マレイ氏
•2017-03-16  レッテル貼り思考の陥穽
•2017-01-23  日高義樹氏の新春特別講演会
•2016-10-24  インターネットの効用
•2016-07-26  独り善がりではない愛国心

(以上)