ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

中東情勢

メムリ(http://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=SP618315


緊急報告シリーズ
Special Dispatch Series No 6183 Oct/14/2015


「革命防衛隊はサウド政権に報復―激烈且つ断固とした対応をする―サウジアラビアを威嚇するイラン―」


最近イランのハメネイ最高指導者とイスラム革命防衛隊(IRGC))の上級幹部達が、サウジアラビアの支配者に威嚇のメッセージを送り続けている。サウジアラビアのミマで、ハッジの巡礼時1,000名を越える巡礼者が死亡し、そのなかにイラン人数百名が含まれていた事件は、意図的に引き起されたと主張し、ハメネイは、IRGC上級指揮官達及びイデオロギー陣営の幹部達と一緒に、サウジ王家に怒りをぶつけ、今回の惨事の責任を問い、意図的反イラン行動を続けるならば、激烈且つ断固とした手段を以て対応する、と表明している。ハメネイ最高指導者に近いイラン紙Kayhanは、イスラエルモサドが巡礼圧死を計画し、サウジ当局がこれを意図的に実行したと主張している※1。


この18ヶ月間イランは、サウジアラビアとサウジ王家を繰返し威嚇してきた。イランの核協議問題、サウジの原油価格引下げ政策、そしてイエメン、シリア、イラクの戦争を背景として両国間の緊張が高まり、それに伴ってイランの反サウジ威嚇が強まってきた。例えばイランの指導部はサウド政権の崩壊を目的として、サウジの石油輸送手段に対する攻撃、サウジアラビア東部域におけるシーア派暴動の教唆煽動、そして油田火災などを含む“あらゆる手段を投入してサウジアラビアに打撃を与える”と述べている※2。


イランの政治及び軍事行動の二大特徴



地域とグローバル面でのライバルに対抗するため、テヘラン地政学上軍事上二つの(モデル)特徴を持っている。



第1は"張り子の虎"の特徴。主として対サウジアラビア関係にいえる。イランは、自国よりも強大なスンニ派の軍事・政治ブロックを前にすると、尻尾を垂れ後ずさりして、自ら張り子の虎であることを明らかにする。この特徴はこれまで何度か発揮された。イランがその力を思いきって行使することができず、その威嚇が空虚だったのである。例えば2003年、アメリカがイランを南(イラク)及び東(アフガニスタン)から包囲した時がそうである。


2011年時のバーレンでは、親イランのシーア派クーデタが、サウジ−湾岸軍事力の登場で阻止された。昨年イエメンでは、サウジアラビアスンニ派の反イラン連合を率いているが、勿論この連合の最も積極的なメンバーである。



今回も、イランの威嚇はこの"張り子の虎"の特徴を有するものと思われる。



第2が"威圧的ごり押し"の特徴。主に対米関係で示される。アメリカはこれまでイラン政権に宥和し、政権の要求とその地域拡張主義に理解を示してきた。それどころではない。イランの国際テロ活動にも拘わらず、IS(イスラム国)との戦いなどで、イランを戦略的パートナーとみている。更にアメリカは、イランが複数の安保理決議に違反しIAEA国際原子力機関)の規則を破っているにも拘わらず、一定の核の地位を認めてもよいとしている。イランは中東で軍事的政治的拡張を続けながら、あちこちを威嚇している。アメリカ軍に対してすら威嚇する※3。アメリカの宥和的立場は、この地域におけるイランの攻撃的行動を阻止するどころか和らげることにもならず、敵対的政策を益々増長させたのである


イラン指導部は、サウジアラビアに対して威嚇を連発している。本記事はそのドキュメントである。


軍事的威嚇ビデオを掲載したハメネイのウエブサイト


2015年10月5日、最高指導者ハメネイが公式ウエブサイトに、4分間のビデオを掲載した。ホメイニとハメネイ(当時大統領) が、1987年のメッカ事件で死亡したイラン人巡礼者を追悼する内容であるが、それが2週間程前のミナ群集圧死事件におけるイラン人の死体と重ね合わせる形で編集され、ハメネイが遺体返還に協力的でないとしてサウジ当局を非難している。ついでハメネイが軍の幹部達に囲まれサウジを威嚇する場面となる。非協力的な姿勢を続ければ、イランによる「激烈且つ断固たる」対応を引き起す、と言うのである。これに続いて、イラン革命防衛隊の海軍力が威嚇するように展示される。次のビデオを参照。


https://www.youtube.com/watch?v=L0OKgBgivTc&feature=youtu.be .


ハメネイは、2015年9月30日の海軍候補生卒業式で、サウジアラビアはミナ事件における責務を果さず責任逃れに終始していると非難、イランは行動の自由を有するとし、"断固たる対応"をとるとして、次のように述べた。
「イランを含むイスラム世界から人が(サウジアラビアへ)行って本件を詳しく調査し、(ミナの)大惨事が起きた原因を明らかにすべきである。彼等(サウジ当局)は負傷者に対する責務を果していない…今日に至るもイランへの遺体返還で問題がある…サウジアラビアはその責務を果していない。それどころか道にはずれたことをやっている…。


これまで我々は大目に見てきた。(しかし)イランは、ほかの多くの国よりも大きい行動の自由を持っている。我々にはもっと多くの手段と大きい能力があるのだ。彼等にはその力が判っている。イスラム国イランと対決しようとしても、どの舞台でも敵わないことを知っているのだ。我々は(これまで)イスラムウンマイスラム的尊厳と友愛の名誉を守ってきた。(しかし)我々はやろうと思えばできるのだ。その時我々の反応は断固としたものとなる。激烈且つ断固とした措置である。


…メッカには我等の愛する同胞多数がまだ巡礼中である。彼等に対して少しでも無礼なことをすれば、絶対に許さない。(我々から)反撃の火花が発する。(サウジは)御遺体に関する任務を果していない。任務不履行は(我々の)反応を引き起す。彼等は我々をないがしろにしてはならない。きちんと任務を果すべきである…イラン人民とイラン・イスラム国の権利を傷つけたいのであれば、覚悟しておかなければならない。我々はそのような連中の処置法なら知っている。断固とした対応をする。神の御加護により、我々にはその能力がある。イラン国家は強大である。既に証明済である。我々は我々の権利を守ることができるのだ」※4。


対サウジ報復の用意はできている―革命防衛隊司令


2015年10月3日、革命防衛隊アリ・ジャファリ司令官が海軍基地における記者会見で、サウジアラビアの王家に対する報復の準備はできているとし、後はハメネイ最高指導者の命令を待つだけ、と次のように述べた。



「革命防衛隊は、最高指導者の御意志にこたえ、イラン人巡礼者を殺したミナの惨劇に対応すべく、迅速且つ断固たる手段をすべて整えている。準備はできている。(革命防衛隊は、最高指導者の)命令を待っているところである。


いつ如何なる所でも、命令一下革衛隊は、礼儀知らずの悪のサウド支配者を相手に、ムスリム特にイラン人民の名誉を守るため、直ちに英雄的行動に移る。


イスラム世界は、サウド家背信と礼儀知らずに、うんざしている。イエメンにおける虐殺、かわいそうなシリア人民の離散、バーレン人民弾圧、イラクにおける集団虐殺、セクト主義による分派作り、テロリズム支援等々、その悪行は限りがない。(サウジアラビアは)ムスリムの憤激のうちに解体する」※5。


サウジはムスリムを裏切っている―イラン地上軍司令官


2015年10月5日、イラン地上軍司令官ポウルダスタン(Ahmad Reza Pourdastan)が、ミナの集団圧死事件で死亡したジャファリ将軍(Saeed Jafari)の葬儀で悼辞を述べ、“世界中のムスリムに対する裏切りと犯罪行為”でサウジアラビアを、“無辜のシリア人民を壊滅し、イエメン、イラクそしてアフガニスタンの人民虐殺”でサウジ政府を非難、次のように言った。



「最高指導者の勧告と命令にこたえて、サウジの悪徳支配者にいつでも鉄槌をくだし、イラン兵の勇気と力を見せつけてやる。サウジアラビアは聖所に奉仕しないだけでなく、世界中のムスリムを裏切り、犯罪行為を続けている。サウジアラビア政府の手はひじのところまで血まみれである。無辜のイエメン人民を殺戮した血である。それだけではない。ヌスラ戦線の全面的支持を得て無辜のシリア人民を壊滅し、IS (イスラム国) を支持してもいる。サウジの手は、イラクの女、子供そして男の血で穢れている。タリバンを作ったのもサウジアラビアである。つまりはアフガニスタン人民を殺したといえる。


(サウジ)政権の行動全体が、シオニストアメリカの願望に沿う。サウドの価値なきメカニズムは既に低下の徴候を示している。あとは崩壊するだけである」※6。


海上輸送に全面的依頼…サウジの脆弱性はそこにある―革命防衛隊海軍司令官


2015年10月4日、革命防衛隊海軍司令官ファダヴィ(Ali Fadavi)は、次のように述べた。


「我々が抱くイスラム上の任務が求める限り、我々はほかの方面を向いて行動する。しかし、彼等の面を叩いて罰を与える時が必ず来る…最大の脅威とみられる米艦隊に対し、我々が充分に大刀打ちできる能力を備える時がくれば、最小脅威とみなされているサウジの力など全然問題ない。サウジは海上輸送に全面依存の状態にある。その石油はペルシア湾内の内陸部にあるのだ。アメリカの脆弱性は高い。しかしアメリカと比べれば、サウジの脆弱性は測り知れない」※7。


サウジ政権は崩壊寸前―革命防衛隊副司令官


2015年10月4日、イラン北部のウルミアで開かれた革命防衛隊主催「国家の力」会議において、革命防衛隊副司令官サラミ(Hossein Salami)は、次のように言明した。


サウジアラビアの支配政権は、現代の手法についてジャヒリヤ(前イスラム期)の思考に接ぎ木をする傾向がみられる。計画性の欠如、責任感の欠如、管理技術の欠如、怠慢、高慢、鈍感がサウド政権を大量破壊兵器化するのである。平安のうちに祈りを捧げているムスリムを、殺してしまうのだ。


ミナ圧死事件の後サウジ政権は、醜悪至極、憎悪に燃え、非論理的にして出鱈目且つ無責任な態度に終始し、全然答を示さずにいる。今日に至るも、正確な死者数さえ提示していない。無秩序体制は、ムスリムを野蛮且つ無慈悲に扱う一族に明日がないことを証明している。最近の諸々の事件は、この政体の崩壊徴候といえる。巡礼者に敬意を払わず組織的な対応ができないことは、継続的且つ力強い政治運営の基盤を持っていない証拠である。


同時に、この小さな脆弱且つ無能の政権は、大きい問題に介入し、筋の通らぬ攻撃をイエメンにかけて、無防備の人民を殺している…(サウジ)政権はテロ集団をシリアへ送りこみ、ムスリムを離散民化し、ユダヤ人とキリスト教徒の前にさらし者にして侮辱する…あれもこれも、諸々の問題は、サウド(王朝)が生みだしたもので、イスラム世界にフィトナ(迷走の試練)と不和分裂に火をつけるものである。


サウド家は、イラク人民の平和と安全など眼中にない。平和と安全を否定する目的を以て、テロ集団を支援している…彼等(サウジ)には神の慈悲などひとかけらもない。シオニストパレスチナ人を攻撃する時、この腐りきった政権が抗議の声を発しないのは、有力な証拠である。


ミナ事件が起きたのは、サウジの間違った政策が原因である。イスラム世界で野心と傲慢の政策しかなければ、サウド政権は、ハッジのような大規模なイスラムの行事を遂行できない。ミナの大惨事は人間の常識では考えられない。ハメネイ最高指導者は、きちんとした対応がなければ、後悔することになると言われた。お前達(サウジ)は指導者の警告を真剣に心に留めておくがよい」※8。


[1] Kayhan(Iran), October 4, 2015.
[2] 次を参照MEMRI Special Dispatch No. 5918, IRGC Weekly To Saudis: 'Iran Has Many Options For Harming Saudi Arabia... All [It] Needs To Do Is Use A Single One Of [Them] So That Nothing Remains Of The Entity Named The Aal-Saud Regime Or Of Saudi Arabia Itself' (サウジに対するIRGC週刊紙の警告:「イランは、サウジアラビアを打撃する選択肢を多数持っている…サウジ家と称する存在或いはサウジアラビアそのものをなくすには、選択肢をひとつ使うだけで充分である。一撃で倒せる」)December 31, 2014; Inquiry & Analysis Series Report No. 1144, Tehran Threatens Saudi Arabia; Khamenei: Iran Will Answer Saudi Arabia 'A Blow With A Blow',(サウジアラビアを威嚇するテヘラン:イランはサウジアラビアに対して打撃には打撃を以て応じる)February 10, 2015; Special Dispatch No. 5858, Associates Of Iranian Supreme Leader Khamenei: Saudi Arabia Is The Source Of Scheming Against The Islamic World; The Al-Saud Family Is Of Jewish Origin – And Its Turn To Fall Has Come, (ハメネイ最高指導者側近の発言:サウジアラビアイスラム世界を傷つける計画の策源地。サウド家ユダヤ人の末裔、没落は間近である)October 14, 2014; and Inquiry & Analysis Series Report No. 1068, Iran Calls For Violent Shi'ite Reaction Against Saudi Arabia, (イランがサウジアラビア打倒のシーア派蜂起を呼びかけている)February 12, 2014.
[3] 次を参照MEMRI TV Clip #4838 – Iranian Leader Khamenei: Death to America; Obama Is Trying to Turn Our People against the Regime,(イランの最高指導者ハメネイアメリカに死を。オバマは我方の人民を操り政権打倒を画策している)March 21, 2015; MEMRI Inquiry & Analysis Series Report No. 1132, Khamenei Camp In Indirect Response To Obama Letter, On Anniversary Of U.S. Embassy Takeover: 'America Is Still The Great Satan And The No. 1 Enemy' Of Iran, (アメリカ大使館占拠記念日にあたり、オバマ書簡に対するハメネイ陣営の間接的解答:アメリカは大サタンであり、イラン第一の敵である)November 16, 2014; and MEMRI Special Dispatch No. 5728, Tehran Friday Sermon: The Iranian President Should Punch Obama In The Mouth When He Talks Nonsense, (テヘランにおける金曜日説教:イランの大統領は、オバマがナンセンスなことを言えば、その口を一撃すべきである)May 2, 2014.
[4] Farsi.khamenei.ir, September 30, 2015.
[5] Sepahnews.ir, October 3, 2015.
[6] Tasnim (Iran), October 5, 2015.
[7] Tasnim (Iran), October 4, 2015.
[8] Defapress.ir, October 4, 2015.

(転載終)

「シオンとの架け橋」(http://www.zion-jpn.or.jp)から

エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122


2015年10月14日(水)
・テロ行為と戦うための対策を閣議で承認。暴動が続く東エルサレムの一部を閉鎖することを警察に許可。また、永住権を持つパレスチナ人がテロを行った場合に、永住権の剥奪なども可能になる。(H)
・アラブ系イスラエル人がパレスチナ人を支持するゼネストを実施。北部でアラブ系市民が住むサクニンでは約2万人が抗議集会。(Y,H)
自治政府を支援する国々は、西岸地区やエルサレムでの暴動の鎮静化をアッバス議長に求めるべきだと、イスラエルの外務省。(P)
・昨日もエルサレムを含む各地でテロ事件が発生し、イスラエル人3人が死亡、数十人が負傷。ハマスはテロを称賛している。(Y,H,P)


2015年10月15日(木)
・治安部隊の厳戒態勢の中、エルサレムのバスターミナルではイスラエル人女性をパレスチナ人が刺す事件が発生。旧市街のダマスカス門でも警官を刺そうとしたパレスチナ人が射殺された。(P,Y,H)
エルサレムで起きている暴動と、イスラエルの入植活動が、二国家共存の可能性を下げていると、米国務省が非難。ケリー米国務長官は暴動鎮静化のために中東諸国の訪問を予定している。(Y,H,P)
・西岸地区で入植者とパレスチナ人らが衝突し、入植者の投石でパレスチナ人と英国人が負傷。警察は投石をした入植者4人を逮捕。(P)
ガザとイスラエルの境界フェンスを、イスラエルとエジプトの国境線にあるような強固な二重フェンスにする案が検討中。現在のフェンスは、群衆が押し寄せた場合に簡単に破られているため。(H)
エルサレムでは治安の悪化で商店街のレストランなどでは空席が目立つ状態。過剰なテロ報道で客足が遠のいていると語る店主も。(H)


2015年10月16日(金)
・アラブ系市民も、パレスチナ人の暴動に呼応してナザレなどで警察と衝突。シャロム内相は、テロを行ったアラブ系市民2人の国籍をはく奪する手続きを開始。内相には国籍はく奪の権限がある。(H)
路線バスを利用するイスラエル人に対する襲撃事件が連日のように発生しているため、バスやバスターミナルの利用者が激減。(Y)
ユダヤ人とアラブ人の双方で行なわれた意識調査では、2国家共存案は「事実上不可能」と考える人が半数以上であることが判明。(P)

(部分抜粋引用終)