ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

無責任な論調に対して

http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/
「邦人人質事件に関する『識者』の論調」
2015年01月27日



・邦人人質事件に関しては、(当然のことんがら(ママ))中東専門家とされる人たちが盛んに発言していますが、中にはどうかと思われるような意見も見らる(ママ)ので、普段国内の論調等については、殆ど触れないのですが,矢張り余りに為にする議論も多すぎる気がしてならないので、敢えてコメントを書いておきます。


・一つは最近の安倍政権の積極的平和政策が中東諸国の対日不信感を深めていたところに、今回の安倍総理の中東歴訪が、この不信感を呼び覚ましたというものであろう。
そもそも中東諸国などと一派ひとからげにできるほど中東は単純ではないが、外国の対日観という場合には基本的には政府のそれと国民感情のそれとがある。
特に中東諸国のように政府の力が強いところでは、当然政府の対日観がまず重要となるが、何時頃からか知らないが、中東諸国政府の対日観が最近悪化しているなどと言う話は聞いたこともない


一つの国民の感情を知ることさえ難しいのに、中東諸国の対日感情が悪化しているなど、どういう根拠で言えるのであろうか


・最近この手の信頼できる大規模な世論調査が中東で行われたなどと言う話は聞かないし、増して世論調査の結果、対日世論が悪化しているなどという話は聞いたこともない


・中東のマスコミの論調が対日批判、不信を強めているなどと、全く通常の人が読みもしないような小さな新聞とかネットの類はいざ知らず、有名なアラビア語のマスコミで、最近「残念ながら」厳しい対日批判など見た記憶はない
中東と言えば、当然大国のイランとトルコが入るが、トルコは現在でも確固たる親日だし、シーア派でISとは戦闘すら行っているイランが、日本がテロとは断固対決するといくら強い調子で発言しても支持こそすれ、反発するはずもない


安倍総理の訪問が不信感を呼び起こしたとして、ネタニアフとの会談をもちだす人もいるようだが、これもアラブ諸国の政府(その中にはアッバス議長も入るが)は勿論、アラブ諸国や中東のイスラム諸国(ということはその他ではイランとトルコが大部分)で厳しい反発や非難が起きたという話も聞かない
私の読んでいる様なアラビア語メディアは総理の中東訪問について、むしろ好意的な報道をしていた様な記憶があるし、少なくとも非難などの発言の記憶はない。


・日本政府の対応が対決一方で、中東を理解し、相手の「情に」に訴えるべきであったという意見である。
これは後で書きますが、このような意見は、中東諸国のイスラム教徒一般を犯罪集団のISと同一視するもので、彼らに対する侮辱ですらあると思うが、それはさておいて、罪もない人間の首を切るような連中の情に訴えるとは一体どういうことか?理解に苦しむ以外にない


・私も中東で少しは働いてきたので、中東の人たち、イスラム教徒の優しさや対日感情の良いことを実感してきましたが、それはこう言った市井のイスラム教徒であったと思います。


・中東における反米感情の存在は否定できない現実であるが、テロとの戦いはなにも米国のみの政策である訳ではない。
仏をはじめとする欧州諸国もその通りだし、過激派のテロとの戦いという点では、イランは勿論、まずほとんどすべてのアラブ諸国、トルコの命題でもある。


・要するにテロとの戦いと言えば、米国の手先だとの議論は、この問題の歴史的経緯や、大部分の犠牲者が無辜のイスラム教徒であることを無視した一方的な議論だとしか思われない。


(読者コメントとの応答抜粋)


1.軍事作戦にいち早く賛同したからと考えるのがもっとも分かりやすい構図です。


2.abu_mustafa 2015年01月28日 21:55
日本マスコミの中東報道の浅さは、今に始まったことではありませんが、問題は所謂中東専門家と称する学者が、実証もされていない、自分の思い込みをあたかも事実であるかのごとく書きまくっていることだろうと思います。


3.abu_mustafa 2015年01月28日 15:50
戦術的な問題として考えれば、ISの手口が非常に巧妙で(ある意味では水際立っていると言ってもよいか?)、又このような脅迫が日本国内で巻き起こすであろう混乱を良く理解したうえでの、見事なやり方であったと思います。
今回の事件でも日本社会の弱点やら、政治の力学構造をよく知っているなと、今さらながら感心しました。
彼らの情報力とか、日本社会の把握というのは、もしかすると下手な途上国の政府よりも、ひいでている可能性すらあるような印象を受けてしまいます。


4. abu_mustafa 2015年01月28日 15:16
個人的な意見を言えば、何とかという議員が主張するように、今さら人道支援を撤回したりすれば、今後当分の間欧米諸国は勿論ですが、アラブ諸国からも日本は相手にされずに馬鹿にされる存在になり下がるでしょうね。
アラブの人たちは「男らしさ」、「強さ」を最も大事にします。テロの脅迫に屈服して、国際的に大きな声で発表したことを撤回するのは、男ではなく、卑怯で弱い者のすることで、アラブ人はそんな奴は絶対に尊敬もしなければ信用もしないでしょう。

(引用終)
上記のアラビスト元外交官氏のご経験と教訓、明快な叱責は非常に貴重で、過去ブログとも通底する面があると思っている(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150122)。大学で教鞭を執る傍ら、毎日のように、こまめにアラブ中東の新聞メディア報道をチェックされ、要約をまとめて報告されている。
国務省勤務経験のあるパイプス先生(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130828)のツィッターも(https://twitter.com/DanielPipes)、戦略方針や角度は異なるものの、基本的な手法はほぼ同じであると思っている。そして、上記の日本人元外交官氏も、「中東を長年見てきて、やはり優秀だと思ったのはアメリカの中東政策担当者で」という意味のことを一昨年辺りに述懐されていたかと記憶する(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130911)。
パイプス・コラムは、できたものを読むだけなら大したことがないようだが、実は膨大な時間と労力を費やして、ハイパーリンクを駆使して、時にはコラムがアップされてからもハイパーリンク先をよりよいものに差し替えたり、追記をつなげたり、字数制限から漏れた内容は補遺を添えたり、編集者の手がかかった文章は、オリジナル文を掲載して相違を知らせたりしている。これほどまでの作業を、45年以上も、毎日のように繰り返してこられたのだ。
何でも、反米、反イスラエル、反西洋、反シオニスト、反ユダヤ反日、反安倍を持ち出せば説明がつくというものではない。メディアおよび学者を名乗る方々に、猛省を促したいところである。
ところで、上記のアラブ世論云々ですが、それについては「アラブ通り」と直訳した拙訳を、よろしければどうぞ(http://www.danielpipes.org/12498/)(http://www.danielpipes.org/12600/)(http://www.danielpipes.org/12601/)。当時のアメリカでは、こういう議論があった、という程度に。
もう一点、追加させていただくと、ダニエル・パイプス先生率いる中東フォーラムの理事に名を連ねている人々は、いわゆる「イスラエル・ロビー」「ユダヤ・ロビー」の「ネオコンシオニスト」よりも、相当の人数がレバノン系クリスチャンだとの由。そのことも、もう何ヶ月も前の自分用のメモ・ノートに書き記してある。
だから、今日の結論も、この分野に関して、日本語媒体は遅れているか、歪曲されているか、根拠なき記述が目立つということになりそうである。本気で真の意味における「人権」なるものを考えるならば、この種の問題は深刻だ。
もし、一般にムスリムが差別されているというならば、ダニエル・パイプス先生なんて、それ以上に「差別」されているとも言える(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120803)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120807)。たまたまユダヤアメリカ人のご両親から生まれ、学歴や経歴に恵まれ、30代からメディア出演も頻繁で、多筆で、イスラエルを擁護する政治的立場を取っているということで、余計にバイアスがかかっているのだ。どうして彼がそのように考えるかを忖度しようともせずに....。