ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

アナト・ベルコ博士

38言語(正確には、36の機能言語でしょうか?)のダニエル・パイプス訳文の中で(http://www.danielpipes.org/languages)、このところ、日本語訳へのアクセス順位は、普段の常連G7前後から(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140707)、一気にフランス語、ドイツ語の次に位置しています。いわゆるイスラーム国による日本人人質事件およびその殺害、交換条件としてのヨルダンの死刑囚の女性(2005年に同時爆破テロを起こして収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚)が注目を浴びているためでしょうか。

拙訳の中で、アナト・ベルコ博士の著書に序文を書かれたパイプス先生の戦略的かつ先鋭的な一本(http://www.danielpipes.org/12227/)が、このところ顕著にアクセス・データ上昇中。もともと、邦訳掲載は2012年11月21日のことで、ブログにも、その背景を綴っております(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130105)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140709)。

パイプス先生は、1983年の著書でも、ムスリム世界の男女関係と性問題をストレートに扱っていらっしゃるので(http://www.danielpipes.org/9637/male-female-relations)、このような序文になるかと思われます。これは未訳で、国文学を専攻し、西洋の文学も学生時代に読んだ者にとっては(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110327)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110403)、(そこまで断言できるかしら?)と気になるところではありますが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080503)、微妙な話題なので、いつか将来のおしゃべりトピック用に保留しておきます。

しかし、心当たりはあります。ある日本人のマレーシア研究者が、数年前、学会や研究会でも平気で、「ムスリムはどんどん恋愛して…」みたいなことを公言されていましたが、当然のことながら、そう言い切るだけの実体験を、そのご本人も経験済みなのではないか、と私は穿ったからです。また、例のリナ・ジョイ事件(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071203)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080212)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080326)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/archive?word=Lina%20Joy&of=50)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/archive?word=Lina+Joy)に関する学会発表の際、その後輩に当たるT大の女子院生が「結婚、という…」と嘘のでっち上げ発表をして、途中でちらりと私を見たことも、印象強く覚えています。(私から見れば、彼女の発表は、根本的に前提が間違っていましたが(http://ci.nii.ac.jp/author?q=%E7%B6%B1%E5%B3%B6%28%E4%B8%89%E5%AE%85%29+%E9%83%81%E5%AD%90)、想像するに、恐らく自分も恋愛に情緒的な年齢と精神状態なので、気づかなかったのでしょう。)

というのは、私の知らない世界だからです。概してムスリム世界は、『アラビアン・ナイト』に象徴されるように、官能的で情緒的な側面が濃厚です。だからこそ、ギチギチとシャリーア法で縛り上げようとしているのでしょう。

従って、「就職できなかったから大学院へ」という(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111227)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140324)、わけのわからないことが平気で聞かれる昨今の学力低下した日本の院生は(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140326)、いくら研究目的だからといって、そのノリでムスリム世界へ安易に入らないように。いくら少子化とはいえ、出会いがないからといえ(http://www.danielpipes.org/14417/)、グローバル化だからと唆されても、ここは、公私共に安定した一夫一婦制の夫婦関係を維持してきた、既婚者の研究者および専門家に限ります。

さて、アナト・ベルコ博士の著書はアマゾンでも入手できます。2013年1月に短い紹介文を投稿しておきましたので(http://www.amazon.co.jp/product-reviews/1442219521/ref=acr_offerlistingpage_text?ie=UTF8&showViewpoints=1)是非とも、原書を入手してお読みください。(今チェックしたところでは、本の表紙に「人気」印がついていました。ユーリ後注:2015年2月18日に見たら、「人気」印は消えていました。)

原文はヘブライ語ですが、研究目的で書かれた随筆風の描写なので、少しでもムスリム世界に触れたことのある方ならば、思い当たる節が多く、英訳でもすぐに読めるはずです。
女性ならではの視点とはいえ、日本のフェミニズムの自分勝手な甘ったれとは雲泥の差。イラクアラビア語を家庭の母語として受け継いだベルコ博士ならではのもの。
アシュケナジームでありながらもアラビア語やアラブ習慣に精通されているご主人と三人の子育てを経験された母親としての経歴、イスラエル国防軍http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%A5%A4%A5%B9%A5%E9%A5%A8%A5%EB%B9%F1%CB%C9%B7%B3)での長年の指導的立場、アメリカにも来られて頻繁に講演され、文筆でも活躍されていることなど、非常に刺激的です。(アメリカの読者あるいは聴衆の反応の一つは、「ちょっとぉ、こんな大事な研究を女性にやらせているなんて、ここの男達は何やってんのよ!」という威勢のいいものでした。さすがはマッチョ文化、もとい、男性原理が主流のアメリカです。)

胸襟を開いて語ってもらうには、相手の習慣を尊重すべしという基本中の基本が、例えばコーヒーの振る舞われ方、いただき方、挨拶の仕方などの叙述、服装の色まで気を遣い、自己開示をどこまでするか、相手に共感を示しつつも、訓練を受けたテロ専門家としての毅然とした一線をどこで引くかなど、簡潔かつ具体的に表現されています。

恐らく、ムードや空気や集団心理に走りがちな(研究者やメディアも含む)日本人にとっては、真似があまりできないし、すべきでもない手法かもしれませんが、とても参考にはなります。

日本人全般の間で好かれている(?)キッシンジャー博士も、推薦文を書かれています。
本日は、国際ホロコースト記念日の70周年であることを想起(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20150127)。