ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

過去を回顧し動向を注視する

今日は私の誕生日。特に何をするわけでもありませんが、11月3日のホテル・ニューオータニでの昼食、いずみホールでの「ウィーン国際音楽祭イン大阪」と庄司紗矢香さんとカシオーリ氏のデュオ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121104)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121105)、そして、明日のザ・シンフォニーフォール開館30周年記念のゲルギエフ指揮・マリインスキー歌劇場管弦楽団が、誕生日と来週の結婚記念日15周年のお祝いとなります。
いずみホールの感想がまだ書けていませんが、振り返ってみると、昨年の今頃も同じように、演奏会の記録が随分後になったのでした(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111105)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111130)。でも、今年はそういうわけにはいきません。マレーシアに滞在していた1990年代前半、家族ぐるみで交流のあったインド系の友人の長男が(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091026)、来月、結婚式を挙げるというので、今日、書留で招待状が届いたのです。地図を見ていると何だかとても懐かしくて、今回のアメリカ大統領選の結果を見ても(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121107)、世の中は確実に変化しており、こういうおつき合いが自分の財産でもあったのならば、もっと自信を持って大切にすべきだろうに、と不思議な気分になってきます。
15周年....。あっという間です。15年前を振り返ってみると、今こうしていることが全く想像もできず、計画や予定していたことは、実現した部分もあれば、突然のように変更されたこともあります。心配していた割には非常に恵まれている面もあれば、何もしていないのに気づいたらここまで来てしまった、という感覚もあったりします。なかなか複雑。当時は存命だった人も、主人方は祖母、伯父、いとこ、叔母が亡くなり(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070812)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070816)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080218)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100706)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20101007)、私の方は祖父、叔父、祖母が亡くなったという状況(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110502)。とはいえ、普段から忙しく交流があったわけでもなく、それぞれの生活を各々に送っていたというのが実情なので、お葬式で再会し、親戚同士で近況を振り返るということの繰り返しでした。
それに、披露宴に来てくれた方達も、今はどうされているのか、特に連絡がないためにわからないのです。その中の一人は、同じ大学の出身で同い年なのに、昨年「年賀状はこれにて失礼します」とあり、詳しい事情は、かなり親しい知り合いの人にも明かしたくないとのことでした。彼女の方が一ヶ月前に結婚したのですが、その後、(随分引っ越しが多いなぁ)と心配はしていました。つまり、披露宴の時に約束した「10年後には会おうね」みたいなことは彼女の方から雲散してしまったのです(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071119)。年賀状以外はほとんど交際がなかったので、特に私が何かをしたからというのではないとは思いますが、本当に、人とはわからないものだとしみじみ感じた次第です。
また、このご時世、社会動向を考えると、多少無理してでも外で仕事を持っていた方がよかったのかどうかは、今となってはわかりません。私の場合は、いくら頑張ったとしても、仕事内容からそれほどお金にもならなかっただろうし、社会的地位や業績なんて最初から考慮になく、しかも今更...。それよりは、若い頃から望んでいたようなことに時間が費やせる方が、贅沢といえば贅沢でも、自分らしい生き方だったとは思えます。振り返れば、これしか道がなかったという環境でもありました。
主人の病気に関しては、当初懸念していたよりは非常に長く勤務が続けられることに、ただただ感謝です。これも、いいお薬の開発のおかげもありますが、何より、職場の温かいご理解あってのことです。そして、元気だった若い頃の勤務貯金が、もしかしたら今も助けになっているのかもしれません。それに、昨今の有名企業の巨大赤字を考えると、15年前には想像もつかなかったことで、その二社は実は、院卒時に主人が就職先として(どうしようかな)と考えたこともあった選択肢だったのです。もし、そちらを選んでいたら、当然、今は仕事を切られていた可能性もあります。というわけで、今の企業だったからこそ、続けさせていただいている、という厚遇でもあるのです。本当に、これもわからないものだと思わされます。
こんな風にしみじみとしてしまっているのも、やはりアメリカ大統領選挙のことがあるからです。ダニエル・パイプス先生から昨晩もメールが来て、「そして、一人のアメリカ人として、僕は、他にないほど選挙結果には意気消沈し、全く惨めな気分だよ」と書いてありました。そして、私の予測通り、オバマ再選となれば、今後は、自分も「米日関係が弱くなり、米中関係が強くなるだろう」に同意する、と。
あれほど、ブッシュ政権イラク・アフガン戦争に世論が反対しているのに、ブッシュ政権外交政策に深く関与した関係から、いつでも強気で「私はブッシュ政権とは手法や手段が異なっているが、目標とするところには同意する」「イラク戦争は、サッダーム・フセインを追い出せたという点で成功だった」とテレビでも堂々と述べ、新聞コラムでも書いていたばかりか、2008年頃から、オバマ氏の出自を疑念として執拗に追求したり、2012年9月にさえも、追加論考のようなコラムを書いて、事前に我々翻訳者に送ってこられたりしたのでした。それに、今年9月から10月にかけて、本当にめまぐるしいほど、中東を中心に厄介な問題がさまざまに噴出していた最中にも、一貫して「アメリカが強ければ、世界が安全だ」「アメリカの自由は死守しなければならない」「中東で唯一、アメリカと価値観を共有するイスラエルを、何としてでも守らなければ」との思いから、精力的に書き続け、会合やテレビなどでも言い続けていました(http://www.danielpipes.org/11948/)(http://www.danielpipes.org/12050/)(http://www.danielpipes.org/12079/)。
オバマ氏の件については、訳文を数日かけて仕上げてやっとの思いで送った私としても(http://www.danielpipes.org/12111/)、(インドネシアならば、そういう状況は特に問題とは考えられず、むしろ普通でしょう?)と感じたり、(挨拶として述べているだけなら、大目に見てあげては?)と考えたりもしていたのですが、パイプス先生は、とにかく、読者からのコメントにも「あなたには問題ではないにしても、私にとっては問題だ」と強気で返答されていました。
それもこれも、お父様の恩恵でご自身が若い頃に享受した、かつての理想に燃えたアメリカの姿が忘れられず(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120924)、理論武装でしっかり固めて、何とか理念を取り戻したいという信念に駆られていたからではないか、と思うのです。「自分には確かに友人がいる」と言い聞かせ、気を奮い立たせて、ここまで頑張ってきたという面も大きかったと思います。
この選挙を目標に、一筋に頑張ってきたからこそ、この度の落胆はひとしおのようで、ちょこちょことブログでイスラミスト情報を追加したりはされていますが、どうも元気はなさそうです。
今回の一連の流れで、私が前から考えていたことを、思い切ってパイプス先生に書き送りました。
エスニック的に日本人である限り、もし私が米国市民だったならば、マイノリティとして民主党員に自動的に所属しなければならないものだと考えていました」。
というのも、日本では、オバマ氏のムスリム出自云々よりも、「アフリカ系(黒人)アメリカ人として初の大統領」というように、民族的に捕える報道や論考が目立つからです。また、アメリカの影響が強いとされる大学でも、「日本人はアメリカではアジア系としてマイノリティなので、(当然のように)白人富裕層が多いとされる共和党ではなく、民主党だ」という前提で語られていたように記憶しているからです(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120904)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121108)。
ところが、パイプス先生は、そこを特に強調されて、「誰も自動的に一方あるいは他方であるのではないよ。我々は皆、自分一人で考えるのだ」と返答をよこされました。
また、知り合いのユダヤイスラエル人の先生が、「共和党員の人は、真実は真実、中間のグレーゾーンがないのよ」と私におっしゃったことがありますが、そのことを引き合いに出して、私はまた、
人生において、『グレーゾーン』は必要だと思い、現実には、一つの知恵として、時には曖昧さやある妥協が必要とされるかもしれないと考えていました」「しかしながら、先生の翻訳を始めてから、徐々に、この考えは部分的には誤っていたと悟りました。原則に忠実であることは重要であり、充分に考察した後は、人生において一貫性が絶対に必要であると。表面的に、一時的に、社会の中で主流の傾向に反しているかもしれないけれども」と書き添えました。
あの強気の基盤は、理論的考察と事実に基づく検証にあったからだと理解したからです。また、今回、非常に落ち込んでいらっしゃるであろうパイプス先生を僅かながらも遠方から慰める意図もありました。すると、その部分を引用されて、

あなたがこの結論に至って、僕はとてもうれしいよ

と返ってきました。相当、今回の結果にはこたえていらっしゃるようですね。
他にも、パイプス先生から集中していただいた最近のメールには、おもしろい部分も含まれていたので、後で続きを書ければと願っています。
ともかく、今回の大統領選で考えさせられたのは、アメリカ国内が、価値や理念や国の方向性に関して、かなり分裂しているということです(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121107)。選挙で共和党が負けたからパイプス言論が全面的に間違っていた証明になったというのではなく、理念先行ゆえに、現実面で時代の趨勢についていけない、あるいは現状を拒否したい面があったかとも思うのです。パイプス言論に対して、確かに一定数の賛同者がいるらしいことは、数々の活動映像を拝見していても確認できることです。いくら「寛容で多様なアメリカを」とはいえ、急激な宗教分布変動を懸念する人々だっているはずなのです。そういう意味で、パイプス氏の言論活動が、ある一定の役割を果たしてきたことは事実だろうと思います。問題は、そのやり方(あえて正面から相手を扇動するような論法、あるいは理屈で押していく手法)が、昨今の状況の中で、どこまで人々の共感を得ているか、だろうと思うのです。
先程、この度の選挙を巡って、青山学院大学の中山俊宏教授の日本記者クラブでの講演を聴きました。続きは後ほど、要点をまとめておきたいと思います。

(2012年11月10日記)
中山教授の講演の要点から、私自身が関心を持った部分のみ引用します。

中道左派オバマ氏に投票 ← 奴隷制によって成立した米国にとってアフリカ系アメリカ人オバマ氏は有利
民主党は「新しいアメリカ」に親和性
民主党が左派というより共和党が右にぶれている
・ブッシュ時代のイラク・アフガン戦争の影響で厭戦気分になっているアメリカ/テロは今も不安
アメリカの国力が相対的に低下し内向化/ポスト・アメリカ世界が描けない状況
・米中関係は多層的であって対立ばかりではない
大きな変化はないであろう日米関係(アーミテージ・レポート)
ティーパーティとウォールストリートのオキュパイは表裏一体
・ハリケーンのサンディ効果→大人気のクリス・クリスティ(2016年共和党候補)やパウエル
共和党穏健派の退潮 → 2016年をねらうか → 今後の共和党は厳しい
・国際派ビジネスマンのロムニー氏は真正保守ではなく穏健で中道右派
・歳を取れば保守化するというがアメリカは必ずしもそうではない
・保守であることの意味が不安定化し、新しい時代に対応できない名前のみの共和党
左右の社会運動と60年代との類似

[素人ながらの感想]
・マイノリティの方がアファーマティブ・アクションで逆に有利だということはその通りであり、アフリカ系だからオバマ氏に親近感と期待を寄せる人々が世界中に多かったことは、私の2009年秋のマレーシア訪問でも感じたところ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091017)。ただし、パイプス効果によって私が学んだ問題点は、人種問題の克服や複数アイデンティティを文脈によって巧みに使い分けることで、アメリカ一国主義をなくそうというオバマ氏の特徴や意図ではなく、むしろ、あれほど多様で広大な土地柄なのに、古典的な意味での社会主義的な平等を達成しようと目指している点が、本来のアメリカの国是と一致しないのではないかという不安。ところが、本質的に民族的均質度の高い日本では「格差があってはならない」という前提から話が始まっているので、理論上の疑念を提示する以前に、手放しでオバマ氏を礼讃している傾向にないだろうか。
・「新しいアメリカ」とは何かが不透明。「チェンジ」「フォーワード」と唱えてみても、世代を超えて保守派がこれほど頑迷に反対しているのに、何をどうしたいのか、突き詰めた議論が統合されていないような感がある。
・「リベンジとしての投票」を叫んだオバマ氏に対して「国を愛するからこそ投票」と訴えたロムニー氏の対照性を映像で見た。何に対する「リベンジ」なのか?社会主義とは、嫉妬に根ざすものであるとカール・ヒルティは喝破した(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100209)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110523)。資本主義では富裕層だけが得をしているという一方的な見方は、冷戦期の全盛以前から論駁されていたマルクス主義の論理矛盾と現実面での破綻によって、既に経済理論として成立しないことは常識ではなかったか。
・「右にぶれている」とは、昨今よく日本で見聞するが、そもそも、右も左も相対的な基準だと言える。「ぶれている」はネガティブ表現だが、右なら右に徹底しているのも、一つのあり方ではある。「左にぶれている」はあまり聞かないが、なぜだろうか?(後注:私の学生時代には「左がかっている」という表現だった。今よりも少しは洗練された表現だと思う。)
イラク戦争については、表向き反対したドイツが、実は裏側でイスラエル諜報機関と手を結び、情報交換をして国を守りつつも、中東情勢を戦略的に分析していたという。これは、「読者の皆様(一般素人の庶民)の目線で報道をお伝えする」と公言している日本のメディアにとってはとんでもない二枚舌であるが、私にとっては、この点ドイツはさすがに大人であり、したたかであるべき外交の常道を踏んでいるとも考えられる。
アメリカが内向きになったのは、経済の低迷および戦争疲弊もあるが、イラクアフガニスタンでは、それ以外にもさまざまな面で援助した面もあったのに、全くと言っていいほど地元の人々から感謝をされなかったためである。シリアの内戦も、反体制派を助けているつもりが、実は危険な集団に武器が渡ったことが今では明らかであり、従って、「関与するな」という意見が出たのも無理はない。
・保守派の懸念は、アメリカが欧州のようになってしまうのではないかということ。経済が混迷し、(不法)移民問題も山積し、社会民主主義的になった結果、かつての輝かしい栄光が既に衰えかけている欧州。長い歴史に根付いた誇るに足る欧州文明がこれでよいのか、という厳しい問いが保守派から出ているのである。それを「新しい時代についていけない共和党」と簡単に断罪して妥当なのか?
・米中関係はともかくとして、上記のパイプス・メールにあったように、私の心配は日米関係が弱体化すること。なぜか、日本のメディアや識者は、日高氏を除いて、オバマ氏であってもロムニー氏であっても、日米関係は基本的価値が共有されている以上、大丈夫だという楽観論が目立つが、私にとってはとんでもない話。日中関係がもっと安定していれば話は別だが。これは私が中国を嫌っているという意味では全くない。個人として、良識ある中国人を20代の頃から知っている私にとっては(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071102)、尖閣諸島問題でも実に両国の対応が嘆かわしく思われるのだ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120917)。特に、民主党になってからの日本政府の対応のまずさが目立つ。
・左右の社会運動と60年代の類似については、パイプス論考全体を眺めれば、彼がまさにその王道を地で生きてきたことは一目瞭然。問題は、「強いアメリカ」を誇示したいパイプス氏ではなく、欧州が戦争に加担したくなく、財政負担もアップアップだというので、やむを得ず、軍事力で解決しなければならない地域に、唯一の大国であるとされたアメリカが軍隊を出したのだという。しかも、何をやってもアメリカが責められる。責任負担から逃れておいて、責任追及だけは欧州がする。「欧州は子どもみたいだ」と、パイプス氏は怒っていた。
・私個人としては、相手の善意を疑うぐらい厳しく細かく追求して慎重な態度である方が、むしろ人生も国家運営も外交政策も結果的にうまくいくと思っている。その意味で、今後のオバマ氏率いるアメリカの動向は、世界的な混乱の始まりであるかもしれず、全く楽観できないというのが、私なりの結論である。
(参考)
日高義樹氏のテレビ番組(http://www.tv-tokyo.co.jp/hidakayoshiki/bn_20100321.html
放送日: 2010年3月21日(日) 午後4:00〜5:15

オバマ政権のもとで日米関係がぎくしゃくしているが、その大きな理由は、オバマ大統領が景気回復策の中心を、デトロイト自動車産業の再生に置き、外国の自動車企業を差別することが、アメリカの国家戦略になったからである。こうしたオバマ政権の政策を、ビジネスマンの党であるアメリカ共和党の指導者がどう見ているか、また日米関係の現状と将来をどう考えているか聞く。


番組内容


第1部 「オバマトヨタ非難は常軌を逸している」
第2部 「オバマは外国企業を叩くしか景気回復の手段がない」
第3部 「オバマ民主党中間選挙で敗れる」
第4部 「オバマの対日政策は間違っている」
第5部 「トヨタ叩きの背後に何があるのか」出演


共和党上院全国委員長ジョン・コーニン
『ウイークリー・スタンダード』編集長フレッド・バーンズ

(以上)