ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

イスラエルとイラン

これまで「メムリ」からの引用をしばしば行ってきました。以下は、「ユーリの部屋」検索機能からのリストです。

http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%22memri%22&of=50

http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%22memri%22&of=0

何年も前に、某大学で知り合ったある日本人ジャーナリストが「あれは、イスラエルプロパガンダだ」と冷たく言い放ったのを、今でも私は覚えています。しかし、内容を見てください。千も譲って仮に「プロパガンダ」だとしても、このような恐ろしい文面が、一国の存続をかけた戦いから出てくるのでしょうか。2007年3月のイスラエル旅行のささやかな経験からも、4,5歳の時から自然になじんできた聖書を生み出した民というユダヤ人の歴史を想起しても、ちょっと辻褄の合わない議論ではないかという根本的な疑いがぬぐいきれないのです。
そして、アメリカという国をより深く理解するためにも、下記議論と関連して、故ジョン・F・ケネディ大統領による印象深い演説を、どうぞ合わせてお読みくださればと思います(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20120309)。また、マレーシアが専門のはずの私が、なぜここまで入れ込むのかについては、長らくマレーシアでも、イスラームを連邦宗教とするムスリム地域である以上は、この件から逃れない宿命にあるということを、どうぞお含みおきください(英語ブログ“Lily's Room”dated 1 February 2012, 7 February 2012, 10 February 2012, 19 February 2012, 28 February 2012, 29 February 2012)。

メムリ」(http://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=IA79312

Inquiry and Analysis Series No 793 Feb/13/2012


イランはイスラエルをミサイルで先制攻撃せよ
―威嚇のエスカレートで出てきた提言―


Y・マンシャロフ(MEMRIの研究員)A・サヴィヨン(イランメディアプロジェクト長)


はじめに


 西側とイランの熾烈なメディア戦争がエスカレートするなか、ハメネイ最高指導者の忠実な支持者で※1、最近までキシュ地方の区長であったフォルガーニ(Alireza Forghani)が、イラン政府当局にイスラエルを攻撃し殲滅せよと呼びかけた。イランの核開発阻止に軍事攻撃の必要性を説くイスラエルに反撥した形であるが、2012年2月4日に「イランはイスラエルを2014年までに攻撃しなければならない」と題する本人の記事が無数の政権派ウェブサイトに掲載された※2。この記事は、1ヶ月前にだした記事の続編に相当する。それは、アメリカに対する聖戦を提唱し、その戦いで殉教者として死のうとする、イラン国民の願望を強調した内容である※3。


 今回の記事は2部構成である。第1部は、宗教上からみたイスラエル攻撃の正当性を説いた内容で、コーランホメイニ師の教えをベースとし、全ムスリムイスラエル攻撃を義務付けているパレスチナの土地を盗んだとし、それを奪回しナイル川からユーフラテス川までをイスラムの土地とする。そのために決起せよという。本人によると、このような攻撃は、防御的ジハード(ムスリムが他者から攻撃された場合の対応)或いは基本的な意味でのジハード(邪教徒にたいする聖戦)のいずれでも、ムスリムの責務である※4。


第2部は、イランのイスラエル攻撃に関する作戦要領をまとめた内容である。イランは世界中に実戦チームを配備し、各種ミサイル兵器を有し、その一斉投入によって、イスラエルを9分以内に壊滅できるという。この記事には、イスラエルの核施設、航空基地、社会のインフラなど攻撃対象を明示すると共に、シャハブ3型、セジル、アシュラ及びガドル型ミサイルを含むイラン保有の各種ミサイルの性能が、描かれている。


 今年2月3日の金曜日説教で最高指導者ハメネイは、イスラエルというガン組織、駆除の必要性を説いた。本人のこの記事は、ハメネイの声明に時を合わせており、イラン攻撃の必要性に関するイスラエル側指導者の主張に対する、イラン政権の回答であると思われる。フォルガーニは、本記事が自分の個人的見解であり必ずしも政府の立場を反映するものではないとしながらも、イランは自ら進んでイスラエルを抹殺しなければならない、と主張した。一方ハメネイは、イスラエルと対峙する者を助ける支援の役割にとどめ、直接的な武力対決は避けるとしてきた。


 フォルガーニは、中東をめぐる情勢を我に有利と指摘し、それを利用すべきであると主張する。第1は、中東にひろがるイスラム覚醒の波。これはイスラエル壊滅の地ならし役を果している。第2はアメリカを初めとする西側の及び腰。第3はイスラエル壊滅に執念を燃やすアフマディネジャド大統領の任期である。2014年に任期切れとなるから、この年がデットラインとなる。イスラエル壊滅のカギは、大々的戦力による先制攻撃にある。イスラエルの戦略拠点は完全に破壊しなければならない。それには、イランの保持する長距離ミサイルを投入する必要がある。イランの東端からイスラエルの西端まで2600キロメートル、イラン製ミサイルの射程圏内である。このように主張する記事は英語で掲載された。以下その内容である。



イスラエル人は殲滅しなければならない


ユダヤ人が多数派を占めるのはイスラエルが唯一の国である。イスラエル中央統計局の最新統計によると、この国の人口は750万。そのうち580万はユダヤ人である。ほかに少数派として、ムスリムキリスト教徒、ドルーズ教徒、サマリア人がいる。最大の少数派社会が所謂イスラエル系アラブである。


 テルアヴィヴ、エルサレム及びハイファの住民は、我々のシャハブ3型ミサイルでも攻撃できる。この3地域で、イスラエル人口の約60%を占める。セジル型ミサイルは、発電所、下水処理施設、石油タンク群などのエネルギー貯蔵施設、輸送機関、通信インフラを攻撃できる。第2段階でシャハブ3型、ガドル及びアシュラ型によって、地方の町村を攻撃、住民を殲滅する。



北部域(メホズ・ハツァフォン)人口123万1900、中心都市ナザレ
ハイファ地区(メホズ・ヘイファ)人口88万700中心都市ハイファ 
中部地区(メホズ・ハメルカズ)人口177万 中心都市ラムレ
テルアヴィヴ地区(メホズ・テルアヴィヴ)人口122万7900、中心都市テルアヴィヴ
エルサレム地区(メホズ・エルシャライム)人口90万7300 中心都市エルサレム
南部域(メホズ・ハダロム)人口120万1200 中心都市ベエルシェバ


イスラエルのインフラを破壊する


 セジル型ミサイルによるイスラエルのインフラ(鉄道、空港、核施設など)破壊は、作戦の一環でなければならない。イランは縦深攻撃能力を10年前から持っており、イスラエルの何処でも攻撃できる


イスラエルの核基地を破壊する


 ラファエル核プラントはイスラエルで最も古い原子力プラントである。この施設が、イスラエルの核技術センターである。エイラボンというのは、ネブリ村(ママ)にある核施設である。この村の住民は、1948年に強制退去の憂目にあった。イスラエルの戦術核の貯蔵地が、ここにあると考えられる。エリハ(ママ、恐らくエリコ)地対地中/長距離ミサイルが、ここに貯蔵されている。戦術核を搭載できる。このミサイルの射程は500から1480キロメートルである。


 エディオット・アハロノト紙によると、イスラエルの軍事専門家ロン・ベンヤシャル(ママ、ベンイシャイ)は、『イラン製ミサイルの射程圏外にある場所は、どこにもない』、『イスラエル製ミサイルは、質的にも量的にもずっとまさっているが、10万発ほどの貯蔵所は、イランのミサイルの射程圏内にある』と言っている。


 ネーブ(ママ、ネゲブ)の原子力研究センターにあるディモナ原子炉のような施設は、ターゲットのひとつである。ディモナは、イスラエルで最重要の原子炉があり、ビル10棟で3000人の科学者と技術者が働いている。イスラエルプルトニウム生産施設は、ここにある。ディモナは、核兵器用濃縮ウランの約90%を生産している。


 イランの核施設に対するサイバー作戦については、ここディモナに米イ合同実験所が置かれている。イランの核施設の活動を妨害し、操業を停止する目的でテストされたのが、スタックスネット(StuxNet)。コンピューターワームである。ジーメンス技術をベースとする管制コンピューターに侵入する。このコンピューターワームは、ロシア人技術者によって発信され、記憶装置を通して核施設の中へ急速にひろがっていった。しかし、イランのサイバー防御専門家達によって探知された。


 2週間前オバマ大統領が発表した戦略によると、イラクアフガニスタンの場合のような陸上兵力の導入はせず、サイバー戦争のようなほかの戦略手段を以て代える。以上の理由から、イスラエル攻撃のなかでディモナ攻撃を最優先ターゲットにすべきである。




イスラエルの航空基地を破壊せよ



 イスラエルには、12の航空基地がある。そのうち民間飛行場は3つである。残りはイスラエル国防軍が管理している。セドットミハ航空基地はエリコ弾道ミサイルを貯蔵している。国の南西に位置する。テルノフ航空基地には、核兵器を搭載するF15戦闘機が駐留している。F16戦闘機は、ロマンアリ基地(ママ、ラモン航空基地と思われる)に駐留。


イスラエルの船舶を撃沈せよ


 イスラエルの船舶と潜水艦破壊は、次の手段による、
1、イスラム共和国(イラン)の行動圏内水域におけるミサイル攻撃。
2、世界各地に(展開する)特殊戦部隊の投入。
3、各種機雷の敷設。リモコン式の水面下機雷を含む。この種兵器はイランの船舶や潜水艦によって敷設できる。


ミサイルはイスラエル壊滅の能力を持つ―各種弾道ミサイルの性能、諸元


 イラン防衛当局は、防衛及び抑止戦略の主力としての中/長距離ミサイルの重要性を認め、その開発に取組んできた。地域の諸条件、イスラエルに対するミサイル攻撃の結果を考慮し、使用可能な技術の有無を計算のうえでの結論である、開発にあたっては、信頼性、命中精度、各種弾頭の塔載能力に重点がおかれた。本報告では、この中東ガン細胞(即ちエルサレム占領政権)を攻撃できる我方の各種ミサイルを紹介する。


 90年代末シャハブ3型ミサイルが試射され、その性能特に1300キロメートルの射程が発表されると、イランのミサイル能力に関する敵の見方が変り、軍人そしてシオニスト政治家達は、次第に憂慮するようになった。シャハブ3型ミサイルは改良が続けられ、精度、射程の向上した新型が次々と生まれた。将来はもっと恐るべき性能を持つ兵器になる。


シャハブ3型ミサイル


 シャハブ3は、シャハブ1、シャハブ2の改良型である。シャハブ2とシャハブ3との間には技術上多くの類似性があるが、3型は性能が向上し、新型電子技術と最新型コンピューター誘導ソフト及びハードウェアを使用している。射程は1300キロメートルといわれ、占領下パレスチナへ到達できる。


軍装備になったシャハブ3型各種形式。新型の射程及びサブシステムは向上しているが、1段式で液体燃料方式、そして慣性誘導方式という基本は同じである。


 シャハブ3は、さまざまな弾頭を搭載できるが、特に集束爆弾が搭載できる。この形式のものは、全長16.5メートルから17メートルで、1800キロメートルの射程を有する。


 イランの西部から占領下パレススチナの最遠端までの距離は、たかだか1200キロメートルであるから、シャハブ3型系列のミサイルは、敵にとって深刻な脅威である。


アシュラ


 このミサイルは、シャハブ3型をベースに開発されたもので、液体燃料方式の長距離ミサイルである。形状はシャハブ3型の最新型に類似するが、先端部は直径がやや小さくなっている。各種弾頭を搭載できるのがこのミサイルの特徴である。国内の情報筋によると射程2500キロメートル。もっとも海外の専門家達は、25%から50%は射程が大きい、と考えている。アシュラとシャハブ3型の形状と容積がほぼ同じであるため、以前の発射装置が使用できる。射程が大きいので、占領下パレスチナの西端もイラン東部から攻撃できる。


ガドル


 2007年に導入されたガドル1型は、シャハブ型液体燃料方式長距離ミサイルの発展型として生産され、シャハブ系列に属すると考えられる。伝えられるところによると、この1段式ミサイルは射程約2000キロメートル、既存型よりも発射準備の時間が短くて済む。これが特徴のひとつであり、つまり対応速度が速い。このミサイルには集束爆弾搭載タイプもある。この弾頭は装脱式である。ガドルのF型は全長15.88メートルで射程約1950キロメートル。慣性誘導装置つきである。



セジル


 ガドル及びアシュラと同じように、セジル型は2000年代後半に導入された。専門家のなかには、一番傑出したミサイルと考える者もいる。敵方の専門家は、これに匹敵する外国製はないことを認めている。セジルは固体燃料式で、(軍事対決が不可避になった場合)イスラエルを地図から抹殺するための、恐らく最有力ミサイル兵器であろう。それは、固体燃料で発射準備の時間がかからず更に移動式発射台を持つからである。そのため先制攻撃で破壊される可能性が低い。更にセジルは加速度が高いので、発射の初期段階で探知される可能性は極めて低い。敵にはミサイル邀撃のチャンスが文字通り無い。

 セジルの射程は2000キロメートルといわれる。これまで1型及び2型が試射されている。関連産業の改良努力を物語る。セジル型は2段式である。1段目は燃料が尽きると本体から分離され、そのために重量が減り射程が伸びることになる。



イランは9分以内にイスラエルを潰滅できる


 イランの弾道ミサイルは、大気圏外を飛行し、所定域で大気圏内に入り、マッハ10-12(秒速3400から4080メートル)でターゲットに突入するが、セジルはその系列に属する。防空システムが邀撃するのは不可能である。これは、イランの軍事技術が極めて高度なレベルに達していることを物語る。本ミサイルに使用される固体燃料技術が、期待される推進力の確保と長期の貯蔵を可能にしている。


 セジルは重量23トン623キログラム、全長17.75メートル、直径1.25メートル。500キログラム着脱式弾頭を持つ。発射して835秒(13分55秒)内に、最大射程距離に到達する。


 セジルの目標指向、操舵及び誘導システムは極めて精巧であり、高度の正確、精密性が確保されている。作戦上非常にすぐれた兵器である。


 液体燃料方式は、発射前に燃料を注入しなければならず、注入も時間がかかる。発射前に探知される可能性がでてくる。この問題に対処するため、国内各地に多数の地下サイロが建設されてきた。


 これまで指摘した弾道ミサイルはすべて誘導装置を更新し、レーダー波反射減少の対策がとられ、発射所要時間も短くなっている。ミサイル保有数に関しては、外国の専門家達はイランがイスラエルに対して1日数十発を発射可能で、数ヶ月は持ちこたえられると言っている


 前述の弾道ミサイルの誘導システムは、推力ベクトル制御(Propulsion vector control)の一種で、ロケット噴射の位置にあるブレードによって、ガス噴射の方向を変え進路を修正する。このシステムはフラップ方式の制御システムよりずっと正確である。このシステムの活用が、イラン製ミサイルの確度の決め手のひとつになっている」。


イラン戦略防衛研究センター長インタビュー


 この記事の英語版には、シャムハニ(Ali Shamkhani)とのインタビューが含まれている。本人はイランの元国防相で、現在同国の戦略防衛研究センター長である。インタビューのなかでセンター長は、イランに対するミサイル攻撃は効果なしと主張。その理由として、セジル2型の開発をあげている。本人によると、これは、固体燃料方式であるからシャハブ3型よりもすぐれており、敵の空爆に耐える、地下サイクロに貯蔵されている。更にもうひとつ。要因として、イスラエルと比較した場合の大なる戦略縦深を指摘している。



付録:本人の自己紹介 forghani_alireza@yahoo.co
 フォルガーニは自分のブログに次のように紹介している。



1983年8月31日生まれ、既婚。テヘラン在住
電話、09124906386
愛読書、イスラム法の絶対支配
好きなスポーツ、激烈武力戦のジハード


※1 フォルガーニは2011年9月の時点でハメネイをイマムと呼んでいる。2011年9月3日付http://alireza-forghani.blogfa.com
アフマディネジャド派との対立で最近南部のキシュ地方の区長を辞任した。2011年12月24日付Fars(イラン)


※2 この記事は、当初2月4日付本人のブログにペルシア語と英語で掲載されたが、イランの穏健保守系イラン革命防衛隊(IRGC)系のウェブサイトに掲載された。掲載したのは、例えばFars,Mashreq News, Fahan News, Alef, Asr-e Emroozがある。


※3 2012年2月1日付 MEMRI S&D No.4467「イランのウェブサイトが威嚇―湾岸のアメリカをターゲットに」http://www.memri.org/report/en/0/0/0/0/0/0/6047.htm を参照。


※4 フォルガーニは、イスラエルに対する聖戦を義務と規定し、ホメイニ師がさまざまな形の聖戦に関しておこなった判定をベースとして、その行為を正当化している。次はその例である。
敵がムスリム諸国とその国境を攻撃すれば、あらゆる手段を以て守ることが全ムスリムの責務であり、聖者(Vali Faghih、ここではハメネイ最高指導者)の許可を得る必要はない…パレスチナの占領はいうまでもなく、イスラエルという偽国家の首領達が彼等の占領意図を否定したことはない。ほかのムスリム諸国を手中にして、ナイル川からユーフラテス川までのイスラム社会を全部乗っとるつもりである。日夜彼等はこの悪の目標達成を計画し、策を練っている…異人がムスリム諸国占領の陰謀を企てているのなら、あらゆる手段を投じてイスラム国家を守るのが(全ムスリムの)責務である」。


フォルガーニは、ムスリム特にイランがイスラエルに対して武力聖戦を敢行する責務を有するとし、「パレスチナ人民の土地を乗っとったイスラエルは、イスラム王国の内部で陰謀をめぐらしているガン細胞である。ほかのイスラムの地を乗っとる恐れがある。あらゆる手段を投じて、この陰謀を阻止し、イスラエルの影響拡散を防止するのが、全ムスリムに課せられた責務である」。


http://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=IA79312
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(引用終)