ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

シリア攻撃に対するイラン

「メムリ」(http://memri.jp

Special Dispatch Series No 5429 Sep/10/2013

攻撃されれば、シリアは米、サウジ、ヨルダン、トルコ、EUを攻撃。イスラエルは潰滅―イランが考えるシナリオ―


シリアのアサド大統領が自国民に化学兵器を使用したとする報道が流れ、アメリカがシリアに対して軍事行動をとる可能性がでてきた。これに対してイランが、友邦シリアに対する攻撃を阻止し、アサド政権を護持するため、中東のアラブ諸国イスラエル、そして西側を威嚇している※1。


このような攻撃には報復するとアサドは言っているが、その公約は特に断固としたものではなく、ヒズボラヒズボラで、殆んど反応していない※2。これに対しイラン側要人の声明は、シリアに対する攻撃で中東地域は火の海になるといった内容が大半で、イラン自身が手をくだすとする主旨のものは、余りない。その主旨のものであっても、それは最高指導者ハメネイ師の8月28日付声明が出る前の発言である(下記参照)※3。


以前もそうであったが、地域を火の海にするというイランの約束は、威嚇するだけの空手形に終るようで、実行は定かではない。次に紹介するのは、イランの威嚇例である。


シリア攻撃は地域に破滅をもたらすーハメネイ最高指導者


2013年8月28日、イランの最高指導者ハメネイ師は、アメリカの対シリア攻撃が?地域に破滅?をもたらすと述べ、このような攻撃を以てアメリカは地域全体を火の海にするのみならず、自身も傷を負うとし、次のように言った。


「(シリア)介入と戦争挑発は、これを煽る者に必ず打撃を与える。アメリカ人は、この介入を行えば必ず傷つく。イラクアフガニスタンで証明済みである。域外列強による(シリア)介入は、(戦争に)火をつけるだけで、列強に対する諸国の憎悪は増す。このような戦争挑発行為は、火薬庫のスパークと同じである。発火すればその規模は測り知れず、結果は予想もつかない」※4。


シリアはアメリカにとって第2のベトナムになる。イスラエルは撃滅―革命防衛隊司令


2013年8月28日、イランの革命防衛隊司令官ジャファリ(Mohammad Ali Jafari)は、Tasnimウェブサイトによるインタビューで、次のように威嚇した。


アメリカ人は、アフガニスタンイラクで手痛い経験を味わった。彼等がシリアに対して軍事行動を起して攻撃すれば、彼等は次なる敗北の連鎖を味わう。歴史的な屈辱の敗北を経験するのだ。それだけではない。シリアは一大屠殺場と化し、戦場はベトナムよりずっと危険になる。アメリカにとって、シリアは第二のベトナムになる


シオニストは知っておかなければならない。アメリカの軍事攻撃によって、抵抗戦線の鉤爪は益々深く食いこんでくる。逃げられなくなる。イスラエルの潰滅は必至である…この地域のいくつかの国そしてシリアに対する軍事攻撃を支持するアラブ反動政権も、心得てなければならない。この戦争挑発でスパークした炎は、シリアだけに限定されず、発火に手を貸しそれによって生じた戦争を支持する国へ、野火のように広がっていくのだ」※5。


ホワイトハウスは悲惨な結果を招くーイラン軍参謀次長


イラン国軍参謀次長ジャザエリ(Masoud Jazayeri)は、シリア攻撃という一線を越えれば悲惨な結果がホワイトハウスを見舞うとし、次のように主張している。


「シリアに対するテロリストの戦争でアメリカとシオニスト政権に加担する者は、必ず問題に逢着する。炎を煽りたてる者は、必ずや諸国民から報復される…アメリカは、シリア正面で越えてはならぬ線が判っている筈だ。この線を越えれば、悲惨な結果がホワイトハウスを見舞う」※6。


参謀次長は別の機会に、「反シリア戦線が軍事作戦を開始すれば、シリア国民は抵抗する。彼等の抵抗は必ず勝利する…そして、神の御加護により、この戦いはシオニストの炎上を以て決着がつく」と言った※7。


アメリカ軍に告ぐ「シリアへは棺桶持参で行け」−クードス(エルサレム)旅団指揮官


2013年8月29日、クードス旅団指揮官スレイマニ(Qassem Suleimani)の米軍宛メッセージが公表された。次の内容である。

「航空機から降下する落下傘兵、水上艦艇から上陸する歩兵、APC装甲兵員輸送者)に乗りこむコマンド隊員よ。お前達全員に言っておく。自分を入れる棺桶を持って行け。絶対忘れるな。シリアは、イスラム革命のレッドラインである。我々はこの地から天国へ昇天する。お前たちには墓場になるのだ」※8。


対シリア戦でシオニストは焼き尽くされるーイラン軍参謀総長


2013年8月28日、イラン軍参謀総長フィロウザバディ(Hassan Firouzabadi)は、次のように言った。


「シリアに対する軍事作戦でシオニストは焼き尽されるアメリカ、イギリスそしてその同盟諸国は、この地域そしてシリアにおける軍事力の誇示で、大いに傷つく…シリア国民の抵抗は、如何なる戦いでも必ず勝利する…」※9。


シリアにおける戦争は他国へ拡散するーマジリス(イラン国会)議長


国会議長ラリジャニ(Ali Larijani)は次のように述べている。


「無鉄砲且つ愚かな行動は大火となる。無関係の地域諸国の首をしめあげるのである…対シリア作戦を始めることはできる。しかし終らせるのは君達ではない。この地域にいる君達の私生児シオニストを考えよ。君達はこの私生児を恐れなければならないのだ※10。


戦争ではシリアが優位に立つ…抵抗枢軸の有力メンバーであるシリアは、この歴史的機会を見逃さぬ―Kayhan紙


最高指導者ハメネイ師に近いイラン紙Kayhanは、2013年8月29日付論説で、シリアの反撃でターゲットになる可能性のある拠点をリストアップした。サウジアラビア、ヨルダン、カタール、トルコ及びイスラエルの石油施設、戦略拠点、そして欧米の施設と権益が含まれるが、シリアはロシア製ヤクホント型ミサイルを含めた大量のミサイルを装備し、これで一斉攻撃をかけるとし、次のように主張した。


「戦争になれば、アメリカを初めヨーロッパおよび中東地域のいくつかの国が関与する。つまり交戦国或いは戦争介入国と受けとめられる。従って国連憲章第7章第51条に従って、シリアの軍事行動があるだろう。前出諸国の軍事、経済その他の中枢と施設が、ターゲットになる。シリア攻撃の戦力源を叩き潰すのである…。


サウジアラビア、トルコ、ヨルダン、カタールは、反シリア軍事連携を正式に表明している。従って彼等の戦略、軍事中枢は、戦争になればシリアの攻撃対象になる。


エルサレムを占領している勢力は、アメリカの軍事基地といえるが、ターゲットという点では特別の場所である。シリア政府が既に発表している通り、そこは長距離及び中距離ミサイルの攻撃対象であり、命中すれば多大な被害を及ぼす。ディモナの核プラント、テルアヴィヴ、空港その他エルサレム占領勢力の戦略中枢が、シリアによるミサイル攻撃のターゲットであり、既にターゲットはセットされている。


国連憲章第7章第56条によると、アメリカの地域パートナー諸国の軍司令部、軍施設、基地、空港その他の戦略(施設)は、アメリカが戦端を開けば、攻撃目標になる。例えばサウジの石油施設、ペルシア湾の港湾、石油タンカーがその対象であり、攻撃されれば重大な結果をもたらす…シリアの軍事力特にミサイル戦力そして攻撃目標の至近性を考えれば、(シリアによる攻撃の)可能性は高い。


シリアは、地中海の英米艦艇をロシア製ヤクホント型超音速ミサイルで攻撃できる。レバノンヒズボラも同種のミサイルを保有している。2006年の第2次レバノン戦争時、ヒズボラの対艦ミサイルがイスラエルのサール級艦艇を撃破している。アメリカの地域パートナーは、シリアのミサイル戦力のターゲットになる。前述のようにターゲットの至近性のため、アメリカの地域パートナーを攻撃するにあたって、第三国の領空侵犯の恐れはない。つまり第三国から許可を得る必要はない。例えばサウジの軍中枢と石油施設を攻撃する場合が然りである。ヨルダン領空を通過しても、ヨルダン自身がアメリカの地域パートナーであり、シリアによる攻撃対象にもなる…。


戦争が勃発すればアメリカは長距離ミサイルによる攻撃戦術をとる。そこでシリアは、アメリカの艦艇、そして中東の米英権益、地域パートナー諸国の軍事、経済中枢、戦略施設を攻撃せざるを得ない。これは、シリアが戦争で優位に立つ可能性がある…シリアは抵抗戦線の強力且つ有力メンバーであり、この歴史的機会を見逃してはならぬということである」※11。


日々数千発のミサイルが非占領地(イスラエル)に雨注する―Kayhan紙


論説掲載の前日にあたる8月28日、Kayhan紙は中東でシリアの反撃対象になるのはイスラエル、そしてアメリカの友好国即ちサウジアラビア、ヨルダン、トルコ、カタールであると指摘、次のように主張した。


「最近猛々しい声があがっているが、近く開催予定のジュネーブ会議に向けた心理戦にすぎない。シリアから譲歩をもぎとろうという魂胆なのである…アメリカは戦争を始めることはできるが、決着をつけるのは(アメリカや)その同盟諸国ではない…。


イスラエルは欧米のアキレス腱である。シリア攻撃が始まると、日々数千発のミサイルが被占領地(イスラエル)に雨注するようになる。狙われるのは戦略施設である…。


イスラム世界は、アメリカ、イスラエルそしていくつかのアラブ国家の戦争挑発にうんざりしている。目下シオニストとの直接対決の時に満を持している…シリア攻撃は、イスラエルを囲むムスリム諸国に黄金の機会を与えるのだ。


サウジアラビア、ヨルダン、トルコその他の諸国は、アメリカの対シリア軍事作戦に参加する旨正式に表明している。従って、戦争になれば、この国々はシリアの反撃対象になる。シリアに敵対する国であるからだ。この諸国は数年前から、イスラムの覚醒にルーツを持つ人民蜂起に直面している。戦争関与は人民に政権打倒の強い根拠を与えることになる。政権がアメリカに奉仕いる(ママ)からである。カタールは国家というよりショッピングモールに近いが、当地の状況はほかよりも一段と流動的で爆発寸前である…どの徴候もゼロアワーが近いことを示している…」※12。


「1」 シリアの政権に近いレバノン紙Al-Safirは、2013年8月29日付紙面で、「イランはダマスカスとテヘランを?双子?の関係にあると考え、シリアに対する戦争はイランに対する戦争とみなす」、と論じた。イラン高官筋によると、テヘランは最後までシリアの側につくと露中に伝えている。イランはこのような事態に備えた作戦計画を策定しており、ハメネイ師の決心を待つばかりである。無謀な冒険主義は、規模の大小に拘わらず攻撃参加国を泥沼に落として終る。そしてその攻撃後世界はそれまでの世界にあらず、これが欧米に対するイランのメッセージである。同紙はこのように伝えた。
[2] ヒズボラ出身の議員サカリヤ(Walid Sakariya)は、「欧米の攻撃が限定的でアサド政権の打倒が狙いでなければ、ヒズボラは介入や地域紛争への拡大に関心を持たない」と主張。しかしながら「アメリカがアサド打倒、抵抗戦線の包囲、イラン及びシリアに対する潰滅的打撃を意図するならば、イスラエル正面の戦闘を開始する」と述べた。2013年8月29日付Al-Mustaqbal(レバノン)。一方、3月14日勢力に近いレバノン紙Al-Naharは、8月29日付紙面で、ヒズボラ上層部の話を引用し、ヒズボラはシリア攻撃への対応を明らかにせず、手持ちカードを隠しておく現在の政策を続行する、と書いた。
[3] 2013年8月24日、マジリス(イラン国会)国家安全保障委員会議長ボロウジェルディ(Ala Din Boroujerdi)が、「シリアの地域同盟は、(シリア)攻撃に直面した時、手を拱いて黙っていることはない」と述べた。2013年8月24日、Press TV(イラン)。翌8月25日革命防衛隊司令官アリ・ジャファリは、ホルムズ海峡を視察し、「我々の対応は、敵の行動如何である。これまでのところ、我々はどの国からも攻撃をうけていない。しかし敵の対応が直接間接いずれにせよ脅威を構成するのであれば、我々は自衛を誰も拒否できぬ権利、と考える。この地域の血腥い事態でシオニスト政権は如何なる役割を持つのか。その役割は日を追って明らかになってきている。しかし、それが行き着く先は、この(シオニスト)政権にとって決して得にはならないのである」と言明した。2013年8月25日、Fars(イラン)。
[4] Leader.ir, August 28, 2013.
[5] Tasnim (Iran), August 28, 2013.
[6] Fars (Iran), August 25, 2013.
[7] ILNA (Iran), August 28, 2013.
[8] Afsaran.ir, August 29, 2013.
[9] ISNA (Iran), August 28, 2013.
[10] Fars (Iran), August 28, 2013.
[11] Kayhan (Iran), August 29, 2013.
[12] Kayhan (Iran), August 28, 2013.

(引用終)