ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

故タンターウィ−博士の見解

「メムリ」(http://memri.jp)から

Special Dispatch Series No 2857 Mar/24/2010

オバマ大統領のカイロ演説に対するアズハル・モスク前大導士の反応


2010 年3月10日死亡した(カイロのイスラム教権威)アズハル・モスクの大導士ムハンマド・サイード・タンターウィー博士(Dr. Muhammad Sayyed Tantawi)は2009年7月、前月の米大統領バラク・オバマBarack Obama)のカイロ演説に対する反応を発表している。タンターウィーはこの中で、オバマアメリカの対ムスリム関係に新たなページを開くイニシアチブを取ったことを賞賛した。また、オバマパレスチナ人に暴力の道の廃棄を呼びかけたことを支持し、パレスチナ独立国家の大義を促進するようオバマを励ました。彼はまたオバマの(文明間)協力と対話の呼びかけ、および核兵器競争停止の呼びかけを支持し、無実の者を殺害する過激派の処罰を促した。彼はまた、マイノリティーと女性の権利の促進、および信仰の自由の擁護を呼びかけた。
以下は、エジプトの月刊誌マガッラ・アズハル(Magalat Al-Azhar)の特別号に掲載されたタンターウィーの反応の抜粋である。※1


ムスリムは文明間の対話と協力を支持する


タンターウィーは、ムスリム世界との関係に新たなページを開くオバマのイニシアチブについて、こう述べた。「カイロはあなた(バラク・オバマ)を歓迎する・・・人間はすべて兄弟であり、互いを知り、互いに正直であり、アッラーの祝福を共有し、罪と侵略(の精神で生きる代わりに)品位と敬虔(の精神)で協力しなければならない・・・対話は全ての者の善に奉仕する最善の方法である・・・われわれはムスリムとして、文明間の協力と連帯を支援する・・・」


イスラムと西側間の緊張は殺人の言い訳にはならない


イスラムと西側は何世紀にもわたり共存と協力を体験し、また、緊張も体験したが、過激派はこの緊張を利用して市民に害を加えてきたーーというオバマの発言に対し、タンターウィーは9・11テロを最初に非難したひとりがアズハルだとして、こう付け加えた。「(イスラムと西側の間の緊張の)原因は何であれ、この緊張を男性、女性、若者たちを殺害する言い訳として使うことは、宗教的に、理性的に、法的に、道徳的に禁じられている・・・シャリーア、(イスラム法)はいかなる種類の過激主義にも強く反対し、シャリーアに従う全ての者たちに対し、また、全ての公衆に対し、助け合い、協力して、人間社会に平和と治安を広げるよう命じている・・・」と。タンターウィーはこう言った。過激派とテロリストに対し、彼らの運命はつらいものになるだろうと警告し、もし、彼らが警告に従わないなら、公正な裁判に掛け、二度と罪を犯させない罰を加えねばならない、と。


・信仰の自由と、ベールを被る女性の権利を支持しなければならない


タンターウィーは、オバマの米国における信仰の自由に関する発言を賞賛して、こう述べた。「すべての国は信仰の自由を尊重しなければならない。なぜなら、モスク、教会、他の(寺院などのような)信仰の場が存在するのは(人々がそこで)礼拝し、魂を洗浄し、正直や同情といった道徳を学ぶことができるからだ・・・米国における1,200ヵ所を超すモスクの存在は、この(信仰の自由の)権利に対する、また(さまざまな形態の)宗教信仰の尊重に対する(アメリカの)正しい理解、適切な行動と誓約の徴である。信仰者が、法律を破り、ふとどきな意見を表明し、あるいは不届きな行為を犯すために(信仰の自由を)利用しない限り、われわれは(その敬虔さについて)彼らをほめる。しかし、彼らが破壊の種をまき、抗争を唆し、国家の治安を破壊するために(信仰の自由を)利用するなら、彼らは訴追され、信仰の場所から排除されねばならない・・・」
タンターウィーは、こう付け加えた。「これ(信仰の自由)は、ムスリムの少女と婦人がヒジャーブ(ベール)を被る権利の擁護と、この権利をあえて否定しようとする者たちの処罰に至る。なぜなら、ヒジャーブ(を被ることは)イスラムシャリーアが定めていることだからだ・・・」。彼は、平等の権利と義務を全ての人に保障すること、また、差別との闘いにおける世界的な協力を呼びかけて、こう述べた。「イスラムシャリーアは男性と女性を平等に(扱う)。なぜなら、彼らの源は同一だからだ」と。彼は、この平等は礼拝、断食、巡礼といった類似の宗教義務、加えて教育と財産に対する権利、とりわけ配偶者を自由に選ぶ権利に明示されている、と説明する。
タンターウィーはまたマイノリティーの権利について、こう書く。「シャリーアは、宗教信条、出自、人種が何であれ、ひとつの国家の国民全ての公正と平等を定めている・・・それぞれの国家の国民は、権利と義務において他の全ての国民と平等で(なければならない)。例えば、エジプトの全ての国民は、ムスリムであれ、クリスチャンであれ、他の信徒であれ、等しい権利と義務を持つ・・・」。タンターウィーは、イスラムは宗教の自由を認め、個人に宗教信条を強制してはならないと認めていると強調した。
オバマイスラエルパレスチナ抗争に関する立場は「勇敢であり、偏向していない」
タンターウィーは、イスラエルパレスチナ紛争に関するオバマの立場━パレスチナ人に対する暴力放棄の呼びかけを含む━については、勇敢で、明白で、客観的なスタンスと表現し、当事者双方に対して、それぞれが為さねばならないこと、それぞれが受け取る権利があるものを明確にしていると述べた。タンターウィーはオバマの二国家解決呼びかけを支持し、オバマの、アラブ諸国の責任はアラブの和平イニシアチブ(の提示)では終わらないという発言を支持した。彼はまた、多くのイスラエル人はパレスチナ人国家の必要を理解しており、これと全く同様に、多くのアラブ人もイスラエルは立ち去ることはないと理解しているという点で、オバマと同じ考えだと述べた。タンターウィーはさらに、こう付け加えた。「今や、米国と世界の他の国々がパレスチナ人を助け、彼らが国家━世界の他の国々と同様に自由で、誇り高く、尊重しうる国家━の樹立を達成するまで、パレスチナ人がその権利を享受できるようにする時である・・・」と。彼はまた、これは抗争の当事者双方の利益になり、また米国、世界の利益にもなるだろうと語った。


シャリーアは自己防衛のためにのみ、兵器の製造や購入を認める


タンターウィーは、オバマが述べた核兵器競争の停止、とりわけ中東における核兵器競争の停止呼びかけを繰り返して、こう言った。「われわれは、あらゆる国が平和的な目的のために核エネルギーを所有する権利を支持する。われわれは(また)全ての国からの核兵器の解除を呼びかける国はどこであれ、支持する。(なぜなら、これらの兵器は)建設的ではなく、破壊的であり、他の国々を脅かし、強要する道具だからだ。シャリーアは兵器製造や購入について、自己防衛、ホームランドの保護と財産保護の目的以外には、いかなる目的であれ、禁止している・・・」
最後に、タンターウィーはオバマの、進歩とテクノロジーの発展に賛成する発言を支持した。
注: [1]Magalat Al-Azhar (Egypt), July 2009


(引用終)