ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

押して駄目なら...

ICUの礼拝堂は、2005年8月に訪れたアメリカのボストンやハーバード大学の教会を思わせるほど、堂々たる立派な建物でした。学会二日目の午前中は、10時半から「どうぞ礼拝にいらしてください」。(ここが普通の学会と違うところだなあ、さすがは)と感銘を受けながら、せっかくの機会なので(と言っても、ICUは二度目の訪問)、いそいそと参列することにしました。
「今日は英語の礼拝です」とのことで、入り口で通訳イヤホーンを配っていらしたようですが、マレーシアやシンガポールの教会で鍛えられていますし、二言語を同時に聞くのは疲れるため、自然と英語のみにしました。ただし、讃美歌は当然のように日本語。『讃美歌21』と従来の讃美歌集の併用で、知らない曲が多かったので、少し戸惑いました。(帰宅後、さっそく練習しました。)
説教者は、青山学院大学の若いはつらつとした宣教師。この方のお顔は、しばらく前にホームページで拝見していたので、初めてという気はしませんでした。
礼拝の雰囲気はとてもよかったのですが、入り口で『ICUのリベラル・アーツ』という本の販売があり、少し考えさせられました。「とってもいい本なので」と強く勧められましたが、3000円もするのと、荷物がこれ以上重くなるのも、と思い、つい次のように言ってしまいました。
「それほどリベラル・アーツが重要であって、今こそ必要なものであるならば、当然のことながら、他の主要大学の図書館にも配布されるんですよねぇ?そしたら、私、必ず読みますから」と。すると、「えぇ?他大学に売るのは、ちょっと...」とのお返事。思うに、小さな学会員に販売してみたところで、あまり影響力がないような....。
今回、我ながら、オバサンになったなあ、というのか、関西風に本音で勝負、というのか、マレーシアやシンガポールで鍛えられた押しの強さ、なるものが、結構身についているのだと、確認しました。三十代前半までの「ういういしい」私なら、後ろに下がって遠慮ばかりしていたようなのですが、最近では、何か筋の通らない話があると、即座に理屈で押し返してしまう自分を見い出しました。もともと、赤ちゃんの頃から怒りっぽく、神経質なくせに気だけは強かったそうですから、地を隠しきれなくなったのでしょう。グローバル化の今日、何事も、度胸と強気でいかなければなりません。
宿泊のビジネス・ホテルでもそうでした。一応はノート・パソコンも持参しましたが、東京に着いてから、パワーポイント用のメモリーのデータをプリントアウトして、コピーを50部以上作る予定でした。関西でそれをやっていたら、到底、荷物が重くて間に合いません。まあ東京だから大丈夫だろうと、高をくくってもいました。
ところが、実際には、昨年の研究大会で発表した大学の場所よりも、遙かに都会なのに、「うちのホテルではプリントアウトはできません」。「ウイルスが蔓延しているので、中止になったのです」。
「それでは、どこでデータを出力したらいいのですか。明日は学会発表があって、どうしても必要なのですが」。
すると、フロントの奥から責任者らしい男性が出てきて、丁重に説明し、「うちではだめです」。
「じゃあ、どうすればいいんでしょう?」と押してみると、「ネットカフェあたりはどうですか。ただし、身分証が必要です」。「あのう、私、運転免許証を持っていないし、普段は写真付きなのでパスポートを身分証明書に使っているんですけど、国内なので今回は持参していません。ただ、これ、遊びじゃないんです。確かに、学会のプログラムも持っていますし、学会名簿もここにあります。私は発表者なんです」。
自分でも、かなり強引な押しだなあ、と内心思いながらも、やれるとこまで交渉してみよう、という気になっていました。
「申し訳ございません。ご事情はよくわかりましたが、こちらでは如何ともしがたいので...」。
(やっぱり駄目か。しょうがないな)とあきらめ、まずは頭を冷やすための気分転換として、学会会場の下見と三鷹の中近東文化センターへ行ってみることにしました。あわよくば、途中でどこか適当なところが見つかるかもしれない、と思いながら...。
夕方、疲れて戻ってきた私を見て、フロントの若い女性が心配そうに尋ねてくれました。「あのう、大丈夫でしたか?」
「いえ、これから部屋に戻って少し休んでから、新宿に行ってみます。そこなら、夜も大丈夫ですよね?」「え、えぇ、まぁ....」
部屋で鞄を開けて準備していると、10分ほどして、フロントから電話がかかってきました。あの、責任者らしい男性でした。
「すみません。今聞いたんですが、まだパソコンのメモリー出力の件で、終わっていらっしゃらないかと...」
「ええ、そうなんです。これから新宿へ行くつもりです」と答えると、「あの、そのことなんですが、今回は特例として、うちの系列のホテルじゃないんですが、ここから最も近い一区先の駅にあるビジネス・ホテルと連絡がつきました。もしよろしかったら、そちらへメモリーを持って行って、プリントアウトしてみてはいかがでしょうか」。
それはそれは、思ってもみなかったことです!やったぁ、何でも交渉してみるものですね!
結局、そのフロント係の機転と采配によって、そのホテルでパソコンをお借りすることができました。プリンター用紙は自宅から持って行ったので、お代もいりません、とのことで助かりました。ありがとうございました。