ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

パレスチナ問題への勧告

「メムリ」(http://memri.jp

Special Dispatch Series No 2513 Sep/3/2009

パレスチナにとって最悪の敵はパレスチナ人自身
―アラブの知識人がみる紛争長期化の根源―

アラブのリベラル派知識人で研究者のファンディ博士(Dr. Mamoun Fandy)が、ロンドン発行アラブ紙Al-Sharq Al-Awsatのコラムで、政治目的の追求上、グローバルな政治環境が、パレスチナにとって追い風になっていると観察、その一方でその流れに乗れないパレスチナ指導部の欠陥を指摘した。ファンディによると、指導部はパレスチナ人に提示された政治解決案を拒否し、自己賛美にすぎない?抵抗?に固執して一歩も進めず、内部的にはハマスファタハに分裂して足の引っ張り合いをしている。アラブはその欠陥克服をパレスチナ人に求めるべきであり、パレスチナ人は、問題の種として残るか解決者の側に立つのか、今すぐ決断せよ、とファンディは主張した。以下その記事内容である※1。
パレスチナ側に平和のパートナーがいない―PAハマスか、交渉相手が不明
パレスチナ問題の解決で調停役をしようと考える人は、一体何処へ行けばよいのであろうか。ヨーロッパやアメリカの調停者は、ラマッラのパレスチナ自治政府PA)へ行くべきなのか、それともガザのハマスへ行かなければならないのか。アメリカのミッチェル特使やEUの外交担当ソラナ氏は、誰と話をすべきなのだろうか…?
今日、パレスチナ側には(平和の)パートナーがいない。そのような状況になった“元凶”は、愚かな仲間うちの闘争に明け暮れるパレスチナ諸派である。勿論、その(パレスチナ内部の)抗争を生活の糧にする者もいる。テレビに出演し或いは原稿料で稼いでいる連中だが、パレスチナ(指導部)に、この事実をぶつけて、解決をせまるようなことはしない。パレスチナ問題は、駄々をこねる子供のような主張ではなく、大人の議論をすべきである。
パレスチナ問題の解決にとって、国際(環境)の面からいえば、今日ほど機会に恵まれたことはない。ヨーロッパはパレスチナ側を支持し、国連にパレスチナ建国決議の採択を求めている。イスラエルの建国を可能にしたものと同じような決議である。ソラナ特使は、これを強力に押している。アメリカのオバマ大統領は、アラブ全体特にパレスチナ問題に対して、歴代大統領のなかで最もよき理解者である。現在パレスチナ国家の建設に反対しているのは、まず第一にパレスチナ人自身、ついでイスラエル人である…。
中東はもともと不安定な地域であるが、そこに新しい国家が誕生するためには、国際社会の支持と支援が必要であり、新国家自体も安定した国家でなくてはならない。アナーキー状態の火に油を注ぐような国であっては、困るのである。パレスチナ国家は、指導部がひとつにまとまり、指揮命令が一本化して、まとまりのある強力なリーダーシップがあれば、地域の安定に貢献できる。そのような指導者としての資質を持つ人物がダーラン(Muhammad Dahlan)である。治安担当で、ハマスは本人を嫌っているが、地域の安全・安定のパートナーになるパレスチナ国家を建設するには、まさにぴったりの人物である…。
パレスチナ指導部が抱えるさまざまな欠陥
パレスチナ諸派の態度と行動、諸派間の抗争は、外部の世界には、現状維持に狂奔しているようにしか見えない。ハニヤ(ハマスの首相)とマシァル(ハマスの政治局長)は、政治的に依然として未成熟である。解決を拒否するのではなく、解決を願うことを、証明できないでいる。
占領とイスラエルの入植地建設が、(パレスチナ問題の)解決の足を引っ張っているのは間違いない。それはそれとして、我々がアラビア語で書く記事では、我々はパレスチナ指導部にその欠陥を突きつけなければならない。パレスチナ諸派は、自分の人民と自分の大義を愚かにも踏みつけにしている。イスラエルを非難する前に、自省しなければならぬことが沢山ある。まっとうな神経の持主であれば、パレスチナ指導部に対する批判にふたをすることは、絶対に認めないであろう。
パレスチナ人のおかれている状況は、よく言って行きあたりばったりである。大変重要なことであるが、この状況を批判するにあたって、我々は正直でなければならない。かつて私は、某大国でパレスチナの外相との会合に招かれたことがある。会合でこの外相にイスラエルの入植地図が見せられた。外相がこの地図を手にした時、私はすぐに気付いた。何故、パレスチナ大義が何の成果もあげていないのか。理由が判ったのである。外相は地図を見ることは見たが、(全然理解できないで)いた。我々のなかには、世界最高の大学を卒業した最良の知識人が何人もいるのに、何故我々はこのような指導者を代表にしているのだろうか。これは、パレスチナ人自身が答えるべき疑問である。
ガザやウェストバンクの住民は、世界のほかの人民と同じように国家が欲しい。人民を人間として扱う主権国家に住み、もっと良い暮らしがしたい。この点に関して、ガザは、レバノン、エジプト或いはシリアと違いはない。人民はこの無意味な?抵抗?にうんざりしている。本当の抵抗には政治目標がある筈なのである。
・現実的な政治目標がない抵抗は無意味
国家や運動は、戦争や抵抗の背後に政治目標がない限り、戦ったり抵抗したりしない。今日までハマスの指導部は、そしてファタハ指導部の多くの者は、我々に納得のいく説明ができないでいる。筋の通った現実的目標の達成のため頑張っていることを、我々に示せない。(抵抗の)目標が指導部の数人を抵抗の象徴、(民族の)誇りとして認知されることにあるのなら、喜んで認めてやろう。しかし、このような限定された目標のために無辜の命を犠牲にする必要はない。
しかしながら、パレスチナ国家建設の夢を実現し、住民がほかの人民と同じように、尊厳ある生き方を可能にするのが政治目標であるのなら、これは全く別種の闘争といえる。その闘争は、新しい戦略を必要とするのである。戦略の第一は、パレスチナ国家建設のため統一した指導部をつくることである。その指導部は敵を納得させるだけの質を持たなければならない。敵が、交渉相手として認め、この相手になら土地を与えてもよいと考える指導部が必要である。友人を納得させることはやさしい。しかし、問題を解決するには、まず相手を納得させなければならない…。
パレスチナの敵はパレスチナ
今日、パレスチナ大義を傷つけている最悪の敵は、パレスチナ人自身である。我々がこれをはっきりと述べる時がきている。懲罰のためではない。愛するが故の勧告である。
パレスチナ側は機会を逃すな
オバマホワイトハウス入りして以来、グローバルな政治情勢が変ってしまった。アラブにとり特にパレスチナ人にとって、今までにない良き政治状態が生まれたのである。千載一隅の機会が生まれた今、パレスチナ人は問題を解決したいのであれば、オバマに対して柔軟にならなければならない。指導体制を統一し、暴力放棄を誓約のうえ、アラブ(主導の)提案にある二国家併存の解決をめざして、交渉のテーブルにつくべきである。国際社会では三国家併存(ガザ、ラマッラ、イスラエル)の解決など誰も望んでいないイスラエルも、パレスチナ国家の併存を受入れる以外解決の道はないことを理解しなければならない。
先のばしの時代は終った。大々的な国際圧力がなければ、イスラエルはこのような国家を受入れることはないだろう。それは判っているが…ファタハ(第6回)総会では※2、パレスチナ側は、自分達が駄々をこねて殴り合いばかりしている少年期の子供ではなく、思慮分別があり独立するにふさわしい大人であることを、証明しなければならない。
パレスチナ人は再び歴史的な選択の時にきている。解決の側につくのか、問題として残るかである。彼等は、パレスチナにまとまりのある統一指導部を付与する(機会にも)直面している。国際社会が話をしたのであれば、どこの誰と話をすればよいのか、一本化した指導部が必要である。
※1.2009年7月27日付Al-Sharq Al-Awsat(ロンドン)
※2.この記事は、ファタハ総会開催(2009年8月4−5日於ベツレヘム)の前に掲載された。
(引用終)