最近、借りたり買ったり、いただいたりした本のリストを掲載するのを怠っていました。2008年の終わりにあたり、慣例に従って、11月中旬以降の一覧表を出すことにしましょう。どんな本を読んでいるかなんて、自宅で毎日何を食べているかと同じで、わざわざ公表することではないとは思います。ただ、どうも「随分長い間マレーシアの勉強をしている人」というイメージが先行して、いわれなき筋違いのコメントを寄せられたりすると、やっぱり多少はわかってもらう努力も必要なのかな、と考えた次第です。一方で、女の浅知恵(←これは本当です!男の人は、やはり頭がいいです)という戒めを常に踏まえていなければとも思っています。
普段はほったらかしで音信不通である弟の研究発表を、偶然ネット検索で見ても、何がおもしろくてそんな研究をしているのかさっぱりわからないのですが(多分、弟も私のしていることの意味がわかっていないでしょう)、少なくとも、うちの主人に言わせれば「僕の苦手な分野」なのだそうです。世の中、適材適所、役割分担、見解は多様な方がいいのだから、まあ、しょうがないかってとこですね。「研究費と称して、我々の税金を無駄に使うなよ」と、弟には言ってやりたいです。(「ハイハイ(口うるさいなあ、相変わらず...)」というつぶやきが聞こえてきそうですが。)
・Graham Saunders“Bishops and Brookes: The Anglican Mission and the Brooke Raj in Sarawak 1848-1941” Oxford University Press, 1992.
・A. Teeuw“A Critical Survey of Studies on Malay and Bahasa Indonesia”International Cultural Relations, The Netherlands Institute, 1961.
・民族學協會調査部『傅道と民族政策』彰考書院(昭和19年11月15日初版)1000部
上記三冊は、既知事項も多かったとはいえ、なかなかおもしろかったです。
故ワット教授の著作の一つです。英語のムスリム・クリスチャン関係の方が、数倍おもしろかったのですが(参照:2008年6月8日・6月11日−14日付「ユーリの部屋」)、日本語訳されるのは、たいていこういう方面に限られるのでしょうか。
・佐藤優『世界認識のための情報術』金曜日(2008年)
この種の本を続けると飽きてくるかもしれませんが、たまに読むならば刺激があることは確かです。一つの参考にはなります。
というわけで、こういう本を借りてみました。
・桜井啓子『日本のムスリム社会』ちくま新書420(2003年)
・樋口直人/稲葉奈々子/丹野清人/福田友子/岡井宏文(著)『対日ムスリム移民の社会学 国境を越える』青弓社(2007年)
・河田尚子『日本人女性信徒が語るイスラーム案内』つくばね舎(2004年)
・寺田貴美代『共生社会とマイノリティへの支援―日本人ムスリマの社会的対応から―』東信堂(2003年)
参考程度に、まとめて上記4冊を集中して読んでみました。恐らく、リサーチには非常に長い時間がかかっていることだろうと思うのですが、本ではすぐに読み終わってしまうのが、残念といえば残念です。この中で一番おもしろく読めたのが、寺田氏の第4章に出てくる日本人ムスリマに対するインタビューの断片です。ただし、(私なら、こういう話を聞いても、公には直接活字にしないだろうな)とも思ったことを申し添えておきます。というのは、私にもなじみのある話と重複しているからです。大事なテーマだけれども、「学問」「研究」というの名の下に、人様の人生の覗き見のような結構失礼なことをしているんだ、という自戒として、読ませていただきました。
この4冊に共通することとして、表面的にはイスラームやムスリム/ムスリマを語っているようでいて、実は、一部の日本人女性(研究者?)の男性観や結婚観の一側面が期せずして見え隠れしているという点が、最も楽しかったです。良し悪しの問題ではなく、正直なところ、(私とは感覚が違う)と思いました。
・朝倉純孝『オランダ語文典』大学書林(昭和58年/平成12年)第3版
・内記良一『くわしいアラビア語』大学書林(平成元年)
いずれも、近い将来、私のテーマに関連すると思って用意しました。オランダ語はともかく、例文が楽しいのは、やはりアラビア語。こういう世界なんだろうなあ、と行く予定もない社会を勝手に想像して、楽しんでいます。
・大塚和夫『イスラーム主義とは何か』岩波新書885(2004/2007年)
・アミン・マアルーフ(著)牟田口義郎・新川雅子(訳)『アラブが見た十字軍』ちくま学芸文庫(2001/2007年)10刷
買って後悔している2冊です。もちろん、随分前から知っていたのですが、手元に置く必要もあるかと思って、失敗しました。予想通りのことしか書かれていません。読書経験のうちには、こういうこともあります。
・佐々木力『21世紀のマルクス主義』ちくま学芸文庫(2006年)
・ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(著)中平浩司(訳)『論理哲学論考』ちくま学芸文庫(2005/2008年)
多分、今の「経済格差」状況に怒っている人々から、前者に惹かれる人々が出てくるのではないかとの予想の下に、どのように理論的構えを作っておけばよいかという訓練の下地として、後者を買い求めました。
・平山諦『和算の歴史―その本質と発展―』ちくま学芸文庫(2007年)
これは、純粋に楽しみの本です。どこまで理解できるかなあ。
・ハルナック(編)服部英次郎(訳)『アウグスチヌス 省察と箴言』岩波文庫33-805-8(1937/2008年)8刷
・古東哲明『現代思想としてのギリシア哲学』ちくま学芸文庫(2005年)
・カント(著)宇都宮芳明(訳)『永遠平和のために』(Zum Ewigen Frieden, 1795)岩波文庫 青625-9(1985/2008年)39刷
読書をするというなら、やはりこういう本を指すのでしょう。そして、物を書くとは、こういう書を出すことを言うのでしょう。
「このバニヤンの本がなぜマレー語で訳されないのか」という意見が出ていたのを、独立後のマレーシア教会会議録で見つけ、そのこと自体に感動したのは今年の前半期。そこで、手元に置くことにしました。
・教皇ベネディクト十六世『霊的講話集 2007』ペトロ文庫(2008年)
このシリーズがいつまで続くかが問題です。過去2年分は持っています(参照:2008年6月16日付「ユーリの部屋」)。今朝、新聞広告に出ていた『ナザレのイエス』を「ドイツ語で読みなさい」と主人に言われましたが、そちらは遠慮します。
・水谷清(編)『スペインのことわざ』大学書林語学文庫(昭和37年/平成17年)10刷
一日一つずつ暗記を繰り返せば、何か役に立つこともあるんじゃないのかなあ、と思って買い求めました。スペイン語は、もっと真面目に勉強したいと思っていますが、なかなか物理的に時間がとれません。スペイン語には、イスラーム時代の影響でアラビア語系語彙も含まれているので、マレー語との比較対象としても、趣味的におもしろいんですが。
ライナーノートでよくお見かけする方の著作です。割合にはっきり書いてあるので、評価は分かれるでしょうが、頷けるところも多く、私なりの聴き方の一つの参考にはなります。
最後に、お正月休みに聴くつもりで借りてきたCDを列挙しますと....。
・『シューマン 交響的練習曲Op.13/幻想曲ハ長調Op.17』ベルント・グレムザー(ピアノ)
・『マリス・ヤンソンス・バイエルン放送交響楽団 シベリウス・ブリテン・ウェーベルン』(含:「夏風のなかで―ブルーノ・ヴィレの詩による大管弦楽のための牧歌」)
・『ドヴォルザーク:チェロ協奏曲/オーフラ・ハーノイ』プラハ交響楽団/チャールズ・マッケラス卿
明日、もし時間が許せば、あしながおじさまの送ってくださった山本書店の10冊+αをご紹介したいと思います。では、この辺で。