ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

イラクのキリスト教徒

メムリhttp://www.memri.jp

Special Dispatch Series No 2090 Oct/23/2008

モスルの恥辱


この数週間イラク北部のニネベ地方で、キリスト教徒住民が迫害キャンペーンのターゲットになり、非常な窮状に直面している。殺害、追放され、住居を爆破されて、キリスト教徒数千人がモスルの中心部から流出、郊外や市の北方村落へ逃げているのである。キリスト教徒側を初めいくつかの消息筋は、この迫害政策を背後で操っているとして、アルカーイダを非難している。キリスト教徒が地方選挙法第50条の復活を求めているので、その要求に対する見せしめの迫害政策とみる者もいる。ちなみに、この第50条は、マイノリティ集団に対し地方議会の議席をいくつか保証する内容である※1。
 イラク政府は、キリスト教徒迫害を非難し、彼等を守り犯行グループのテロ集団を逮捕すると公約した※2。政府は、犯行グループの組織名を明らかにしないで、容疑者数名の逮捕も発表している※3。イラクナショナリスト所属のナジフィ議員(Osama Al-Najifi)は、キリスト教徒を追い出しほかの民族集団を迫害しているのはクルド族で、北部域のクルド化キャンペーンの一環である、と主張している※4。
 イラクのリベラル派でNGO「寛容インタナショナル」(Tolerance International)会長のシンジャリ博士(Dr. Hussein Sinjari)は、2008年10月15日付イラク日刊紙Al-Ahaliで、モスルからのキリスト教徒追放を非難し、次のように主張した※5。


ムッラーと金曜説教師に教典のファシスト的解釈を許し,ジハードと殉教の呼びかけを認めたのが発端


 「再びモスルの犯罪人共がキリスト教徒を狙い撃ちにしている。再びムッラー共は、沈黙を守り、彼等の多くは金曜説教や訓戒のなかで公然とムスリムに人殺しを勧める…。
 モスルは、経済的文化的に繁栄する都市であった。マイノリティが栄えたからである。そして今。モスル住民は、自分自身の利益に目配りすることで知られるが、偉大な都市に、一体何が起きたか、ひとつ住民に考えて貰おうではないか。何故この都市は荒廃してしまったのであろうか?…
 モスル住民が、ムッラーと金曜説教師に勝手な解釈を許したから、こうなったのである。聖職者達は他者に対する思いやりや友愛、他宗教や多民族の尊敬と共存を説く代りに、経典にファシスト的解釈を加える。その解釈を許し、妄想にもとづく世界の解釈を受入れ、失われた栄光の大風呂敷に合点し、ジハードと殉教の呼びかけに応えた時、これが起きたのである。
テロリズムを説くムッラーを拒否して恥をそそげ
 モスルの住民が、まさに茶番のような諸々のファトを受入れた時、これが起きたのである。聖職者はトマトと胡瓜を同じ血に盛りつけてはならないというファトワをだした。胡瓜は男性、トマトは女性であり。よからぬ罪を犯してはならないから、男女は離しておかなければならないという。性器を露出してはならないから、山羊に衣をまとわせなければならぬというファトワもある。この一連の愚行で、モスル住民はまちの墓穴を掘ったのである。
 都市として一文明としてのモスルの死が全世界に向かって宣言される前に、住民自身が己の恥をそそがなくてはならない。それにはまずムッラーを否定し、テロリズムを拒否することである。イスラムファシズムのイデオログ達を拒否することである。これこそモスル住民の利益にかなう方法である。
人間は…犯罪に沈黙して共犯者になり…人間性を喪失する
 人間は、犯罪に沈黙してその共犯者となる時、マイノリティの他者を受入れず、尊敬しない時、人間性を喪失する。
 キリスト教徒とマイノリティ集団の消滅するイラクは萎えはてたイラクであるチグリスとユーフラテスが涸れるのと同じである。イラクは恥にまみれて死ぬだろう。
 我々は我らの麗しきイラク、二つの大河にはさまれた地、メソポタミアアッシリア、バビロン、アッカド、メディアそしてニネベと由緒ある歴史の地を死なせてはならない。
 モスル住民と政府は協力し、人間の良心を失った反啓蒙ファシスト犯罪テロリストに対して、力を合わせて戦わなければならない。彼等を打ち、我等が麗しの都市から彼等を駆逐しなければならない…。
キリスト教徒を守るために立ち上れ
 キリスト教徒のため、イラクのため、由緒ある歴史のまちニネベのため、マイノリティのため、人道と寛容と民主々義のため、女性、子供そして男性を守る人権のため立上らなければならない。科学、芸術と美と生命の讃歌そして正義のため立上らなければならない。
 モスル住民は何をおいてもまず、自分のために立上り、恥をそそがなければならない。キリスト教徒に対する(新手の)アンファル(Anfal)作戦の犯罪を拒絶しなければならないのである」※6。


※1 2008年10月11日付Al-Mada(イラク
   2008年10月15日付Al-Sabah(同)
※2 2008年10月12日付Al-Sabah
※3 2008年10月17日付Al-Mada 及びAl-Sabah
※4 同日付Al-Sabah
※5 2008年10月15日付Al-Ahali(イラク
※6 アンファル作戦とは、1980年代 サッダム・フセイン政権が実施したペシュメルガクルド戦闘隊)とクルド一般住民に対する殲滅作戦を指す。数万人が殺され、広い地域が破壊された。作戦名はコーランの8メディナ啓示・戦利品(Surat Al-Anfal 8)に由来する。これには無信仰者に対する戦いをうたう章句を含む。

(引用終)