ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

中東と米国そして日本

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「兇獣が跋扈する国際社会の闇」
2018年12月10日


・トルコのサウジアラビア総領事館を訪れた、アメリカに亡命中だったサウジアラビアの反体制ジャーナリストのジャミル・カショギ氏が、本国から派遣された情報機関のチームによって、館内で惨殺された。


・トルコの新聞によって、カショギ氏が総領事館内で殺害されたと報じられてから、アメリカのポンペイ国務長官が、カショギ氏殺害の疑いをめぐって、サウジアラビアに急いで飛んで、実権を握っている33歳のモハマド・ビン・サルマン皇太子と会見した。


・トランプ政権は、カショギ氏惨殺が事実であっても、サウジアラビアが中東外交の重要な駒であり、武器輸出の大切な顧客であることから、大事にしたくないと望んでいた。サウジアラビア政府は殺害を隠蔽できず認めたが、政府や、皇太子の指示によるものでなく、情報機関が勝手に行ったと言い逃れている。


・それなら、トランプ大統領が笑顔を浮べて、北朝鮮金正恩書記長を抱擁したのは、どうなのか。金書記長は異母兄の金正男氏をマレーシアで、白昼、暗殺したではないか。トランプ大統領は、中国の習近平主席とも抱きあった。中国は新疆ウイグル自治区で100万人以上を「集団訓練所」に拘置して、多くのウイグル人を虐殺している。チベット内モンゴルでも、戦慄すべきことが起っている。


・ロシアのプーチン大統領も、国外に亡命した多くの反体制派を、暗殺している。


私たちの日常生活の感覚で、諸外国を判断してはならないサウジアラビアは、中国、北朝鮮や、ロシアと体質が変わらない国家だ。


・世界は日本国憲法の前文で、たからかに謳っている、「公正と信義」を重んじる「平和を愛好する諸国民」によって、構成されているわけではない。国際社会は兇獣が横行するジャングルと、変わらないのだ。


・私はこれまで本誌で、今年に入ってから2回にわたって、サウジアラビアが安定を保てない可能性が高いと、警告してきた。サルマン皇太子は、サウジアラビアの“脱石油化”をはかって、きらめく近代国家に造り変えようとする、壮大な計画を進めてきたが、私は皇太子の改革が成功するはずがないと、予想してきた。


・カショギ氏はメディアが伝えているような、自由主義のジャーナリストではない。アル・カイーダや、ムスリム同胞団が信奉するイスラム原理主義に加担して、サウジ王家が民意を踏み躙っていることを、亡命先のアメリカから激しく非難してきた。


・サルマン皇太子がカショギ氏を目障わりだとして、計画的に殺害したのは、人口2400万人あまりのサウジアラビアの安定がきわめて脆いことを、示している


サウジアラビアをめぐる報道を、対岸の火災として見てはならない。日本はサウジアラビアを中心とするアラビア半島の産油諸国から、日本経済を支える石油天然ガスの80%を輸入している。アラビア半島が混乱に陥ったら、日本が大きく蹌踉くことになろう。


・日本のテレビの「ワイドショー」は「ショー」(英語で見世物)の言葉通り、視聴者の好奇心だけみたす娯楽番組でしかない。

(引用終)
加瀬英明氏の過去引用ブログは、こちらを(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=kase-hideaki)。
非専門分野ながら、「最近のサウジ改革は本物だ」というアメリカやオーストラリアの保守派論客の言説には(https://www.meforum.org/articles/2017/daniel-pipes-on-recent-saudi-reforms)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20170716)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20171218)、加瀬英明氏のように私も同意できなかった。もしも、今の皇太子によってそれほど簡単に改革できるとするならば、なぜ今まで改革できなかったのかの説明が必要である。それに、他の近隣ムスリム諸国の状況を見ると、サウジアラビアが「イスラームの盟主」として、全体をしっかり統率しているとも言い難い(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170227)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20180403)。表面的には、サウジの体面上、西側諸国からの圧力を懐柔する戦略だったのではないだろうか。
一方、なぜアメリカの保守派論客がサウジの改革を後押しするような論陣を張っていたか、という理由については、恐らくイランとの対決姿勢を誇示するためであろう。イランは、イスラエル撲滅を長らく公然と主張し、実践している国でもある。
一つ、新鮮だったのが、末尾の「ワイドショー」に関する辛口コメント。ここ十年以上、テレビを殆ど見ない生活なので(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091029)、たまに行く皮膚科のクリニックや、主人の持病で薬を受け取る薬局の待合室で少し眺める程度だが、本当にくだらない内容をダラダラとうるさく流している。あれを見て、世論を知ったつもりになっている層があるとすれば、恐ろしいことだ。

次に、そのアメリカ保守派に関する一つの洞察を、メーリングリストから抜粋。

広瀬隆アメリカの保守本流


・酷使された言葉だが、「石油のためのイラク攻撃」という、多くの人の誤解を解くことが必要になる。イラク攻撃が石油のためではないという答は読者にとって意外だろうが、その裏には「石炭」と「鉄道資本」が握る共和党政界のメカニズムがある。これこそ、保守本流の地盤である。


・大陸の西部には、ユニオン・パシフィック鉄道の行き着く先にカリフォルニア州スタンフォード大学があり、この鉄道に沿って共和党のフーヴァー大統領、ニクソン大統領、フォード大統領、レーガン大統領が次々と生み出された


・一方、東部の大都会には、ペンシルヴァニア鉄道とニューヨーク・セントラル鉄道があり、かつての栄華は一転して凋落したかに見えるが、この鉄道こそ、メリル・リンチという世界最大の証券会社を生み出し、ブッシュ・ファミリーをテキサスの利権者に育て上げた一族のシンボルだ。しかも鉄道利権が、インターネット時代の光ファイバーケーブルを支配しているのである。


・第二次オイルショック時代の七九年から八九年にかけて、ワイオミング州選出の下院議員となって、八九年から父ブッシュ政権の国防長官に抜擢されて湾岸戦争を指揮した男─リチャード・ブルース・チェニーである。


・チェニーの利権は、地元ワイオミング州が生み出す石炭の支配力にある。やがて彼の一族は、ワイオミングの地底に眠る巨大資源オイルシェールを掘り出すだろう。


・石炭と鉄道資本が握る共和党の地盤。


・そのユニオン・パシフィック鉄道の支配者が、ほかならぬブッシュ親子を大統領に育てた鉄道王アヴェレル・ハリマン一族だった。


・ハリマン家が経営する投資銀行ブラウン・ブラザース・ハリマンの最高幹部から転じて上院議員に当選したのが、プレスコット・ブッシュであり、その息子が父の資産をもとにテキサスで石油を掘り当てCIA長官から大統領になり、続いて出来の悪い息子が間違って大統領になってしまったのだ。


・石油とちょうど反対に、石炭と鉄道はアメリカ国内だけで完結する事業である。紛争を起こさず、国内で着実に石炭を掘り続けてきたので、メディアではほとんど取り上げられず、国際的にまったく地味な存在だ。


・ペン・セントラルに集約される共和党閨閥


・大富豪四人組のUSスチール「鉄のトラスト」を取り仕切った顧問弁護士が、ニューヨークのサリヴァンクロムウェル法律事務所のジョウ・フォスター・ダレス、のちのアイゼンハワー政権国務長官として米ソ対立・核兵器競争を激化させた政界保守本流中の本流だ。


・こうしてあらゆる組織、あらゆる資本、あらゆる産業を近親者で支配したひと握りの共和党閨閥が、ペン・セントラルという鉄道に集約されることになった。


・ワイオミングの石炭とテキサスの石油をつなぐコネクション。


・ワイオミングとテキサスを鉄道でつなぐ閨閥によって、石炭資本と石油資本は一体となっている。


・息子ブッシュ政権の人事部長チェニーは、石炭利権者であると同時にロスチャイルドの人脈でもある。


・彼らの所属する組織は、シンクタンクから軍需産業、メディア、政権幹部ポストへと広大なつながりを持っている。その人脈コネクションを図解すれば蜘蛛の巣のように入り組んでいるが、中心には必ず大きな財閥の資金源がある。


イラク侵攻と北朝鮮問題の軍事プロパガンダに関与した注意すべき主な政策研究所やシンクタンクの名前をあげるだけで、数十のリストができるのである。そこに、キッシンジャー・アソシエーツのような数多のコンサルタント会社が加わる。


・しかもシンクタンクとは、アメリ連邦政府補佐官や側近などをホワイトハウスに送り込む「取り巻きの養成所」であり、同時に政権交代がおこなわれた時の天下り中継組織」である。シンクタンクがよくもこれだけ大量の人間を養っているものだと思うが、国際金融マフィアの法外な収入は充分それに見合うだけの資産を蓄えてきた。

(部分抜粋引用終)
日本とは規模の違う人材ネットワークと膨大な資金力を、決して侮ってはならない。これは、我々が敗戦から学んだ痛い教訓である。最近の「日本は悪くなかった」論調の国内向け出版物の間違いは、そこにある。だからこそ、とても大変だが、二刀流で常に勤勉に努力を続けていくしか、天然資源の少ない小さな国である日本の生きる道はない(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160229)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20180423)。
これは、私が中学生の頃から身にしみて感じていたことである。今も、それは変わらない。
最後に、少し古い記事だが、久しぶりに『メムリ』を(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=memri%2Ejp&of=100)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=memri%2Ejp&of=50)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=memri.jp)。
日本の全国紙でも、この程度は報道していただきたいものである。

https://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=SP762118


緊急報告シリーズ   Special Dispatch Series No 7621 Sep/14/2018

日本人テロリスト岡本公三を讃えるファタハの公式フェイスブック


ファタハの公式フェイスブックが、2018年8月12日付で、日本人テロリスト岡本公三の写真を掲載し、日本赤軍に関する情報を付記した。1971年5月30日、3人の日本赤軍所属テロリストがイスラエルのロッド国際空港を襲撃し、26名を殺害し、79名を負傷させたが、周知の通り岡本公三はこの3人のテロリストのひとりである。このテロ攻撃を実行する1年前の1971年、岡本公三は、レバノン所在のパレスチナ解放人民戦線PFLP)のもとで、テロ訓練をうけた。3人の内2人は、空港襲撃で死亡し、岡本公三は捕まってイスラエルの法廷で終身刑3回の判決をうけたが、13年後に釈放されたジブリル合意、即ち、パレスチナ解放人民戦線―総司令部派(PFLP-GC)との捕虜交換による。
次に紹介するのは、ファタハの公式フェイスブックの内容である※1。


岡本公三とは誰か(ファタハの主張)
1 パレスチナシオニストに対して攻撃を敢行した日本人戦士である。
2 24歳でイスラム教に改宗し、1972年のロッド空港作戦に参加した。この作戦でシオニスト26人が殺害された。岡本は、弾薬が尽きて捕虜になった。
3 岡本公三は、死刑の判決をうけたが、日本の圧力により、終身刑減刑された。 
4 岡本公三は、1985年に釈放された。


上記がその説明である。ここではっきり指摘しておく必要があるが、パレスチナ自治政府ファタハの公式フェイスブックが、岡本公三をとりあげたのは、今回が最初ではない。2016年5月18日付では、「戦友岡本公三とは、一体どのような人物か」と題して、次のように紹介している。


国際革命家である。1972年5月30日、3人の日本人コマンド隊が、ロッド隊は、手榴弾5発を投擲した。3発を駐機中の航空機に投げ、1発を通関事務所へ、残る1発は駐車中の車両に向けて投げた。その結果、イスラエル人26人が死亡、80人以上が負傷した。コマンド隊は手榴弾攻撃を終えると、空港から後退し始めたが、ラムラ刑務所付近で、イスラエルのパトロール隊と交戦、5人を負傷させた※2。この攻撃でコマンド隊3名のうち2名が死亡した。奥平剛士(通称バッサム)と安田安之(通称サラフ)である。第3の隊員岡本公三(通称アフマド)は負傷し、捕まった。本作戦はPFLPが策定した。


この日本コマンド隊は、日本赤軍に所属していた。ちなみに日本赤軍日本共産党から分離した革命組織で、世界の被圧追人民を支援し、世界の圧制・暴虐植民地主義及び帝国主義勢力に対する、グローバルな革命をひき起すことを任務としていた。この革命組織が注目したのが、パレスチナ大義である。その人民は、超大国に支援されるシオニスト運動の手にかかって塗炭の苦しみを味わい、日常的に暴力と追放にさらされていた。そしてこの革命組織は、当時レバノンを拠点にして(活動していた)パレスチナ革命勢力、特にPFLPと連帯したのである」※3。



[1] Facebook.com/officialfateh1965 , August 12, 2018.
[2] 本テロ襲撃の実際は、この説明とは非常に異なる。
[3] Facebook.com/officialfateh1965 , May 18, 2016.

(転載終)