エジプトの動乱について
エジプトの憲法停止とモルシ前大統領の処遇など、朝日新聞が珍しく大きく報道しています。中東専門家でもないのに生意気ですが、最初から、早かれ遅かれ、このようになるだろうとは予想がついていました(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20110221)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120703)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120904)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130307)。イスラーム主義やムスリム同胞団のイデオローグ関連の本が、昨今ではクアラルンプールの書店でも目に見えて増えていて、何年も前から何冊か読んでいたからです。
それに、ムスリム同胞団の設立者であるハッサン・アル=バンナの孫に当たるタリック・ラマダン氏の映像を見ていても(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120113)、おしゃべりなこと、おしゃべりなこと、長々と流暢にしゃべっているように見えながら、実はメモを取るとほとんど何も実のあることは語っていないのです。つまり、聴く者を惑わす戦法と同時に、アラブ文化の体現者でもあるという証左です。
「イスラームこそが解決だ」の矛盾や欠陥については、ここで詳しく述べる暇もありませんが、ともかく、土台が間違った政治信条と力量に欠ける人物の大統領選出が、このような結果へと導いたのだろうと思います。
気になるのは、「民主的に選ばれたのだから」という日本を含めた西側の識者の言説。民主的に選ばれれば、「民の声は神の声」とばかりに正しいと言えるのか?では、狂わしいほどの急激なインフレに悩まされたドイツが、ナチ党のヒトラーを選出した時、その政治信条の危うさに気づかずに、「ドイツ人が決めたのだから」と我関せずを決め込んで、恐ろしいホロコーストにまで至った責任は、誰が問うべき、問われるべきなのか?
エジプトの民主主義の未成熟のせいにするのも、あまり賛同できません。というのは、エジプトの文盲率の高さ、一日2ドルほどでやっと暮らしている人口の大きさ、観光業と石油収入だけで国の経済をやり繰りしてきた経緯を少し知っている者にとっては、我々の尺度から見た未成熟など当然のことであって、それにも関わらず、「独裁者を打倒した」ことだけで「革命」と狂喜して、イスラミスト達に武器まで支援した専門家やアメリカ与党の政治家達の責任を見逃しているように思われるからです。
独裁者も軍の支配も嫌だけれど、治安や社会の安定という点で比較すれば、ムスリム同胞団よりは遙かにましだったことが、これで明らかになりました。従って、アラブ諸国の上流階層は親米だからまかりならん、という左派思想の中東専門家達のいい加減さも、これで証明されたことになります。