エルサレムはイスラエルの首都
「エルサレムはイスラエルの首都」だと、12月6日にアメリカ合衆国のトランプ大統領が明言した。
1949年から長らく水面下で周到に準備を積み重ねてきて、ようやくここまで至ったのである(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160907)。
聖書に繰り返しエルサレムの言及が記されていることは誰の目にも明らかである反面、コーランには「エルサレム」の地名も語彙も全くないことは、広く知られてきた(http://ja.danielpipes.org/blog/16743)。
コーランにも存在しないエルサレムを首都とするイスラエルに対する「ムスリムの反発」を恐れてか、これまでずるずると問題を引き延ばしてきたのだった。
ところが、日本のラジオ・ニュースを聞いていると、両論併記どころか、「中東和平の妨げになる」「株価が下落した」と、何の根拠も示さずに昔から何十年も続いてきた同じセリフを一方的に垂れ流すので、イライラさせられる。いきなり(と言っても、最近の日本のニュースは水準が極めて下がっているが)、このトピックになると、まるで途上国の単純なニュースを聞いているような感覚になるので、嫌なのだ。
「和平の妨げになる」という前提でこの問題を論じていたら、永久に解決を見ることはない。
何よりも、(1)誰が和平を妨げているのか(2)妨げる真の理由は何か(3)その理由には妥当性があるか否か(4)妥当性がないならば、その妨げを解決する方法には、何が考えられるか(5)このニュースを喜んでいる人々の声はどこにあるのか(6)なぜこの時期にトランプ大統領が明言したのか、等の詳しい解説も分析もなければ、この方向性を日本政府が支持するのか拒否するのか、それとも「我関せず」と無視を決め込むのか、態度表明もないのである。
私が最も嫌悪するのは、普段はもっともらしく「自分は反ユダヤ主義ではない」「イスラエルの味方だ」等と公言しているような中東情勢の日本人解説者が、突然、「トランプは急ぎ過ぎだ。これを実施したら、米国内でもっとテロが増加し、中東が泥沼化する。日本もテロ攻撃に遭うだろう」等と述べ立てることだ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170130)。
そういう専門家もどきの態度こそが、まとまるものも壊すのだ。第一、素人が聞いたら、まずは不安や懸念を掻き立てられるだけだ。専門家は、正確な情報と事実に基いて、淡々と整理分析を述べるだけでよろしい。価値判断は、その後、各人に任せればよい。
私は、今回のニュースに全く驚かなかった。以下にその理由を述べる。
(1)今のイスラエル国連大使はダニー・ダノン氏であり、2015年5月上旬に、エルサレムのクネセト内でお目にかかったからである(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140512)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20151027)。彼の思想信条は、ご著書に率直にストレートに綴られているので、是非目を通されたし。
(2)今のアメリカ国連大使はインド系アメリカ人女性のNikki Haley氏だが、彼女も非常にイスラエルに好意的な発言を活発に続けており(http://www.danielpipes.org/17437/will-trump-turn-against-israel)、見通しは明るかったからである。
(3)熱心な中核リーダーとして長年活発に活動してきた共和党員を辞めたダニエル・パイプス先生だが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160723)、今年1月から、新たな試みとして「イスラエル勝利プロジェクト」を企画して、議会にも声を掛け(http://www.meforum.org/6652/congressional-israel-victory-caucus-to-launch)、イスラエルやワシントンその他で、精力的に運動を展開してきた経緯があるからである(http://ja.danielpipes.org/article/17319)(http://www.danielpipes.org/17110/the-way-to-peace-israeli-victory-palestinian)(http://www.danielpipes.org/blog/2017/04/bibliography-my-writings-on-palestinian-defeat)。
このような要人を含めた情勢分析が、なぜ日本から出て来ないのだろうか?
途上国みたいなニュースを繰り返していると、いくら杉原千畝を持ち出してみたところで(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130510)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130907)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170909)、本当に日本は見捨てられるぞ!
せめて、英語ブログに転載した英語記事ぐらいは(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20171207)、日本でも紹介されてしかるべきではないか。
フェイスブックからの転載を。
(https://www.facebook.com/ikuko.tsunashima)
5 December at 11:10
神風特攻隊は自爆攻撃を行う現代のテロリストとよく同一視されるが、それは不正確だと桑原さんは言う。
「全く違うと思う。神風特攻の場合には戦争のためにあった。イスラムの自爆テロというのは、軍とは関係ない一般人が含まれるという大きな違いがある。そして不特定、いつ起こる分からない。大きな差異がある」
山田さんは、当時日本が直面していた歴史的背景を理解せずに、日本語の「神風」の意味が誤解され、英語では不適切に使われていると考えている。(引用終)
上記の記述には私も同意する。パイプス先生にも伝えたが、完全に無視されて終わった(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/comment/20130105)。
shared Satoshi Ikeuchi's post.
Satoshi Ikeuchi
Yesterday at 19:15
NewsPicks
·
デモは起こるでしょうが、それが周辺諸国に大規模に広がるかというと、直接的にはあまり大きくならなさそうです。他に大きな関心事が周辺諸国にはあるからです。とはいえ、ここで唯々諾々と米・イスラエルに従った各国の強権的政権に対して、後に反体制運動が、政権の正統性が傷ついたと認識して活気づくという効果は大いに考えられる。イランやシリア・アサド政権は官製デモと参加(ママ)のメディアによる報道、シンパの専門家による辛辣・ひねった論評などで、大いに反米宣伝・反親米派批判の宣伝を繰り広げるでしょう。
なお、米エルサレム総領事館の領事部は、2010年に南の郊外の丘の上に要塞化したものがオープンしていて、多くの業務はそこで行なっていると見られる(エルサレム中心部にも一部の建物や総領事公邸などが残っている)。
この総領事館の新しい建物は1949年の休戦ラインの上にあり、1989年の賃借・購入契約は休戦ライン(グリーン・ライン)をまたがり、パレスチナ側の東エルサレムの領域に入っている。「エルサレム首都承認」だけであれば、結局どこまでがイスラエルのエルサレムなのかを曖昧にできるので、「東エルサレムは将来パレスチナの領土・首都になることもありうる」と言い続けられるのだが、東エルサレムにまたがった場所に駐イスラエル大使館を設置すれば、いっそう東西エルサレムの一体性、イスラエルの東エルサレムへの主権の主張を認めた形になる(「エルサレムの外の東側の集落もエルサレムの一部にしてしまってそこをパレスチナの首都にすればいいだろ」という奇策も真面目に論じられてきた)。
米国の大使館エルサレム移転支援勢力は、米国内とイスラエルとの水面下での競技で(といってもどっち側かわからない二重国籍的な人が多いが)、大使館移転が即、東西エルサレムの不可分性を米国が法的にも追認することを意味するように、かなり昔から着々と手を打ってきた。行政府・外交の場で具体策を積み重ねつつ、1995年の議会のエルサレム移転決議を経て、トランプ大統領が誕生してついに政策転換となるのか。
エルサレム問題はシンボルの問題であり、かつそれが具体的な土地と権利と国家による承認の問題なので、どこの土地にどのような名前をつけてそれを誰が打って誰が買うかが問題になる。トランプの声明の後はこういった技術的な問題を現地で詰めることになりそうです。(転載終)
「かなり昔から着々と手を打ってきた」(引用終)
← だってユダヤ人の考えることですよ、当たり前じゃない?日本は、第二次安倍政権になるまで、古い中東観に囚われ過ぎていて、遅れを取ったと思う。
ちなみに、以下の写真の場で撮ってもらった写真を私は持っている。
(転載終)
エルサレムを巡るパイプス先生の論理的かつ情熱的で秀逸な著述論文は、かなり下訳や中途訳が溜まっているが、とりあえず過去の拙訳リストをどうぞ(http://ja.danielpipes.org/art/cat/17)。
3000年の歴史を有する複雑で困難なエルサレムについて、惚れ惚れするほど見事に鮮やかに分析されているので(http://www.danielpipes.org/topics/17/jerusalem)、訳業を始めた2012年春からずっと憧れてきた。
追記1:このエルサレム論文を巡る不思議な経験については、過去ブログ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140205)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140508)をどうぞ。
追記2:「エルサレム」の複雑さについては、代々エルサレムと深い御由緒のある英国人作家サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ氏による著書『エルサレム』を参照のこと(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130814)。但し、バランスを取るためなのか、参考文献にリベラル左派の資料も多用されていることに注意。また、ピューリッツァー賞受賞者のデイビット・レベリング・ルイス氏の“God’s Crucible: Islam and the Making of Europe, 570-1215”(2008)も参考になる(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090112)。
追記3:上述の(1)(2)のお二人の国連大使については、英語ブログ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20171211)を参照のこと。