ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

「お前が言うな!」

昨日に引き続き(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160403)、『メムリ』を。マレーシアでもそうだが、何でも人のせいにしていては、いつまでも問題は解決せず、停滞したままだ。竹田恒泰氏に倣って、「お前が言うな!」

メムリhttp://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=SPMEMR16


Special Dispatch Series No MEMR Mar/30/2016

「グローバルテロリズムの拡散責任は西側と地域の敵にある―ブリュッセル攻撃に対するアラブメディアの反応―」



2016年3月22日、ブリュッセルで起きたテロ攻撃で、アラブ・イスラム諸国から一斉に非難の声があがった。テロリズム反対の声である。しかしながら、アラブのメディア記事と非難は、二種類ある。まず自分達と対立関係にある集団を非難し、ついでこの集団を支持しているとして西側を非難するのである。


例えば、シリアのアサド政権とこれに同調するヒズボラは、ヨーロッパを襲ったテロリズムは、シリアをターゲットにしているテロリズムと同じとし、グローバルなテロリズム拡散の責任は、トルコ、カタールサウジアラビアそしてこの諸国を支援するアメリカを初めとする西側にある、と主張する。一方、サウジ紙とシリア反体制派は、イランとアサド政権を非難し、彼等の行動に目をつぶっているとして西側も併せて非難する。


一方エジプトの政府系道は、シシ政権の主敵であるムスリム同胞団、そして近年エジプトの警告を無視して同胞団を支持してきた(という)ヨーロッパ諸国を非難する。パレスチナ自治区の新聞は、イスラエルの政策を支持し、パレスチナ問題に関する国際決議を履行しなかったことが、グローバルなテロリズムをのさばらせたとして、西側を非難した。次に紹介するのは、一連の記事論評である。


テロ支援のトルコ、カタール、サウジの背後者欧米に責任―アサド派とヒズボラの主張


シリアのアサド政権は、政権と戦う反徒グループを支援しているとしてアメリカ、ヨーロッパ、サウジアラビア及びカタールを常日頃非難しているが、今回のブリュッセル攻撃についても、同じ非難をおこなった。シリアの政府スポークスマンと官製報道は、ブリュッセルを初め世界各地のテロ攻撃は、サウジアラビア、トルコ及びイスラエルがテロ組織を支援し、そのテロを支持するアメリカとヨーロッパ諸国の‘誤った政策’の結果であると、主張している。


例えばシリア外務省の公式筋は、次のように主張している。
「今回のブリュッセル攻撃そしてその前のパリ等でのテロ攻撃は、テロリズムに国境がないことを物語る。そして又、このような攻撃は(西側の)誤った政策とテロリズム宥和の当然の帰結であることを示す。テロ組織はそれぞれ目的を持つ。それをテロによって達成しようとするが、そのテロ組織を穏健派としてとらえ、その行動を合法化する。実際には、タクフィル・ワッハーブ思想から出現したテロ組織であるにも拘わらず…」※1。


政府系シリア紙Al-Thawraの評論家スララ(`Ali Nasrallah)は、サウジアラビアとトルコなどテロリズムを支援している(という)諸国に対し、ヨーロッパが寛容であるからこうなった、とヨーロッパを攻撃した。最近サウジのナイフ皇太子(Muhammad bin Naif)がフランスを訪問した際、フランスのオルランド大統領はレジョン・ドヌール勲章を授与した。過激主義とテロリズムに対する制圧努力と功績に対する授与といわれるが、これについてナスララはフランス国民に「大統領が郷土の伝統を傷つけフランスの名誉と魂をワッハーブ派の連中に売り渡すようなことを許してはならない」と呼びかけ、「フランス国民は、サウジ過激主義の外衣に勲章をピン留めして、フランスの名誉を汚した科で、(大統領を)すぐ訴追すべきである…ついでにヨーロッパの議会は、(トルコの大統領)エルドアンムスリム同胞団政権に対する宥和政策の科で、政府を裁判にかけるべきである…」と主張。次のように話をすすめた。


ブリュッセルの爆発は、居眠りしているヨーロッパに対する警鐘である…このテロは、シリア人民をターゲットにし、イラク人民の血を吸い、世界各地の住民多数を殺してきたテロリズムと直結している。テロ組織がアメリカからゴーサインをうけ、西側に奨励されることがなければ、このテロリズムが拡散することはなかったであろう。アメリカを含む西側は、アルカイダ、ヌスラ戦線そしてIS(イスラム国)の力を強めるため、イスラエルをそそのかしカタールサウジアラビアそしてトルコにそのノウハウを授けさせているのである…」※2。


ヒズボラも同じ主旨のことを主張している。ブリュッセル攻撃について声明をだし、テログループを支援している地域及び国際勢力を非難した。つまり、サウジアラビアカタールのことである。更にその両国を支持している面側諸国も併せて非難し、次のように主張した。


「世界中の都市をターゲットにしているこの犯罪行為の責任は、タクフィルとその背後にいる地域及び国際勢力にある。この諸勢力が物心共にタクフィルを支えているのである。今回の攻撃は、このテログループの危険性をあらためて示すと共に、ヨーロッパを初め世界を燃焼させている火は、シリアなどこの地を焼いている火と同じである。この危機の根源とこれに金を支えているのが誰か。全世界が知っている。しかし、それにも拘わらず、列強は、テロリズムを支援し輸出している国々を引続き守っているのである」※3。


イランとアサドの責任―サウジと反アサド派の主張


一方、サウジのメディアは、サウジの敵を非難する。具体的にはイランとシリアのアサド政権である。併せてイランのテロ支援に目をつぶっているとして、西側諸国を非難する。
ブリュッセル攻撃の翌日付で、サウジの政府系新聞Al-Riyadhは論説でイランを非難し、次のように主張した。


「対テロリズム戦争は、イラクとシリアのテロリストを撲滅するだけでなく、彼等に国内の隠れ家を提供し、党派心を煽り、テロリスト民兵を支援している者も、追求する必要がある。(このテロリスト民兵は)、各派住民の間に絶えず憎悪の火を煽り、シリアとイラクが潰滅した後、両国民に過激主義をたきつけているのである。これは今でもイラクとシリアで起きている。この両国は事実上イラン所轄でコントロールされている。アメリカの資料で明らかになっているが、そのイランはアルカイダとも協力しているイランはテロ組織ヒズボラの活動をあからさまに是認している。(イランとの)対決に失敗すれば、将来この地域は難しい状況に直面し、最近イスタンブールブリュッセルを襲っているようなテロ攻撃に引き続きさらされていく」※4。


ロンドン発行サウジAl-Hayatのコラムニストであるランダ(Randa Taqi Al-Din)は、アサド政権とイラクのマリキ政権がテロ組織と協力している報告があるにも拘わらず、何年も無視してきたとして、西側を非難した。そして、このテロ組織がグローバルな脅威に増長した原因のひとつがこの無視にある、と主張するランダは、次のように書いている。


「西側特にアメリカが、今になってやっと認識したのは間違いない、目の前でマリキ政権がIS活動家達をイラクからシリアに移し、シリアのアサドは彼等を刑務所から釈放して利用した。今やISはアサドのパートナーとなり、シリア破壊を続け世界に脅威を与える存在となった」※5。


サウジアラビアカタールに支持されているシリアの反体制派も、今回のブリュッセル攻撃でシリアのアサド政権を非難し、ツィッターを利用してアラビア話で非難を開始した。「ブリュッセル攻撃はアサドの所産」と題する。シリアのアルジャジーラのアンカーであるカッセム(Faisal Al-Qassem)は、次のようにツィートしている。


「アサドのイスラム法官ハソウン(Ahmad Hassoun)が自爆隊をヨーロッパに送ると威嚇したのを、覚えているだろうか。その威嚇をアサドが実行に移し始めたのだ」※6。


シリアの芸術家マラス(Hassam Al-Din Malas)もツィートし、シリアの政権を非難し「テロリズム発進源をお忘れなのか。それとも無視しているのか?ヨーロッパ諸都市を攻撃対象にするという(イスラム法官)ハソウンの威嚇に耳を傾けよ」と呟いた。マラスはテロリズム拡散の責任はヨーロッパにあるとし、「テロリズムの成長拡散をもたらしたのはイラン。そのイランのテロリズムに褒美を与え、禁輸を解除して商取引にサインしたのだ」とヨーロッパを批判した。


エジプトの政府系メディアは、政権側にとって最大の敵であるムスリム同胞団をまず非難し、その同胞団を支持するとしてヨーロッパ諸国を批判する。エジプトの報道は、ISテロリズムを同胞団と結びつけて論じ、同胞団を受入れたヨーロッパ諸国は、結局それによって焼かれた。「何故ならば、同胞団が過激なタクフィル組織に対するイデオロギー上の温床であるからだ」と論じるのである。


例えば、エジプトの政府系新聞Al-Ahramは次のように主張している。


「この一連のテロ攻撃は、エジプトの見解の正しさを証明した。長年エジプトはヨーロッパに警告していたのである。テロリズがヨーロッパの心臓部を容赦することない。エジプトを初め中東諸国が多年テロリズムと戦ってきたが、(西側が)その戦争に目をつぶったところで、テロリズムの火が西側をやり過してくれることにはならない。我々は常日頃から、このように警告していたのである…。


長年ヨーロッパ諸国は過激な宗教集団と宥和し、その指導者達を受入れ、彼等に行動の自由と移動の自由を認めてきた。諸国は、中東における政治権益用にこの過激諸集団を使えると考え、もっと過激な集団を抑えるために使える、つまり毒を以て毒を制すという幻想にふけったのである。


しかしながら、時間がたつうちに、西側が受入れたムスリム同胞団を中心とする宗教集団は、過激なタクフィル組織のイデオロギー上の温床であることが、鮮明になってきた…このような組織がヨーロッパに存在することで、若者の勧誘が可能になったのである。過激イデオロギーに引きずりこみ、テロ攻撃の実行犯に仕立てるのが容易になったのである。


これまでエジプトは、テロリズム撲滅の国際戦略の樹立を、繰返し呼びかけてきた。過激派組織とイデオロギーに全部例外なく対応する戦略で、目下エジプトが取り組んでいるのが、これである。耳を貸す人がいるのであろうか」※7。


エジプトの評論家ファッター(Mu`ataz Bellah `Abd Al-Fattah)も、「ブリュッセルは代価を払った」と題し、エジプト紙Al-Watanで同じ主旨の主張を行なった。ヨーロッパは過激派に寛容であるツケを払わされたとし、次のように書いた。


テロリズムという樹木は、過激主義の土壌の森でしか成長しない。過激主義と戦うことなくテロリズムと戦う者は、二つの戦争に負けてしまう…このようなことをやっているのが、今のヨーロッパである。思想の自由、言論の自由、そして政治亡命者の権利等の名目のもとで彼等はそこに逃込み、受入れた諸国はその名目下で遇し、過激主義が増長していくのを許した。そして彼等はその火に焼かれているのである。


政治的テロ活動のためには、政治的イスラムの導入が必要である。しかしそれでは充分でない。それを許容する環境がなければならない。問題は、西側が過激主義を保護していることを認識しなかった点である。そして、その火で焼かれたのである。自業自得といえば酷であろうか…」※8。


西側のイスラエル擁護がグローバルテロを拡散―パレスチナ報道の主張


パレスチナ自治区の報道には、西側がイスラエルを支援するため、ブリュッセル攻撃が発生したとして、西側の責任を問う記事が含まれる。東エルサレムをベースとするパレスチナAl-Qudsは、ブリュッセル事件の翌日の論説で、イスラエルとその‘破壊的政策’を支持したので、これがグローバルなテロリズムの拡散につながったと主張、次のように書いた。


「この卑劣なテロ行為のもとをたどれば、次のところに行きつく。即ちパレスチナ人問題に関して、民主々義と人権(特定集団の)擁護者を以て任じる諸国の二重基準アメリカの盲目的親イスラエル支持に起因する。イスラエルによるパレスチナ領占領に終止符を打つ具体的行動がとれず、パレスチナ問題に関する国際決議の履行ができず、多くの国がイスラエルの破壊的政策に歯止めをかけることをしなかった。この一連の不作為が、グローバルなテロリズムを助長したのである。西側世界特にアメリカとイギリスは、発生事象だけに注目するのではなく、(テロリズムの)発生因に対応すべきである。そうしないと、ヨーロッパだけでなく全世界が脅威にさらされる。そうなったら手遅れ。安全な人はいなくなる…」※9。


[1] SANA (Syria), March 22, 2016.
[2] Al-Thawra (Syria), March 23, 2016.
[3] Alahednews.com.lb, March 22, 2016.
[4] Al-Riyadh(Saudi Arabia), March 23, 2016.
[5] Al-Hayat(London), March 23, 2016.
[6] 次を参照:MEMRI Special Dispatch No. 6236, Conspiracy Theories In Arab World Following Paris Attacks: Foreign Intelligence Agencies Planned The Attacks; ISIS Only Carried Them Ou t, December 9, 2015.
[7] Al-Ahram(Egypt), March 23, 2016.
[8] Al-Watan(Egypt), March 22, 2016.
[9] Al-Quds(Jerusalem), March 23, 2016.

(転写終)