ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

暑中お見舞い申し上げます

ご無沙汰しておりました。盛夏をいかがお過ごしでしょうか。

まずは、2015年7月5日の記録から。ちょうど一ヶ月前のことになる。

http://ikeuchisatoshi.com/


「帰国しました:中東諸国のリスク」


・10日間ほど、アラブ首長国連邦で資料収集に没頭していましたので、ブログの更新が減っていました。
・現地調査は、次の次の次ぐらいに取り組んで成果を出す課題について、今のうちに見て、考えて、調べるために行うものですから、すぐにどうだったこうだったとブログに書くことはありません。ただいま資料を整理し、消化中です。
・あくまでも副産物ですので、調査の本体は論文や本になります。
・今回の渡航先を選ぶ際には、クウェートチュニジアを真剣に検討した上で、リスク懸念からやめておきました。
アラブ諸国で行けるところがどんどんなくなってしまいますね。
・現状ではアラブ首長国連邦オマーンとモロッコが、残された数少ない安心できる場所といえるでしょうか。ヨルダンは目立ったテロ事件は最近起きていませんが、台風の目の中に入ると風が止む、といった状態です。

(部分引用終)

同国人の言うことは、過去の経緯から常識的に判断できるし、気になったことでも調べる手段が確立しているので、安心でき、信頼できる。
この分野で池内恵先生がいてくださって、本当にありがたい。

このところ、予想外の出来事が発生したために、8年以上前に始めたブログを、二ヶ月以上も英日共に休んできた。いろいろと考えるところがあってのことだ。
直接的な原因は、5月31日の午後、突然メール機能がパンクして、修理に予想以上の時間がかかってしまったこと。今の最新版パソコンに変えた約二年前に接続がうまくいかなかったことが原因なのか(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130929)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20131011)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20131107)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140207)、実は通奏低音のように時折、故障が浮上していたが、毎日の課題に追われているうちに、なかなか処置できずにいた。
ついに、気になっていた1998年からの蓄積メールなども、年別の送受信の各アーカイブ・フォルダどころか、フォルダそのものが壊れてしまい、年月も本文もぐしゃぐしゃになってしまっていたことが判明。フォルダに整理してあったワード文書なども、開いてみると見事に破壊されていた。ウィルス対策は万全にしてあったつもりだったのだが、どうやら、メール不全をきっかけに、一件早急につぶさなければならないウィルスが侵入していたようだった。バックアップは取ってあったものの、作業がそれほど楽でもなかった上、この前後の最新情報は見事に省略されてしまっていた。
おかげさまで、突然、予定が全体的に狂ってしまった。これほど苛立たしいことはなかった。

そもそも、メーリングリストが急増したことがきっかけでパンクしたので、次々と押し寄せるメール受信の空間を作るために、早めに処理をしたつもりだった。特に、ある期間が二重、三重、あるいは四重にもメッセージが重なって受信されていたので、それも部分削除をしていた。続きを翌日に、と思ったら、何とその翌日には、重複メールにつながっていたオリジナル・メール全体が消えてしまっていたのだった!
一旦まとめて大量にごみ箱に移したメールも、大切なメールに間違いが起こらないよう、再度確認してから消去しようと慎重に扱っていたのに、ちょっとした手加減でマウスが少し横に動いた途端、本文が全部消えてしまった。実は、それは大切なメーリングリストで、おかげさまで2014年分の大半が一瞬のうちに消滅したことになる。
仕方なく、サーバーから過去のものも全部取り寄せて、再度設定をし直そうとしたのだが、これまた、データ量が予想以上に大きくて一日では終わらず、次々とソフトを準備するはめになってしまった。もう目が疲れたのでスイッチを消して翌日にしようと思う度に、今度はパソコンそのものが何度も機能不全を起こす。そうこうするうちに、ワード文書どころか、せっかく時間をかけて整えたはずの調査および旅行の写真やビデオ映像やクラシック音楽の保存まで、記載項目も含めて奇妙なことになってしまっていた。一番こたえたのが、やはり研究目的で長年コツコツと集めてきた資料や、三年前から少しずつ手掛けてあった訳文文書などさえ、次々に壊れていったのを見た時だった。

そのため、学会宛の文書なども、やむを得ずキャンセルせざるを得なくなってしまった。第一、文書が開けず、メール機能そのものが壊れてしまったのだから、どうにもならない。また、6月の学会出席も、行く予定ではいたのだが、どっと疲労感が出て、それどころではなくなってしまった。

目も頭も茫然と疲れるので、定期的に休む時間が必要。ノートパソコンやiPadiPhoneも手元にあるが、本体のデスクトップ・コンピュータが壊れると、メールもワード文書も限りなく煩雑になってしまう。つまり、手軽で便利なiPadiPhoneは、デスク上のコンピュータとの完全な相互互換性がないというのか、ノートには残っていたメールが、iPhoneでは部分的に喪失しているなど、総合的な信頼のおける保存検索機能が成り立っていなかったのだった。

今も実は整理は続いているのだが、2012年3月からの突然の訳業によって、従来からしておきたかった自分のリサーチの整理なども、ほとんどなおざりになってしまっていたことに改めて気づき、愕然とした。

私は一体全体、これまで何をしてきたのだろうか?

英語でメールをここまで書くならば、もっと実入りのいい公的な文章が書けたはずなのに、即座に自分なりの感想を短い文章にまとめて相手に伝えたい習性が抜け切れず、今から振り返ると、どうでもいい細かなことにもこだわって質問をしたり応答したりしていた自分を見出す。

もちろん、消耗品のパソコンに全幅の信頼を置いていたわけではなく、いつ壊れても慌てないようにと、昔から、重要だと思ったメールは、時間と紙資源がもったいないようでも逐一印刷して保存していた。アナログとの併用が最も記憶を助け、いざという時にも役立つだろうと期待してのことだった。
しかし、ここまで積み重なると、紙印刷の資料も探し出すだけで一苦労だし、その整理もたまったままだったのだった。

ITのみの情報拡散の危険性と、テンポの速さと量産は、基本的に私には向いていない。最初はよくても、いつまでもこの調子では、という不安感があった。フェイスブックツィッターなどは、便利だが実は苟且という感じがある。

そんなこんなで、鬱屈した気分を抱えながら、パソコンのデータ修理の合間、目を休めるために、英語と日本語で積読本を読み漁っていた。特に、2009年から2013年まで駐米イスラエル大使を務められたマイケル・オーレン氏の三冊のベストセラー本は秀逸。

https://twitter.com/ituna4011

1. Lily2 ‏@ituna4011
“Ally: My Journey Across the American-Israeli Divide” by Michael B. Oren.(http://www.amazon.com/dp/0812996410/ref=cm_sw_r_tw_dp_03zWvb1RPPM2V …).
2. Lily2 ‏@ituna4011
“Power, Faith, and Fantasy: America in the Middle East: 1776 to the Present”by Michael Oren.(http://www.amazon.com/dp/0393330303/ref=cm_sw_r_tw_dp_r3zWvb0N2136F …).
3. Lily2 ‏@ituna4011
“Six Days of War: June 1967 and the Making of the Modern Middle East”by Michael Oren.(http://www.amazon.com/dp/0345461924/ref=cm_sw_r_tw_dp_f2zWvb1MY6AT0 …).

(転載終)

歴史家だというだけあって、公文書リサーチも要人とのインタビューもきっちりなされており、学生アシスタントを含めた大勢の方々に謝辞も忘れていない。同じ中東や米国外交関係がテーマであっても、アメリカ生まれでアメリカ東部に育ちながらも、若くしてイスラエルに帰還(アリヤー)して従軍したイスラエル国籍の方の歴史物は、大変説得力に富み、その意味で読みやすい。また、奥様の姉妹の一人を自爆テロで失っていることもあり、家族思いでバランスの取れた人柄も、好感が持てる。一見、飄々とした風格だが、内面は厳しい人生を耐え抜いてきた枯淡の感がある。

それに、そういうものを読むことで、パソコン故障による突然の中断期間に、ただ前進あるのみならず、これまで無我夢中になって取り組んだことは一体何だったのか、思いがけず振り返るよすがともなったのだと思う。それにしても、中東は重苦しい。イスラーム主義運動も、何とか先が見えないものかと思い、陰鬱である。

今から回顧しても、今年4月下旬から5月上旬にかけてのイスラエル旅行は有意義だった。今ならば、あの地域は40度から49度ぐらいの熱気だろう。乾燥した空気の天候に恵まれた時期に訪問できて幸いだった。ポイントは、この意味をどう考えるかだ。先方のリズムや戦略に乗せられるばかりが能ではない。第一、同盟国とはいえ、国や文化が違うのだから、私が合わせられる点は限定されている。

「変化の早い、競争的な社会では流行らないかもしれませんが、今でも私は、真面目な本をきちんと読むことが、適切な判断を下すために必要だと考えています」「ウェブサイトは過去の検索に便利ですが、日本では今でも、紙媒体の本に残す方が重要だと考えられています」と申し出て、6月から今まで、訳文提出は休ませてもらっている。

実はその間に、とんでもない暴露本を見てしまった。私が探し出したのではなく、先方が自ら墓穴を掘っているのだ。正々堂々と追記に掲載されている本なのだが、解釈が強引というのか、実際には全体としてそのような褒め言葉は書いていないのに、あたかも自分のビジョンに賛同しているかのような、都合よく部分的で一方的な引用の提示であった。その本の著者は、私の母校も含めて来日講演が多く、専門以外にも日本研究も幾つか企画されていた昔の元同僚(オランダ系アメリカ人)である。

細かい部分の不正確さはあったとしても、二十二年前の体験を、メモや備忘録などを頼りに、概ね(少なくとも筆者の目に見えた)事実に基づいて綴ったのであろう。数多くの批判は従来から承知の上だったが、単なるイデオロギー見解の相違のみならず、なぜ仲間内からも人間関係上のトラブルが頻繁に発生するのかを知っておくことは、私のような門外漢にとって、非常に重要だったのだ。事実、過去の打ち明け話を読むことによって、業務展開の表向きの話(1993年のオスロ合意(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130918)に不備を見出したための組織設立)と内実(前勤務地での不祥事、すなわち赤字発生による財政破綻と人間関係上のトラブル頻発により辞任させられたこと)との乖離が浮かび上がってきた。

昨年も今年もわざわざ出かけて行ったのは(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140508)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140509)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140510)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140511)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150511)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150512)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150513)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150514)、まずは好奇心余ってのことだが、要するにそこを確認したかったからである。依頼された以上、責任感が先立ってやってきたものの、疑念は誰もが抱くところだ。いくら自分の思うように世の中を動員したいと思っていても、やり方が問題だ。
恐らく、東京の外交専門家や中東学者は、昔からご存じのこともあったのだろう。私は地方在住者で、専門も違っていて、一般人だったので、知るのが遅れたまでだ。
いくら役職が上であっても経歴が立派であっても、もし全体の流れとしてほぼ記述通りならば、その行為は、今で言うアカハラモラハラパワハラである。イデオロギーや能力の問題ではない。
本書の存在を知ったのは、実は6月下旬のこと。本当に、偶然にしては出来過ぎで、ふと気になったので見てみたところ、新たに追記が挿入されていたので知った次第。もちろん、電子版で読んだ後は、メモを取り、紙媒体の本も入手して、二度読み直した。
読むのは簡単だったが、何だか急に目が覚めたような、太平洋を隔てて曖昧模糊と伏せられていた部分は単に勘違いによる齟齬だったという自覚がようやく芽生えたというのか、落胆と失意が襲ってきた。

パソコンが壊れた5月31日から8月1日までに入手し、ほぼ読み終えた日英本の各種を。

https://twitter.com/ituna4011


1. Lily2 ‏@ituna4011
ネオコンの標的―日本の命運を左右する米国新保守主義の牙!』 宮崎 正弘 ( http://www.amazon.co.jp/dp/4576031279/ref=cm_sw_r_tw_dp_JbCWvb1ARBV33 …) イラク戦争の戦後処理の失敗の手前で終わっている妙に楽観的な本。イスラーム過激派の言及が不足している。
2. Lily2 ‏@ituna4011
"Mitrokhin Archive: The Kgb In Europe And The West" by Christopher Andrew ( http://www.amazon.co.jp/dp/0140284877/ref=cm_sw_r_tw_dp_MaCWvb1KMSK72 …)
3. Lily2 ‏@ituna4011
"Think Tanks and Foreign Policy: The Foreign Policy Research Institute and P..." ( http://www.amazon.co.jp/dp/0739141635/ref=cm_sw_r_tw_dp_B-BWvb02TVEZ7 …) 地味だが、なかなか楽しく、かつ恐ろしい暴露本。是非お目通しを。
4. Lily2 ‏@ituna4011
近衛文麿の戦争責任』 中川 八洋 (http://www.amazon.co.jp/dp/4569791166/ref=cm_sw_r_tw_dp_U8BWvb017FT1N …) 著者の経歴は立派だが、考え方に単純な決めつけが顕著では?松本重治も共産主義者とは言えず。
5. Lily2 ‏@ituna4011
"The Mitrokhin Archive II: The KGB and the World" by Christopher Andrew ( http://www.amazon.co.jp/dp/0713993596/ref=cm_sw_r_tw_dp_47BWvb0V26RNQ …)
6. Lily2 ‏@ituna4011
"The World Was Going Our Way: The KGB and the Battle for the the Third World..." ( http://www.amazon.co.jp/dp/0465003133/ref=cm_sw_r_tw_dp_-6BWvb1MR97X0 …)
7. Lily2 ‏@ituna4011
"Nothing Abides: Perspectives on the Middle East and Islam" by Daniel Pipeshttp://www.amazon.co.jp/dp/1412856833/ref=cm_sw_r_tw_dp_g6BWvb1ANEJQW …)
8. Lily2 ‏@ituna4011
楽聖ベートーヴェンの誕生―近代国家がもとめた音楽 (平凡社選書) 西原 稔 ( http://www.amazon.co.jp/dp/4582842062/ref=cm_sw_r_tw_dp_B5BWvb1VE1FEM …)
9. Lily2 ‏@ituna4011
『日英の間で―ヒュー・コータッツィ回顧録』 ヒュー コータッツィ (著)松村耕輔(訳)( http://www.amazon.co.jp/dp/453216284X/ref=cm_sw_r_tw_dp_93BWvb04S5QR2 …)

(転載終)
後記:上記リスト中、5と6の本は、体裁が異なっているが、内容はほぼ同一である。