ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

身勝手な断罪の末に

リチャード・パイプス先生は(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141007)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141008)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141024)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141028)、91歳とは思えないほど、意気軒昂。

http://www.thenews.pl/1/6/Artykul/186048,Richard-Pipes-on-Ukraine


Richard Pipes on Ukraine PR dla Zagranicy Peter Gentle 31.10.2014 17:26

Richard Pipes, the Polish-born American academic who served under President Reagan on the national Security Council talks to Polish Radio's English Section about the Ukraine crisis. “Ukraine, although culturally it has centuries behind it, is really a young country without much experience in politics,” richard Pipes (sic) tells our reporter Slawek szefs.

たった今、グーグル・アラートでポーランド・ラジオ放送でのインタビュー映像が届き、びっくり仰天。
https://www.youtube.com/watch?v=PCo7NvVdiow)(8分40秒)

2014/10/31 公開
(The News: http://www.thenews.pl/


Challenges facing the new parliament in Kyiv, the Kremlin’s position on pro-European aspirations of Ukraine and Poland’s role in championing the Ukrainian cause… Slawek Szefs of Polish Radio’s English Section talks to Professor Richard Pipes – a Polish-American academic, longtime lecturer at Harvard University specializing in Russian affairs and former National Security Council member under President Ronald Reagan.

お声が若々しく、相手の心情に煩わされず、ストレートな物言いは、昔と全然変わっていない。むしろ、長い経験に裏付けられた深い自信を湛えて、ますます柔和に、温かい雰囲気が醸し出されるようになった。

数日前には、このパイプス教授がご子息のダニエル先生に、私について幾つか質問されたということも(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141029)、とても信じられない。
つくづく、今まで私は一体何をやって来たのか、間違った場所に長らく居続けたのではないかと思ってしまう。周囲に慮り過ぎて、言うべきことがたくさんあっても、遠慮ばかりしてきたつけが、ここにある。
しかし、随分とはっきりおっしゃるんですねぇ。ウクライナは若くて政治的に未成熟だ、と。相当、ロシアに恨みがあるんでしょうか?チャイコフスキーの「小ロシア」の曲を(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071120)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071121)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071226)、もちろんご存じですよねぇ?

(後注:http://ricochet.com/podcasts/the-growling-bear/
Need To Know with Mona Charen and Jay Nordlinger
Episode 67: The Growling Bear
Guest: Professor Richard Pipes, the historian of Russia (and national-security official in the Reagan administration)
Mar 8, 2014
1:05

Mona and Jay’s guest this week is Professor Richard Pipes, the historian of Russia (and national-security official in the Reagan administration). His subjects are Russia, Ukraine, Putin, Obama—and some others as well. He is one of the leading scholars of our time. Then, Mona and Jay take up yet more subjects: national greatness, and the question of honor; America’s energy revolution; charter schools, and a fissure on the left; Lincoln and Churchill, as a pair; the abominable Harry Reid; the interesting Maria von Trapp (daughter, not governess); etc.
The concluding music is from Tchaikovsky’s Symphony No. 2, the “Little Russian.” As Jay has explained many times in print, the nickname does not refer to a short Muscovite; it refers to Ukraine.

面白いのは、「我々アメリカ合衆国にいる者はもっと攻撃的であり得るが、ポーランドは気をつけて」と注意を促し、「ポーランドはロシアの隣国だから、(ウクライナ問題で、ポーランドが果たす役割については)極めて気をつけなければならない」「スラブ人は正教会でなければならないとロシア人は思っているが、ポーランド人はカトリックなので」と、以前のご著書でも書かれていたことを繰り返されたこと。ロシアは西側の敵と見なされているようだ。ナチのために十代半ばにポーランドを去って、アメリカで高い地位を築き上げても、ポーランドを忘れずに、共産党を倒し、きちんと市民権を回復し、幾つか名誉博士号を授与され、今でも助言を仰がれている存在でいらっしゃる。
昨晩から今日の午前中にかけて、昨日届いた"Property and Freedom"を読んでいた(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141031)。これは、奥様、つまりダニエル先生のお母様に献げられたもので、「50年以上、理想的な学究の場を作り出してくれた」ことへの謝辞である。
所有権と自由の問題が、古代からの重要な哲学思想と歴史的な経緯の考察に基づいて、具体的にストレートに書かれている。
恐らく、ナチ・ドイツの侵攻によって、ポーランドでの私有財産の大半や所有権をほぼ放棄してアメリカに渡って来られた、ユダヤ系ならではの切実なテーマなのだろう。また、ロシア史の専門家として、共産ソヴィエトが何を実際に行ってきたのかをまざまざとご存じなだけに、淡々と書かれているものの、非常に説得力がある。それだけではない。1960年代以降のアメリカの民主党の主張および実践の問題点や、リベラル派の欺瞞や矛盾が、率直に突かれている。
日本に暮らす日本人としての私にとっては常識的な話だと思うが、どうも西洋の知の中には、逆行する哲学思想が形を変えて次々と生み出され、そのまま日本に入ってしまう傾向がある。その点、このような本をもっと若い時から読んでいれば、自信を持って変な思想を振りまく人に反論できたのに、とも思う。事実、今の日本の停滞、いわゆる「失われた二十年」の原因は、この種の混乱した思想に根付いていることが、本書を読むとよくわかる。
例えば、日本の思想系出版物でもっともらしく延々と論じられていることが、パイプス親子先生やお仲間学者達の著述を見ると、もちろん引用があり、とうの昔に検討されているばかりか、あっさりと批判され、矛盾を突かれ、超越されていることもある。つまり、日本では威厳を持って語られていても、当事者の共同体では、既に終わっている話題でもあるのだ。まるで幕末の蘭学だ。
パイプス親子先生を、狭く身勝手なイデオロギーだけで断罪し、拒絶してきたつけが、このように現れているのではないだろうか。
今晩は、ズービン・メータ指揮のイスラエル・フィルを聴きに行く。随分前から公演情報を知っていてギリギリまで迷ったが、一期一会のチャンスだと思った途端に、見事に楽にいいチケットが入手できて幸いだった。