ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

ローマ教皇に関する講演会

昨日は、前駐ヴァチカン大使の上野景文氏によるローマ教皇に関する講演会へ行きました。
葉書案内のタイトルには「ローマ法王」となっていましたが、そのことからも察せられるように、「特定の信仰に立つ者ではない」と公言される外交官としての40年間のご体験が、如実に反映されていました。
プロジェクターで要点を的確にまとめられ、取ったノートは8ページに及んでしまいましたが、全体として、とても聞きやすいお話だったと思います。とはいえ、2000年前後に、マレーシアのカトリック大司教に表敬訪問したことがきっかけで、その後、カトリック月刊誌やカトリック新聞を、毎月毎週送ってもらい、ベネディクト16世の『霊的講話集』を2005年から2009年まで買って読んだ者としては(参照:2007年12月21日・2008年6月16日・2008年12月28日・2009年1月2日付「ユーリの部屋」)、新しく知る項目は特にありませんでした。
日本では、カトリック人口がプロテスタント人口よりも若干少ないことをいいことに(?)、批判の名の下に、平気で中途半端な悪口を公の場で書いたり言ったりする人があります。しかし、世界に及ぼすヴァチカンの権威ないしは影響力は、いくら世俗化した現代とはいえ、それは表面的、一面的な観察に過ぎず、決して無視できないものである、とご講演でもうかがいました。
緒方貞子先生も、何年か前のテレビ番組で、「ヴァチカンには、世界中のありとあらゆる情報が集まっている」とおっしゃっていました。良くも悪くも、世界史における経験の蓄積があるため、ヴァチカンを敵に回して得することは何もないだろう、というのが私の意見です。
マレーシアの場合、第一代および第三代のクアラルンプール大司教は、国王から‘Tan Sri’という称号を付与されています。このように、少なくとも形式面では、カトリックの長を立てておくのが、マレーシアのやり方です。その一方で、毎年、大司教、司教、司祭、修道女達が、ヴァチカン詣でと報告書提出を行い、イスラーム化の進展に伴うカトリック共同体への影響がローマに通達されているというわけです。
マレーシアのカトリック雑誌や新聞を見ているだけでも、教皇がどのような勅令や指示や政治的倫理的見解を細かく出しているか、さながらダイジェスト版のように知ることができます。当然、構成する民族に配慮して、中国やインドの情勢、そしてイスラーム圏内のクリスチャンの様子も、逐次、報道されています。こういうニュースは、日本の全国紙でさえ掲載されることが限られているため、私にとっては役に立っています。