ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

電子版古書の時代にあっても

しばらくお休みをしていました。別に、エイプリル・フールでふざけたのではありません。
2009年10月にシンガポールとマレーシアで購入した最新の研究書を何冊か読み、その誠実で細かい注釈と引用に感激し、励ましを得たと同時に、これからの自分の勉強をどう進めていくかについて、案を練っていたのです。
やはり、丁寧で地道な研究作業こそが物をいうのだなあ、と改めて思いました。遠回りのようでも、しっかりした文献を読むと、我が意を得たり、と感じます。そういうものこそ、後世に残る仕事と呼べるのではないでしょうか。
昨晩は、自分のテーマに関して、1800年代の電子版古書をグーグルでリスト化(非公開の本棚作り)をしていました。これにより、資料閲覧のために英国に直接出かける前に、自宅で作業がかなり済ませられます。もちろん、英国へも久しぶりに再訪してみたいとは思っていますが。英語だけではなく、同じテーマでドイツ語文献もあります。髭文字との久しぶりの格闘を楽しみました。やはり、若い時には、何事も貪欲に勉強しておくものだなあ、と我ながらうれしくなりました。
以前なら、この種の文献資料は、本当の専門家が苦労して集めるか、その下の世代では、科研費を取得して、堂々と自慢げに披露していたものです。しかし、このように手軽に自宅で閲覧できる資料が増えたとなれば、後はいかにアイデアを組み合わせて資料を読み込んでいくかが勝負となります。海外にわざわざ行かなくても、自宅のリビングダイニングにあるパソコンで資料を見ることができるのですから。よい時代になったと同時に、情報の波とどのように対処するか、が問題ですね。資料を読み込む時間が必要となるので、いい加減なことを肩書きに任せてパッパと喋って済むやり方では、通用しなくなるでしょう。
もっとも、文献だけではなく、フィールドワークも不可欠です。ただ、年齢と共に、若い頃のような動きはできにくくなるため、文献研究でも通るようなテーマを選択することが重要かと思われます。
学部時代の指導教授だった先生から(参照:2008年2月20日・2009年12月22日付「ユーリの部屋」)、源氏物語「蛍の巻」の物語論と「本居宣長の仮名遣と歌学・古学」という二つのテーマに関する抜刷二本を送っていただきました。80代半ばまで、なお精力的に年に数回は論文発表をされていた先生。私のことも、よく覚えていてくださって、これぞ本当の恩師とありがたく思います。
すっかり分野を離れて久しいために、読むのに多少苦労しましたが、先生のように、厳しい学的判断のもと、奇を衒う事なき、堅実で息の長い勉強を続けられたならば、不肖の指導生として、確かに学恩に預かることのできた証ではないかと思うのです。