ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

お前たちの中に蛇や蝮を送る

昨晩、NHK教育テレビで、故河合隼雄氏の追悼番組「文化共存への道」(2005年正月の再放送)を放映するというので、時々うつらうつらしそうになりながら、眠いのを我慢して、頑張って見ていました。
4人の文化人と河合隼雄氏が対談するという形式でした。最初のフランス人は、故ミッテラン元大統領のアドヴァイザーか何かをしていらした方のようでした。二番目の李御寧氏は、1990年代半ば頃だったかに神戸大学主催のフォーラムで肉声をお聞きしたことがありますが、一部に、何やら日本の茶道をけなすような発言があって、いささか興ざめだったのを思い出しました。最後の山崎正和氏との対談もおもしろく思いましたが、三番目の山折哲雄氏が登場された時、一番目が覚めました。
画面で拝見していても、河合隼雄氏、当時からどこかお疲れのようでした。数日前のブログ日記にも書きましたが(「京都と大阪と…」)、心理学者は心理学者としての務めを果たすのが、もっともご自身として輝くのではと改めて思った次第です。その点、95歳の日野原重明先生は、使命感に燃えて、今も超人的なパワーで活動されていますよね。

山折哲雄氏は、2006年3月15日に、同志社大学礼拝堂での公開シンポジウムで、講演者として来られたことがあります。その時は大盛会で、同志社キリスト教主義でしかも神学部主催ということもあってか、かなりキリスト教批判のトーンが下がっていたように思います。

ところで、その山折先生ですが、テレビ番組という媒介を通じて、なんと聖書の引用をお間違えになったのです!イラク戦争だったか湾岸戦争だったか、とにかく中東に多国籍軍が派遣された時、恐らくアメリカの誰かがしたのだろうと思いますが「わたしはお前たちの中に蛇や蝮を送る」という句が兵士達に配布されていた、というエピソードを語られていました。眠かったので前後の詳細がうろ覚えなのですが、その聖書のことばの箇所だけはパッと目が開いたので、ある程度は確実なのではなかろうかと思います。(繰り返しますが、眠くて眠くてメモすら取らずに見ていたので、怪しいかもしれません。)
山折先生は「これは『詩編』からの引用なんですね。しかし『』が書かれたのは、昔の話ですよね?相手を蛇や蝮だと見なすなんて…」などという表現で暗にキリスト教批判を展開。いくら眠くても、その句そのものを知っていた私は、それを聞きながら「え?『』にそんな言葉、書いてあったっけ?」とどうしても腑に落ちなかったのです。ところが、その下りで、河合隼雄氏の方も、余裕たっぷりに微笑みながら、自信あり気に相槌ちを打っていらっしゃったのですね。ますます「あれ?先生方、本当に聖書をお読みなんでしょうか?」と不思議に思ったのです。『詩編』は、古今東西、最も愛読され、日本の聖書学でも最も研究されている領域の一つです。まさか公共の電波を使って、これほどの大先生達が「文化共存」をテーマに、お間違えになるなんて、ねぇ?

あまりにも眠くて、番組終了後はそのまま寝てしまいましたが、今朝さっそく、聖書を開いて調べてみました。やっぱり!『エレミヤ書』じゃないですか!
わたしはお前たちの中に蛇や蝮を送る。彼らにはどのような呪文も役に立たない。彼らはお前たちをかむ、と主は言われる。」(日本聖書協会新共同訳』1998年「エレミヤ書8章17節

山折先生、宗教学者を名乗るなら、また、テレビでお話になるなら、事前に聖書を確認しておいた方が無難じゃないでしょうか。だって、ちょっと恥ずかしい…。いえ、聞いている方が、ですよ。あるいは、NHKのスタッフの誰も気づかなかったのでしょうか。再放送ということは、少なくとも(これでよし)と合格印が出たからこそではないかと思うのですが、それにしても誰一人、投書一つ寄こさなかったのでしょうか?テロップで修正を出すということもなかったし...。

うーん、私にはよくわかりません。多分、眠すぎて私がどこかで間違えて聞いたのでしょう。そう思いたいです。だって、あまりにも、これじゃあ…。