ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

イスラームとキリスト教

この対談は、複数の写真入りなので、実際にサシで向かい合って語り合ったのであろう。
構成編集されてはいるが、当初の議題は「なぜ、戦後日本でイスラームキリスト教がうまく根付かなかったのか」だったはずなのに、どんどん話が逸れていき、最後は治安維持法の再検討と歴史勉強の必要性という風にすり替わっているところが、何ともおもしろい。
佐藤優氏は(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%BA%B4%C6%A3%CD%A5)、いつの間に小話を頭に蓄えて、あちこちで書いたり話したりできるのだろうか?対談の途中で、勘違いや事実ミスに気づくことはないのだろうか?
私が過去に講演を何度か聞いた限りでは、話題が重複していることが多かったが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20101013)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160414)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170205)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170206)、それは一種の内輪意識と多忙による準備不足に基づくものかと考えていた。
高尚な話をしているところで、突然、喩えが卑近な形而下に変化する点も、何だか笑いを誘う。

https://ironna.jp/article/10286


『月刊Wedge』 2017/07/31


イスラム教もキリスト教も、なぜ戦後日本でうまく根付かなかったのか」



佐藤優(作家・元外務省主任分析官)×出口治明ライフネット生命創業者)
構成/菅 聖子


・佐藤:端的に言うと、死ぬからですよね。死んだ先のことがわからないから。でも、もっと重要なのは、近代に生きている人間は、宗教とは自覚していなくても、みんな宗教を信じていると思うんです。
・佐藤:戦前において、「国家神道」つまり伊勢神道は宗教ではありませんでした。日本臣民の慣習だった。だからみんなが神社に行かないといけないし、お札も取らなきゃいけない。そういう感じで事実上の国教にしちゃったわけです。そういう伝統的国家神道とか、拝金教とか、出世教とか、受験教が、日本にはうわ〜っと浸透している感じがするんですよね。
・出口:「戦後の日本で、なぜキリスト教が広がらなかったんですか?」という質問を受けたことがあります。僕は「戦後は、イスラム教も仏教もそんなに広がっていません。生活が豊かになって、普通にごはんが食べられるようになった。現世のいろいろな楽しいことがあるから、宗教はあまり流行らなかったんじゃないですか」と、いいかげんに答えた記憶があります。

・佐藤:イスラム教もキリスト教も、戦後の日本でうまく根付かなかったのは、商売につながらないからですよ。実は、明治時代は結構イスラム教徒が多かったんです。なぜならイスラム教徒にはイスラム金融が使えたから。利息とか関係ないんです。私はいろいろな宗教を見てきましたが、ある程度ビジネスと相性のよい宗教じゃないと残らないんですよね。
・佐藤:もう一つの理由は、薩長土肥の中でエリートになれなかった青年たちが、明治維新のときにキリスト教に行っているんです。能力はあっても薩長でなければ、軍でも官僚でも出世しない。新島襄にしても、植村正久にしても、みんな佐幕派なんです。
・佐藤:だから、今の日本のキリスト教は根付かないと同時に、政府に対してちょっと後ろ向きの姿勢を取る。左翼と右翼というよりも、明治維新の恨みがあるわけです。
・佐藤:キリスト教の教義では、神様が一人のはずなんだけど、一方で「父なる神」と「子」と「聖霊なる神」の3つである、というね。
・佐藤:そうでしょう。それから、イエス・キリストが、人間なのか神なのかもよくわからない。真の神と真の人。教義の根本のところが、ものすごくいいかげんなんですよ。
・出口:僕はよく「数字、ファクト、ロジック」と言っているのですが、データに基づいて科学的な判断をしたほうが、長い目で見ると勝つと思っています。
・佐藤:高校の化学レベルの話ですが、サリンは熱に弱いんです。生物兵器もそうですが、高熱に弱いんですよね。サリンを大量に作って弾道ミサイルにつけたとしても、着弾したときには全く無力化しているはずなんですよ。
佐藤:でもこれは高校レベルまでの化学の知識がいかに重要かってことなんです。
佐藤:シリア問題では、アサド政権の空爆サリンが使用されたと言われています。おそらくアメリカでは、耐熱性のサリンができているのではないかという仮説を持っているんじゃないでしょうか。
佐藤:リテラシーの大切さでいえば、小保方晴子さんの件です。これは、なぜ理研の人たちが騙されたかという話ともつながってきます。重要なのは、錬金術に関する知識学なんですよ。古代ギリシアっていうのは、観察がすごく重要だったんですよね。
佐藤:アリストテレスの著作で、岩波文庫に入らないような雑品集があるんですよ。
佐藤:つまりこれは、「みんなは金属の変化のほうに注目しているけれど、そうじゃない。心理を変化させる技法だ」というんです。研究室にいる人が、錬金術師を全面的に信用した場合、「ほら鉛が金になったよ」と言ったら、その部屋にいる人はみんな信用しちゃうんですよ。これ、小保方さんで起きたことと同じですよね。錬金術師的な才能を持っていると、狭い集団の中で磁場を変化させられますから。
出口:元のテーマに戻ると、僕はキリスト教が世界に広がったのは、寄生階級を組織化していたからではないかと思っているんです。
出口:キリスト教は、ローマ教皇から始まり、寄生階級をたくさん抱え込んでいる。そうするとお布施がなかったら生きていけません。たとえばルターの改革で、ドイツや北ヨーロッパを失ったら、どこかを取り戻さないと自分たちが生きていけない。
佐藤:その通りです。取り戻すため、拡大しようとした一つが日本だった。宗教改革がなければ、ザビエルが日本に来ることはなかったですからね。
出口:要するにどんどん領土を広げなければ、ごはんが食べられないという構造があったから、世界宗教になったのではないかと。
佐藤:その要素は確かにありますね。帝国主義と結びつくことができたのが、キリスト教が広がった大きな理由でしょうね。あと、カトリック教会は厳しい独身制を敷いていますよね。独身制を敷くというのは、基本、権力があるということなんです。
出口:キリスト教はお金もあって、国家権力もあったから。
佐藤:意外と知られていないのは、宗教改革が起きたのはドイツですが、ドイツのルター派の牧師は、今も基本的に公務員です。ドイツには教会税というのもある。だから最近は無宗教だと申告する人が多いようです。教会税を取られないために。
佐藤:それから、ドイツ連邦の文部大臣って聞いたことないでしょう?
佐藤:実は、連邦に教育関連の大臣はいないんです。
佐藤:州の教育大臣っていうのは、牧師出身者や神学出身者が多いんですよ。たとえばメルケルも牧師の子で、ガウク前大統領も牧師。ガウクは現職の牧師でした。国家と宗教がものすごく近いんです。
佐藤:そこが白人社会だから。白人で、ドイツ語しかしゃべらない。移民がいない場所なんです。そこに来て、みんななんとなくホッとしている。ここに本来のドイツがあるんだ、と。ちょっと危ない要素が入っているんです。
出口:ここまでキリスト教のお話をうかがってきましたが、次はイスラム教のことをお聞きしたいと思います。イスラム教は一般にわかりにくいと言われていますが、教義はキリスト教と同じですよね。
佐藤:同じところと、違うところがあります。とりあえず日本では、一神教で手っ取り早くわかるのはキリスト教です。だから、イスラム教を理解するためには、キリスト教に関する標準的な知識があるといい。イスラム教独特のものと言われても、実はキリスト教も同じ部分がたくさんあるから。
出口:イスラム教はキリスト教のどのグループと似ているのでしょうか。
佐藤:カルヴァン派です。生まれる前に神様から選ばれる人たちと、選ばれない人たちが決まっているという考え方(二重予定説)があります。
佐藤:ええ。長老派です。20世紀以降、アメリカの大統領でカルヴァン派は3人しかいません。ウィルソン、アイゼンハワー、そしてトランプ。この3人は特徴がありますね。たとえばウィルソンだったら、国民に「何やってるの?」と思われながら、「神様から言われたからやっている」という思いで国際連盟を作りました。結局アメリカ議会の反対で加盟できなかったんですが、そういうエネルギーはカルヴァン派特有です。
佐藤:アイゼンハワーも、ノルマンディー上陸作戦なんて周囲はやらないほうがいいと思っていましたからね。それが、彼のものすごく強いイニシアティブで実現したわけです。
佐藤:ええ。だからトランプを理解するには、彼自身が「自分は神によって選ばれている」という理想を持っていることを知ること。
出口:何かを信じている人とは、なかなか普通の話ができないですよね。
佐藤:もう一つ、クリスチャン・シオニズムという考え方があります。ユダヤ教キリスト教はヨーロッパでは仲が悪いんですが、アメリカでは仲がいいんですよ。イスラエルというのは、選ばれた人によってできた国であると、聖書に書いてある。この世の終わりに最後の審判が起きて、みんなが楽園に入る前にイスラエルが現れる、と。
佐藤:同時にわれわれが作ったアメリカも、同じような国だ。だからイスラエルを支持しよう。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10242
出口:日本人はよく、宗教に対する認識が低いとか、他の国とは違うと言われていますね。
佐藤:宗教がないというのであれば、文化庁の統計を見たほうがいい。
出口:1億8000万人。
出口:2億数千万人だったはずです。
佐藤:日本人が無宗教とか言ってはダメですよね。あと、宗教法人法で税金をとらないのが大きい。仮に税金取るとなったら、どの団体も過少申告するでしょう。
佐藤:最初に「神道は宗教にあらず」と言いましたが、見えないところに神道的なメンタリティがある。
佐藤:年が一つ積み重なるだけで、時間が直線を描いていきます。でも、われわれはあれで円環し、リセットされるんです。そういう時間の流れ方というのが、やっぱり日本の根っこのところにある。
佐藤:元々ギリシアも時間が円環しています。農耕文明は基本的に、時間が円環していますから。
出口:もう一つはザラスシュトラゾロアスター教開祖)の考え方で、時間を直線で考えます。直線の考え方というのは、人間の一生がそうですね。生まれてから死ぬまで。はじめと終わり。天地創造最後の審判。このように時間の考えは二つあると思うんです。
佐藤:その感覚を持つことは、役人でもビジネスでも、成功するために重要だと思います。特に直線的な時間概念は持たないといけない。
出口:宗教は、一般にセム的一神教、インド系の宗教、東アジア系の宗教の3つに分けられますが、セム的一神教だけが時間が直線で、後の二つは円環に近いと思います。
佐藤:ただ、セム的一神教が直線だけなら、たぶんここまで発展しなかったと思うんです。やっぱりギリシアと触れることによって、円環性が入っている。だからイスラムもね。率直に言って、アラブが今これだけの力を持っているのは、たまたま石油があったからです。本当に怖いのは、イスラム世界ではイランです。
佐藤:イランには、ペルシャ帝国の歴史が入っているので、円環もゾロアスターも持っている。実は、イラン研究って、すごく重要なんですよ。
出口:でも考えてみたら、古代の世界帝国を作ってきたのは全部ペルシャ人なので、中東のカギはイランが握っていると思います。
佐藤:その通りです。イランというのは、ローマ帝国以前の世界帝国だった。ローマ教皇と自分たちは対等だと、今でも思っていますからね。
出口:サーサーン朝の首都であったクテシフォンと、コンスタンティノープルの人口はほとんど一緒です。中東を安定させようと思ったら、やっぱりイランがカギですね。
佐藤:イランが本当の意味で民主化して、トルコももう少しきちんとした開発独裁国家になってくれれば、「イスラム国(IS)」なんて恐るるに足りないんですけれど。
佐藤:ところがイランが怖いのは、核開発を本気でやっていて、それは民主派もリベラル派も支持していることです。「大国であるイランは、核兵器を持つべきだ」と。
出口:でも、イランには時間は円環するという認識があります。『王書』などを読んでいると円環の比喩がたくさん出てきます。円環を回すことによって悲劇が喜劇になるとか、栄光から悲惨に落ちるとか。
佐藤:ゾロアスター教にも、その要素がすごくありますね。
出口:あります。西洋の哲学はホワイトヘッド(アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド連合王国の数学者)が言ったように、すべてプラトン古代ギリシア哲学者)の解釈ですよね。
出口:でも、プラトンの考え方には、ピタゴラス古代ギリシア数学者・哲学者)の影響が大きい
佐藤:ピタゴラスは、神秘主義教団ですからね。
出口:そこには輪廻とか円環の考え方があるんですよね。
佐藤:アメリカの内政向けですよ。レッドライン外交というのがアメリカの伝統的外交。ここが赤い線で、この線を越えたらアメリカはやるぞと言ったら必ずやる。有言実行の国だったんですが、オバマはシリア問題では結局一線を超えてもやらなかった。それがロシアにつけ込まれる原因になったんです。
佐藤:アメリカは絨毯爆撃ができないからです。ISの特徴はハイブリッド。アルカイダとか日本赤軍とかオウム真理教とかドイツ赤軍とか赤い旅団とか、こういうのはすべてテロの専門家集団ですよね。それに対してISは、ハイブリッド。すなわち市民社会を持っているんです。工場も、農場も、役所も、学校も、病院も持っている。それがモザイク状に入り組んでいるのでどこを攻撃したらいいか、わからないんです。
佐藤:その代わりイラクはダメ、石油が出るから。だから、むしろ不良債権処理として見たほうがいいかもしれません。シリアとイラク、両方とも不良債権なんだけれど、コスト感覚としてシリアはコスパが合わない
佐藤:日経新聞で興味深い報道がありました。「アメリカが、中国を通して北朝鮮に4つのNOを伝えた」と。「核兵器開発と弾道ミサイル開発をしないのなら、金正恩政権を認める」「武力による崩壊はさせない」「38度線を超えて北進をしない」「南北の統一を急がない」という4つです。
佐藤:韓国は遅れているんです。意外と知られていませんが、韓国のミサイル技術、ロケット技術はいまだに大気圏外にも出すことができません。
出口:北朝鮮のほうが進んでいますね。
佐藤:核に関して言えば、米原子力協定で、日本は六ヶ所村プルトニウムの抽出、ウランの濃縮をしていますね。ところが韓国は認められていません。韓国の燃料はアメリカの原発からもらうだけなんです。どうしてかというと、朴正煕大統領の時代に密かに原爆を作ろうとして、アメリカがそれをやめさせたから。だから、日本レベルでのプルトニウムの抽出とウランの濃縮を認めさせてくれといっても、アメリカは認めません。今後も認めないでしょう。
出口:方法論としては北朝鮮から取ってくるしかないわけですね。
佐藤:日本の原発政策は、中曽根康弘さんが大きな役割を果たしたと思うのですが、原発とロケットがあることによって持てる事実上の能力は、核と弾道ミサイルです。特に、日本の場合重要なのは、プルトニウムの抽出はフランスの技術、ウラン濃縮なんですね。これは完全に自前です。第二次大戦中から仁科芳雄博士が始めたものがそのまま六ヶ所村に来ているんです。
佐藤:確たる技術を発表したら、核拡散につながるから。特許や論文をベースにして、諸外国が開発する危険性があるから、日本原燃の学者は、研究発表は一切しません。学会でもやらない
佐藤:確か規定では、会社の上層部から特別の許可を得ないと外国にも出られないはずです。外国に出ると拉致されて、そのまま原発開発をやらされる危険性があるので。
佐藤:よく似ています。日本原燃というのは、それくらい力を持っている会社なんです。
佐藤:しかも強いて言うなら、六ヶ所村にしたというのは、三沢を人質にしていますよね。六ヶ所村を攻撃することがあれば、高濃度の放射性物質が流出したら三沢基地がやられてしまう。だから、三沢は日本のためじゃなくて米軍のために六ヶ所村を守ります
佐藤:北朝鮮の核開発の最大の問題は、あそこでウランが掘れてしまうことなんです。ウランさえ採れなければ、封じ込めは簡単にできるんですが。
佐藤:4月にイスラエルから4人のお客さんが来たんですよ。そのうちの3人はあまり表に出せない人です。一人は元モサドの幹部だという人、一人は軍産複合体の社長、もう一人は軍の情報機関の幹部で今は武器の商人。一人だけ名前を出せるのは、テロ対策センターの所長だった、ボアズ・ガノール教授です。この人は、2001年に9.11のテロを予測したことで有名です。民間航空機を使った形のテロがあり得ると言いました。テロ学の専門家なので、みんながその人の意見を聞くんです。
・1番目がローンウルフ、一匹狼です。これは自分の心の中でテロをやろうと決めて、誰にも言わないタイプ。2番目はローカルネットワークと彼は言っているのですが、夫婦や兄弟で行うテロ。このテロの特徴は、なたやナイフを使う。あるいは自動車のジグザク運転。これは夫婦や兄弟でやるので、情報が洩れません。
佐藤:命を賭けてやるから、最後は当日か前日に決意表明を書いて、インターネット空間に遺書を残す。できるだけ多くの人に見てほしいわけですからね。そこには、パターンとなったフレーズなどがあって、それに特化した検索エンジンシステムを、今、イスラエルは作っているそうです。だいたい20分くらいで見つけられる、と。
佐藤:そこに警官が「お話聞かせてください」と訪ねていく。そしてあぶないと思ったら予防拘禁するわけです。実は、日本国政府を暴力によって転覆させようと考えている人たちは、いくらでもいる。革命派とか、中核派とか。ところが、具体的な活動に着手しない限り、これは網にかかりません。ところが、イスラムテロリズムというのは、思いついたら即行動なんです。その間の距離が短いから、近代法的な枠組みの中では脅威を除去できない。だから新しい防止策が必要になるのです。
佐藤:組織テロ、ISなどです。これの特徴は、爆弾を使うこと。自爆テロであるか、時限爆弾であるかを問わず、爆弾をつかうものには組織背景があると考えていい。
佐藤:「理由は何でもいい。借金でも、失恋でも、とにかく自殺するってことを決めている奴を見つける」と。そしてこう説得する。「自殺するのは人生の敗者だよな。みじめだ。虫けらのような一生でみんなから忘れられる。でも、自殺ではなく、お前が命を投げ出す決意が重要なんだ。イスラムの聖戦に加わらせてやろう。そこで戦えば、天国に行く道の扉が開く」。
出口:聖戦の戦士になれ、と。
佐藤:こういう説明をすれば、死ぬことをもう決めているので説得は難しくありません。
佐藤:話題だったテロ防止法、共謀罪に関して、私は政府と野党両方に知り合いがいます。政府も何をすればテロを防止することができるかよくわかっていないし、野党はこの問題を政争の具にしている。人間の内心をチェックする、予防拘禁のような手段を用いなければテロは防止できない。他方、そのような「武器」を政府に持たせれば必ず乱用して政敵つぶしに使う。
出口:乱用のリスクを少なくするには、三権分立を厳格に運用するとか、インテリジェンスの機関を牽制させるとか。
佐藤:必要ですね。それから、事後的に権力が乱用した場合のものすごく厳しい罰則をつけておくとか。
佐藤:もっと極端なことを言いますよ。治安維持法の復活というのは、その通りなんです。しかし、治安維持法は本当に悪かったのかという話まで持っていかないといけない。改正前の治安維持法は、コミンテルン対策の法律でした。1919年にできたコミンテルン支部として、国際共産党日本支部を作り、それによって内乱を準備した。具体的にテロ活動などが行われました。しかし、コミンテルンが一国社会主義に転換した1930年代。もはやソ連国家の国益しか実現しなくなった。国際共産主義の実現はもうない。そこのところで冷静な判断をすればよかったんです。
佐藤:コミンテルンとつながっている部分だけだったのに、社会民主主義なるマルクス主義、労働運動、それでも足りずに宗教団体とどんどん広がって収拾がつかなくなってしまった。
出口:歴史をきちんと勉強しないまま、騒いでもしょうがないということですね。今日はものすごく勉強になりました。お忙しい中、ありがとうございました。

(抜粋引用終)
京都の北部で開催された佐藤優氏の講演会に初めて出席した時から、もう8年になる。当時の記憶は、ついこの間のことのようだが、その時の自分の心境と現在とでは、相当な開きがある。
あの頃はまだ、知らないこと、わかっていなかったこと、隠されていたことがたくさんあった。それでも、何か確証を掴みたいと願いながら、たくさんの本を読み、多くの音楽を聞き、各種の講演へ出掛け、国内外を旅行し、考えたことや経験したことをこのブログで文章に綴ってきた。
この頃、ようやく掴みかけた感触がある。
《翌日の後記》
本来の議論テーマについて、対談の中では、以下のように理由づけられている。

・現世のいろいろな楽しいことがあるから(出口)
・商売につながらないから(佐藤)
薩長土肥の中でエリートになれなかった人がキリスト教に(佐藤)
・教義の根本のところが、ものすごくいいかげんなキリスト教(佐藤)
帝国主義と結びつくことができたのが、キリスト教が広がった大きな理由(佐藤)
・お金もあって、国家権力もあったからキリスト教の独身制が成立(佐藤)

ざっと対談を読んだり聞いたりしていると、二人で話がどんどん進むので、一瞬、もっともらしく思えてしまうのだが、事実として確認できるのは、恐らく「薩長土肥」と「帝国主義」のみであろう。しかし、そればかりとは言えまい。
キリスト教イスラームが日本で広まらなかった最も重要かつ大きな理由は、「皇統譜と直結しないから」だと私なら考える。