ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

米国製エリートとケーキ

メーリングリストから部分抜粋を以下に。

佐々木紀彦『米国製エリートは本当にすごいのか?


米国や英国は優秀なリーダーを生んでいるが、両国の国民は日本に比べてそんなに優秀でしょうか。私はそうは思わない


・なぜ両国の指導者のクオリティはこうも違うのだろうか。その答えは「エリートの育成システム」にあるのだと思う。日本には、エリートを選抜して教育し、競争の中で鍛え抜くシステムがない


・「現場は強いが、リーダーはだめ」という構造は、日本の運命ではないはずだ。事実、日本にも「強い現場」と「強いリーダー」が共存した時代はあった。日露戦争時の日本には、伊藤博文東郷平八郎山本権兵衛高橋是清など、各分野にキラ星のごとき人物がそろっていた。当時のリーダーたちは、間違いなくワールドクラスだった。


・現代における最高の教材は何でしょうか。その候補となるのが、米国のエリート教育だ。米国がかくも長きにわたり、世界一の国であり続けている理由として、「エリートの質の高さ」がしばしば指摘される


・本書の目的は、一人の日本人の視点から、「米国の一流大学で行われているエリート教育とはどのようなものか」「その教育システムとそれが生み出す学生たちには、どのような強みと弱みがあるのか」「日本人がそこから何を学ぶべきで、何を学ぶべきではないのか」を記すことだ。


・この内容は、私が大学院生として2年間を過ごした、スタンフォード大学での経験、文献調査、そして雑誌記者としてのインタビューが基になっている。


米国の教育の最大の強みは、平均点以上の知的エリートを育てる点にある。先ほど「上澄みの学生は日米でさほど差はない」と書いたが、全学生の平均値という点では、米国の一流大学のほうが断然上だ。


・その最大の理由は「米国の大学はインプットとアウトプットの量がとにかく多い」という点にある。100本ノックのように、次から次へに読書、レポート、プレゼンの課題が降ってくるため、否が応にも知的筋力がつく


・同じように若いときに知の基礎体力を高めておけば、何の仕事をするにしても、成長のスピードが加速する


・米国の大学・大学院は以下の3つの能力をバランスよく向上させている。

1.多くの知識や経験があること(インプット)
2.多くの知識や経験をうまく整理し、つなげる能力があること(プロセス)
3.整理された知識、経験をうまく発信する能力があること(アウトプット)


・日米の学生の差を生んでいるのは、インプット量、読書量の差である。米国のエリート学生は、大量の読書を強いられるため、平均値が高い


・法学部がない米国で一番人気のある学部はどこだろうか。それは経済学部だ。
「自分が暮らしている世界を理解するため」
「経済へのより機敏な参加者になるため」
「経済政策の可能性と限界をよりよく理解するため」


・現場感覚に乏しい一方、抽象的な物事を考える能力は高い


・米国流教育の強みは、一見わかりにくい実践性にある。具体的にいうと「演繹的に物事を考える能力」「限られた情報から物事を予測する能力」を鍛えるよい訓練になる。仮説を立て、それを検証し、修正していく。こうした習慣を米国の学生は毎日叩き込まれるわけだ。


・歴史を振り返ると、日本の国力は一部の優秀なエリートよりも、むしろ一般大衆の高い民度に支えられてきた。明治維新は明治の志士たちの手腕だけではなく、日本人全体の高い教育水準によってもたらされた。戦後の経済発展も、国民全体の教育レベルが高かったからこそ成し遂げられたもの


歴史の浅い国のエリートはなぜ歴史を学ぶのか。歴史の知識は、国家戦略の策定のみならず、経営実務においても役立つ。将来に向けたビジョンを描くのに役立つからこそ、米国のエリート教育では歴史が重視される


・歴史を学ぶということは、過去の文脈、ストーリーを学ぶことだけではない。地理、自然条件に関する知識を深めることも歴史の教養に含まれる。


・歴史を学ぶメリットは「瀬略構築に役立つ」ということだ。歴史は人間、経済、地理、政治、戦争、科学などあらゆる要素がうずまくドラマの集積だ。スターンズ教授は、「なぜ歴史を勉強するのか」という論文の中で、「歴史は人間や社会がどう動くかを示す倉庫、実験室だ。歴史教育を通じて、証拠を評価する能力、異なる解釈を評価する能力、そして変革を把握する能力が鍛えられる」と述べている。


ジョージ・ケナンは、次のように述べている。「単純かつ自然な状態における人間の本性を知る唯一の方法は、歴史の学習である」


・歴史の教養は将来を見通すための助けにもなる。CIA、陸海空軍で他国の情報分析や将来予測などに携わるインテリジェンス・オフィサーには、歴史の博士号をもっている人物が多い


・いまの日本が抱えている問題は、経済に限らない複合的なものだ。だが日本には国際政治、歴史、経済などに精通し、多面的に戦略を描くことのできる一流のゼネラリストが少ないため、「戦略の空白」が生まれている。


・欧米社会において、戦略構築を担うのは、政治、経済、法律、安全保障、歴史など総合的に学んだ人間だ。チャーチルもかつては歴史家を目指したほどの歴史通だ。大事なのは、経済、安全保障、政治、歴史を深く理解したうえでビジョンを示し、各分野の一流の専門家を使いこなす能力だ。


・英語の総合力を高めるのは暗記と音読


・現場にも戦略にも強く、バランスの良い愛国心をもった日本オリジナルのエリート。そんな人材を得られるか否かで、日本の命運は決まる。

(部分抜粋引用終)
ジョージ・ケナンは、過去ブログ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141121)を参照のこと。
今朝の読書にも登場した(週刊新潮編集部『マッカーサーの日本(下巻)新潮文庫(昭和58年7月)http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20180326))。

pp.268-269
米外交家の第一人者、ジョージ・ケナン氏(元駐ソ大使)近著『回顧録、1925−1950』
ケナン氏の日本観
「アジア最大の工業国である日本の経済的復興こそアジアの共産化を防ぐカギである。その日本に対して、今アメリカはほとんど独裁的な権力を持っている。なぜなら、アメリカは日本を無条件降伏させたのだから....。日本はわれわれのおいしいケーキである。」

(部分抜粋引用終)