ブログ版『ユーリの部屋』

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「デモクラシーは輿論主義」

https://www.nikkei.com/article/


「デモクラシーは輿論主義」
京都大学教授 佐藤卓己
2018年4月11日
日本経済新聞 電子版


・デモクラシーには「民主主義」以外にも多くの訳語が当てられてきた。「万民共治」(加藤弘之)、「平民主義」(徳冨蘇峰)、「衆民主義」(小野塚喜平次)、あるいは大正期の「民本主義」(吉野作造)、「民政主義」(美濃部達吉)などである。いずれも現代政治の実用には向かない古語だが、「輿論(よろん)主義」(尾崎行雄)だけは使える。


・第1回帝国議会から連続当選して「憲政の神様」とも言われた尾崎は、五箇条の御誓文の第一条「広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スへシ」の公議輿論にデモクラシーの精神を読み取っていた輿論主義は第1次世界大戦中の大正7(1918)年1月22日、衆議院の尾崎演説で有名になった。


・「今や世界には画然たる二大潮流がある、一は輿論民意を主として政治をして行かうと云(い)ふ潮流である。欧羅巴(ヨーロッパ)の政治家は之を民主主義と云ふて居る、吾(われ)々は輿論主義若(もし)くは公論主義と云ふのである、それに反する者は武断武力を恃(たの)みにして、武断専制で行かうと云ふ主義である」


・日本は連合国側の民主主義勢力であるにもかかわらず、寺内内閣は内外に武断主義で臨んでおり、矛盾の解消こそが急務だと批判している。もちろん、この輿論(公的意見public opinion)を尊重する政治は、世論(大衆感情popular sentiments)に惑わされない政治でもある。


・今日、輿論主義という言葉が忘却されていることは残念というほかない。もちろん、大衆政治の中で「輿論の世論化」が進み、戦後の当用漢字表で「輿」が制限漢字になったことが大きく影響している。世論主義ではポピュリズム大衆迎合主義)の意味にしかならないからである。

(引用終)
参照:過去ブログ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20180404