ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

庄司紗矢香さんの今の心境

衝撃的なデビューを誇った16歳の少女だった庄司紗矢香さんも(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%BE%B1%BB%CA%BC%D3%CC%F0%B9%E1&of=50)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%BE%B1%BB%CA%BC%D3%CC%F0%B9%E1)、もはや三十代の熟女。その心境が伺えるインタビューを以下に。
この頃では、関西の主なコンサート・ホールからのパンフレットを見ていても、かつてのようなワクワク・ドキドキが減ったように感じる。換言すれば、演奏家の旬の時に、自分も時間を重ね合わせて、会場で同じ良い時を過ごせたという意味である。すなわち、一期一会の幸いである。
吉田秀和氏は、紗矢香さんの初期のCD『プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第1番&第2番/ショスタコーヴィチ24の前奏曲より』を非常に褒めていらした。従って、中原中也についても(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071030)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071217)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140723)、紗矢香さんの感受性ならば、響き合うものがあるだろう。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO23245330Y7A101C1BE0P00/


バイオリニスト 庄司紗矢香(4)『ソロモンの歌・一本の木』好きなもの蓄える柔軟さ
2017年11月9日
日本経済新聞夕刊


じつは演奏を「仕事」だと思ったことがない。誤解をおそれずに言えば「趣味」のひとつ。もちろん打ち込んできた時間はほかの趣味に比べて圧倒的に多いが、あくまで楽しんで弾いている
それは母が美術家だったことと関係しているかもしれない。さいころから母に連れられて美術館に通い、ニコラ・ド・スタール、ルドンら数多くの作品に心を奪われた。中でもニューヨーク近代美術館で見たクレーの絵が忘れられない
 どこまでも広がっていくような、軽やかな色彩と線の連なり。一目見た瞬間、とらえられて動けなくなった。気づいたときには涙があふれていて、自分でも驚いた。こんな風に感動を与えてくれる美術というものを心から愛している。そして同じように、音楽も、本も愛している
 音楽評論の大家、吉田秀和さんの『ソロモンの歌・一本の木』(講談社文芸文庫)に魅力を感じたのは、時代もジャンルも超えて好きなものを蓄えていく柔軟さに共感したからだ。相撲に始まり、中原中也や、ワーグナーのオペラに至るまで、あらゆる話題が独自の視点で明快に論じられる。
 「クレーは音楽的だといわれているが、そういうことは、私には、曖昧な言い方にしかきこえない」。そう言い切って、画家の描く線を同時代の無調音楽の構造と比較しながら分析していく手並みの鮮やかなこと。
 この本を読めば、さまざまな芸術との出会いによって人生が深まっていくさまがわかる。だからというわけでもないが、私も興味の赴くまま、いろんなことを吸収し続けたいと思うのだ

(引用終)