ハマスの武力闘争
『メムリ』(http://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=SP671517)
Special Dispatch Series No 6715 Jan/10/2017
「武力闘争を継続:目的は川から海まで全パレスチナの解放―創立29周年で呼号するハマス幹部達―」
2016年12月14日、ハマス創立29周年のこの日、“アル・クードス・誓いと約束”のスローガンのもとで集会が開かれた。集会ではハマスの幹部達が次々と壇上に立ち、ジハードの堅持、川から海までの全パレスチナの解放を目的とする武力闘争、イスラエルの刑務所に服役中のパレスチナ人囚人の解放、“シオニスト存在体”の消滅を呼号した。当日はガザで軍事パレードも行われ、所有兵器とトンネルの模型も登場した。そのパレードでハマスの活動家達が、“占領者を駆逐する迄、地上地下で日夜奮闘する”ことを誓った※1。
ハマスを代弁するAl-Risalaのサイトは、29周年記念にアニメを掲載した。ひとりのハマス戦士がさまざまな兵器と手段で(投石、火炎瓶、ロケット、トンネル)敵イスラエルを次々と粉砕し、遂にエルアクサへ到達するところが、描かれている※2。
ハマスの軍事部門カッサム殉教旅団のウェブサイトは、ハマスが生産中の兵器に関する報告を掲載した(次を参照:MEMRI Special Dispatch No.6714, Hamas’s Military Wing Marks Organization’s 29th Anniversary With Special Report On Its Military Industry, December 19,2016)。
ハマスが、殉教作戦の長期中断後今年になって特に自爆用爆薬ベルトについて言及したのは、注目される。カッサム殉教旅団の特別報告とハマスに近いコラムニストの記事にも登場する※3。
次に紹介するのは29周年にハマスの幹部達がだした声明である。
我等の土地は川から海までの全パレスチナ―PAはオスロー合意を放棄せよ
数万人が参加したハーンユニスの記念集会で、ハマス幹部のザッハル(Mahmoud Al-Zahhar)は、「我方の運動は(武装)抵抗を堅持する…兵器とあらゆる手段を使った抵抗は、合法的権利であり、我々はこれを利用し、決して放棄することなく、誰にも降伏しない。我々は、内通者と裏切者、そして特に敵シオニストに銃を狙いをつけている。我等の土地は川から海までの全パレスチナである」と強調し、PA(パレスチナ自治政府)、ファタハそしてPLOに、イスラエルとの治安協調をやめ、「解放計画の一環として抵抗オプションをとれ」と呼びかけた※4。
写真1ガザ北部で挙行されたハマスの軍事パレード(Alqassam.ps, December 9, 2016)
時は占領者に味方せず、シオニスト存在体は消滅する
12月9日ガザ北部で実施された別のパレードでは、ハマス幹部のハッヤ(Khalii Al-Hayya)は、次のように述べた。
「パレスチナ抵抗運動とカッサム旅団にとって、囚人問題が最優先事項であり、占領者はその代償を払うことになる…時は占領者に味方しない…ハマスは抵抗の選択を堅持する。そして占領者の刑務所にいる囚人達に、解放の時まで戦うことを約束する。我々はシオニスト存在体を承認しない。この存在体は必ず消滅する。我々の土地である。その土地に彼等の未来はない」※5。
我等は聖戦の道を行く、アラブ諸国にロケット輸出の用意あり
ほかのハマス幹部達も、記念日に至るまでの期間に、類似の声明をだした。2016年12月10日の金曜説教で、預言者ムハンマドの誕生日にあたって、ハマス立法評議会の副議長バフル(Ahmad Bahr)は、「ガザは、我等の預言者の道―抵抗とジハードの道を歩む」と言った※6。
やはりハマス幹部のハマッド(Fathi Hamad)は、12月10日にハマスのエルアクサTVで、異様なことを言った。「我々は、イスラエルと戦えるようにアラブ゙諸国にロケットを輸出する用意がある。ハマスの設立目的は只一つ、パレスチナ全土の解放と全権の確保である」と述べたのである※7。
ハマスの駐レバノン情報担当ムッラ(Rafat Murra)は、記念日記事で、次のように主張した。「抵抗は、パレスチナ人民の独立達成のための戦略的選択である。占領者とそのテロリズムを駆逐し自決権を確保し、完全な独立主権国家を建設するための戦略である。抵抗は土地と人間を守り、住民を保護し、占領者とその軍事、経済及び治安インフラを破壊、撃退するうえで、カギ的役割を有する…住民のインティファダ、投石インティファダ、刺殺、自動車による轢き殺し、そして占領者の文化及び経済ボイコットは、パレスチナ人民と若い世代が達成した大戦略の一部である」※8。
ハマス幹部アドワン(`Issam `Adwan)の主張は次の通りである。
「ハマスはパレスチナ抵抗運動である。主として武力闘争を中心にあらゆう抵抗手段を使い、パレスチナの地が完全に解放される迄、パレスチナを占領している敵ユダヤ人と戦うことを目的とする…敵に対する武力抵抗は、パレスチナに限定される…ハマスは29年の間に軍事能力を身につけた。最初はとるに足りなかったが、現在は敵と戦う戦略トンネル、我々自身が開発、生産している射程160 ?の中距離ロケット、そして恐れを知らぬ戦士を多数揃えるまでになった」※9。
ウェストバンクをベースとしているコラムニストのハテル(Lama khater)は、親ハマスのウェブサイトpalinfo.comで、次のように述べた。
「ハマスは、地域の支持がない状況から立上り、岩石からナイフ、そして小銃、自爆ベルト、ロケット、トンネルへ闘争手段を高めてきた。ハマスの軍事部門は、個々人の集まりからよく組織された軍事力に成長し、最前線に立って占領者と戦うまでになった」※10。
軍事パレードで記念日を祝ったハマス
12月14日ガザで開催されたハマスの記念行事には軍事パレードが含まれ、火砲、コルネット対戦車ミサイル、2014年の対イスラエル戦闘でテルアヴィヴ向けに発射されたM・75ロケットが展示された。ハマス戦士のひとりは、「占領者が駆逐されるままで、カッサム旅団は地上で地下で日夜を問わず戦いを続ける」と言った※11。
写真2ガザの軍事パレード(Maannews.net, December 11, 2016)
ハマスを嚆矢とする5タイプの戦法
ハマスのツィッターは、29周年を記念して、5種類の戦法を紹介し、すべてハマスがパレスチナで実行した最初の運動とし、以下、その5種を写真付で説明した※12。
ハマスは殉教作戦を敢行した最初の運動である。第1回は1993年の自動車爆撃攻撃で、カッサム旅団戦士タマム(Saher Tamman)が自爆した。
写真3
ハマスが自前のロケットでシオニスト存在体を攻撃した最初の運動である。第1回は2001年(イスラエルの都市)スデロットに向けて発射された。
写真4
ハマスが、ジャバリ(Ahmad Al-Ja`bari)殺害の報復で2012年に自前ロケットでテルアヴィヴを攻撃した最初の運動である。
写真5
ハマスが、トンネルを使って殉教作戦を敢行した最初の運動である。2001年ラファの(イスラエル側の)テルマイト前哨を攻撃した。
写真6
ハマスが、占領下パレスチナに水上挺身攻撃をかけた最初の運動。ズィキム作戦と称する。
写真7
[1] Maannews.net, December 11, 2016; Alqassam.ps, December 14, 2016.
[2] Palinfo.com, December 11, 2016.
[3] Alqassam.ps, December 9, 2016.
[4] Alqassam.ps, December 10, 2016.
[5] Maannews.net, December 10, 2016.
[6] Palinfo.com, December 13, 2016.
[7] Filastin (Gaza), December 13, 2016.
[8] Palinfo.com, December 14, 2016.
[9] Alresalah.ps, December 14, 2016; Al-Aqsa TV, December 15, 2016.
[10] Maannews.net, December 11, 2016; Alqassam.ps, December 14, 2016.
[11] Twitter.com/hamasinfo, December 14, 2016.
(転載終)