憂慮すべき世界情勢
トランプ氏(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%A5%C8%A5%E9%A5%F3%A5%D7)選出後、やっと読める日本語論考文が出た。
以下の論に、私は基本的に同意している。この路線は、長年の筋金入り共和党員を辞めてまでダニエル・パイプス先生がトランプ批判を繰り広げたことと(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160723)、概ね一致すると思う(http://ja.danielpipes.org/article/16585)(http://ja.danielpipes.org/article/16597)(http://ja.danielpipes.org/article/16616)(http://ja.danielpipes.org/article/16618)(http://ja.danielpipes.org/article/16740)(http://ja.danielpipes.org/article/16838)(http://ja.danielpipes.org/blog/16839)(http://ja.danielpipes.org/16876/)(http://ja.danielpipes.org/article/16884)(http://ja.danielpipes.org/article/16954)。
パイプス先生は単なる一介の党員ではなく、オバマ政権が出現するまでは中央の指導者層に位置していた(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120405)。また、この度のトランプ氏を巡る選挙戦の途中で、トランプ氏に面会を申し込んで直談判したとの英語報道も、広く知られている。
(https://www.bloomberg.com/view/articles/2016-01-31/the-trump-doctrine-revealed)
The Trump Doctrine Revealed
31 Jan 2016
Josh Rogin(former Bloomberg View columnist)
‘Sources close to the campaign told me Trump has also spoken with controversial historian Daniel Pipes and Israel’s current envoy to the UN Danny Danon, among others.’
(部分抜粋引用終)
日本語ブログでは最近、素人(と呼ばれて怒り出すタイプの人々)が、トランプ氏選出に便乗してなのか、「自国第一」で何が悪いと勢い込んでいるが、外交の基本、日本の国力の実態、東アジア情勢の正確な状況等を客観的に知ってから書いた方が良いのでは、と傍から密かに思うところである。
(http://newglobal-america.tea-nifty.com/shahalexander/2016/11/post-7e2b.html)
2016年11月30日
「トランプ・ショックを契機とした日本自主防衛論に疑問」
・大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の当選は予期されなかったばかりか望まれてもいなかったので、全世界のアメリカの同盟を恐怖に陥れることになった。トランプ氏は全世界での同盟ネットワークの破棄を口にしたばかりか、日本、韓国、サウジアラビアといった同盟諸国には自前の核武装さえ要求したので、アメリカが一方的に覇権を破棄することによる新世界無秩序が恐れられるようになっている。
・日本とヨーロッパではトランプ・ショックは戦後の安全保障枠組を再考し、自主的な外交および国防政策を模索する機会だとの声も挙がっている。
・日本の外交政策の有識者の間ではトランプ政権の登場による不確実性を伴う不安定化に重大な懸念が広まっているが、ナショナリスト達は在日米軍の撤退によって「戦後の政治的な対米従属」を脱却するという自分達の願いを叶える絶好の機会だとして歓喜の声が挙がっている(「日本でじわり広がる”トランプ大統領”待望論―対米自立か隷属か―」;;Yahoo!ニュースJAPAN;2016年3月27日)。
・問題はアジアが文化的にも歴史的にも政治経済的発展度合でもあまりに多様なために、日本は多国間地域安全保障機関に入っていないことである。また日本は韓国や台湾といった安全保障での提携の可能性のある国々とも領土上の見解不一致を抱えている。よって日本がいわゆる自主安全保障政策を執れば、世界から孤立しかねない。
・ナショナリスト達は日帝の復活という長年の夢のために歓喜に浸っているが、真の自主防衛を叶えるだけの軍事力を備えるには、防衛費を大幅に増額しても長い時間がかかる。
・背後にアメリカの力がなければ、地政学的にも経済的にも日本がアジアで中国の影響力とせめぎ合うことは難しい。日本が規範に基づいた国際関係という普遍的な価値観を訴えてはいるが、アジア諸国は大なり小なり中国の台頭には抗えないとして受容している。経済では日本の商品やサービスが高品質を誇ったところでアジアの顧客には必ずしも受け入れられず、むしろ低価格で猛烈な営業攻勢をかけてくる中国製のものが席巻するようにもなっている。
・アジア諸国は中国の脅威に対して立場が一致しているわけではない。カンボジア、ラオス、ミャンマーのように親中の国もある。親欧米かつ親日と思われる国々でさえ、中国に宥和することもある。小国にとっては崇高な理念を掲げるよりも、大国の競合の間での国家生存の方がずっと重要である。
・ナショナリスト達が夢見るような日本主導の大東亜共栄圏の復活などは、ただ馬鹿げていて危険である。
・歴史的に見てアジアは1890年のフロンティア消滅以前からアメリカの影響圏である。マシュー・ペリーの艦隊が1853年と1854年に日本に派遣されたのは、それだけの理由があるのである。それは中東でのアメリカの関与が大英帝国から引き継がれたこととは著しい対照をなす。
・新アメリカ安全保障センターのロバート・カプラン氏はトランプ氏がリアリズムを理解していないと批判する。トランプ氏は世界の中でのアメリカの役割と立場について明確なビジョンもなく、同盟国の防衛にも世界の安定に寄与することにもほとんど関心はない(“On foreign policy, Donald Trump is no realist”; Washington Post; November 11, 2016)。
・トランプ・ショックは日本が「従属的」な対米関係を終焉させ、「自主独立」で「誇り高い」外交政策を採用する好機ではない。
・トランプ政権の不確実性に対処してゆくための米国内での影響力行使法を考えてゆく必要がある。カーティス氏は、議会、メディア、シンクタンク、そして国務省および国防総省の官僚機構を通じた権力分立によって日米同盟の破棄など認められないと論じている。また誰が大統領であっても基本的な国益は不変であるとも主張している(“Trump couldn't change Asian policy even if elected, Columbia professor says”; Nikkei Asian Review; November 8, 2016)。
・我々は価値観を共有する西側民主国家と手を携え、ワシントンのエリート達と共通の解決手段を模索しなければならない。
・幸いにも先の選挙でトランプ氏を支持した低学歴層は、このレベルでの政策のやり取りにはほとんど影響を及ぼすことができない。
・政治家としては完全な初心者であるトランプ氏は、自らの問題解決能力のなさを突き付けられた時には著名な専門家の助力を仰ぐしかない。従来とはかなり変わった大統領を完全に制御することはできないが、我々としてはあらゆる手段を模索しなくてはならない。
(部分抜粋引用終)
「幸いにも先の選挙でトランプ氏を支持した低学歴層は、このレベルでの政策のやり取りにはほとんど影響を及ぼすことができない」の一文にカチンと来た人は、影響力がないという現実に対して、どう反応するだろうか。