ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

原語表記の原則?

池内恵氏(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%C3%D3%C6%E2%B7%C3)だったかが、「新聞社に入社する人達は、大学の成績があまりよくない層」という意味のことを昨年、書いていらしたかと思う。このようなことが堂々と書けるには、それを遙かに上回る成績の持ち主でなければならず、その意味で、私には何とも判断しがたいところではある。
しかし、昨日パリで発生した風刺雑誌にまつわる襲撃事件を報道するのに、朝日新聞朝刊が『シャルリー・エブド』と表記していたのには、困惑させられた。
恐らくは、現地語発音の表記原則(原語表記の原則)に沿って、フランス語風にカタカナを出したのであろう。だが、BBCニュースを見ても、はっきりと「チャーリー・エブド」と発音している。手元にある厚さ5.5センチのロワイヤルの仏語辞書を調べても、そもそも‘Charles’「シャルル」ならともかく、‘Charlie’などは掲載語に含まれていないのである。従って、左翼系の政治風刺を主眼とする雑誌というニュアンスで、あえて「チャーリー」と名付けているのではないだろうか、と二、三年前のパイプス訳文の際に愚考した次第である(http://www.danielpipes.org/12028/)(http://www.danielpipes.org/12613/)。
‘hebdo’は‘hebdomadaire’の略形で、話し言葉で用いられ「週毎の」「週一回の」の意味なので、「『週刊チャーリー』誌」とするのが妥当だろうか。しかし、「週刊誌『チャーリー』」でも充分だろうと思われる。
インターネットで便利にはなったが、二、三年前には「チャーリー」が前面に出ていたはずのこの雑誌、いつの間にか『シャルリー・エブド』の閲覧数が圧倒してしまっている。
ここまで書いた直後に外出。
午後7時のNHK-FMのニュースでは、朝日新聞に倣って、『シャルリー・エブド』および「新聞社」と報じていた。本件を報道するのに、「雑誌」か「新聞」かでも分かれるようだ。
被害に遭った編集者の一人は、従来から暗殺予告を受けており、上記の戯画掲載の出版物を手にしている2011年11月の写真が出ている。これによれば、典型的なタブロイド新聞のように見える。しかしながら、フランスのテレビやラジオの番組でも、多少英語なまりのフランス語でインタビューを受けるほどのパイプス先生の原文では、‘weekly’としている原稿もあるが、確かに‘magazine’と書いている(http://www.danielpipes.org/12583/)。
ここで興味深いことに気づいた。パイプス先生のお仲間活動家の著述を見る限り、全て「雑誌」扱いなのである。これについては、英語ブログに一覧を掲載する(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20150108)。
従って、過去の拙訳は、原文に忠実な訳出を心がけたという意味で、まんざら間違いでもないことが判明したと言えよう。