ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

ヤンソンス&ツィメルマン

既に師走の月に入ったので、遅ればせながら、先月の演奏会の感想を。
11月27日の夜7時から9時10分まで、兵庫県立芸術文化センターでマリス・ヤンソンス率いるバイエルン放送交響楽団とクリスチャン・ツィメルマンの演奏会を聴いた。
ヤンソンス氏率いるバイエルン放送交響楽団は二度目(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091030)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091109)。五嶋みどりさんのヴァイオリン協奏曲だった。そして、これまた二度目となるツィメルマン氏は、「もうコンツェルトはしない」と宣言されたとうかがっていたのだが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121125)、この度、何とブラームスを奏されると知り、何が何でも聴きに行く気になった。ここで挙げた演奏家との過去の出会いは、全て同じ会場である。
ヤンソンス氏については、過去にも書いたことがある(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071120)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20081228)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091110)。

非常に贅沢だが、11月は誕生月だとのことで、ここ数年、いい演奏会を選んで出かけている(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20101106)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111018)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111130)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121104)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121105)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121109))(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121231)。先日も書いたように、このような時期が来るとは、昔は想像もできなかった。不満が残っても、(自分にはこの程度でいい)と、あえて自己牽制していたところがあった(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141124)。

でも、せっかく音楽が好きならば、普段は質素に倹約生活でも、よい音楽を見つけて聴きに出かける経験を積み重ねることで、人生が随分変わってくると思っている。何も毎月、散財しているのではない。オペラやバレエなどは行かないし、日本の古典芸能も、極めて限られている。普段は毎日、CDやラジオや録音でクラシック音楽を流している。また、アランも述べたように、「幸福であることは義務」なのだから、好きなものに投資することは、周囲のためにもなるはずである。

そうは言っても、前日の朝、カレンダーを見て「あ、そうだった」と気づき、危うく日にちを間違えるところだった。チケットだけは前からお財布に入れてあったのだが、回数を重ねると、恐ろしいもので、何だかいつでも気軽に行けるような錯覚を覚えてしまう。だから、昔のように、何週間も前からドキドキして楽しみに、という高揚感と緊張感がどこか薄れてしまうのだ。

せっかくA席を購入してくれた主人も、つい日付を忘れていたらしい。前もって幾つかまとめてチケットを買うと、こういうことになってしまう。

それに先日、シンフォニーホールでイスラエル・フィルを聴いたばかりだったので(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141114)、カレンダーとチケットで確かに「芸文」だと確認したはずだったのに、何としたことか、我ながら信じられないことに、梅田の駅で下車。タクシーを拾って「シンフォニーホール」と言いそうになってしまった。運良く、運転手さんが「え、何?」と聞き返してくれたので、助かった。もし、そのまま「はい」と乗せられていたら、とんでもないことになっていた。聞き返しでハッとし、「あ、間違えました、すみません」とドアを閉めて気づいた。また、電車に乗り直さなければならない。

というわけで、家を出た時間はちょうど間に合っていたのだが、迂闊にも、とんでもない事態に。慌てて駅に舞い戻ったが、阪急は便利な構造になっていて、電車を乗り換え、最短距離で芸文に真っ直ぐ到着。本当に、危機一髪だった。
ただし、似たようなお客さんは他にもいたので、会場係の方も慣れたもので、手際よく誘導してくださり、助かった。

58歳にして早くも真っ白な頭のツィメルマン氏は、相変わらず繊細かつ大胆で、オケとは意気投合してリラックスした演奏振り。まるで第二指揮者であるかのように、体を揺らしてメロディに合わせていらした瞬間も何度かあった。ブラームスの曲は私の好みなので、一音一音、引き込まれるように、目に姿を焼き付けるように、じっと耳を澄ませた。
目の前で演奏を拝見していると、さまざまなことが思い浮かぶ。ポーランドでのショパン・コンクール優勝時の胴上げ映像。その後のテレビ・インタビューの様子。ワルシャワの音楽堂でのソロ演奏の数々。そして、ルトスワフスキやバチェヴィチを知ったのも、彼のCDと日本での公開レッスンのお陰だった。そして、先月は、ポーランドの故郷に温かく親子で歓迎されたパイプス家の系譜などを身近に感じられるのも、直接交信が始まる直前に、ツィメルマン氏に夢中になっていたからだった(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141125)。

相変わらず、丁重で折り目正しい端正なお辞儀。そして、何度も楽団に向かって拍手をされていた。その後、ヤンソンス氏と肩を組むようにして舞台袖へ戻っていかれた。カーテンコールの時、大きな花束が贈呈された。最近では珍しい光景か。ツアーの終わりならいいが、連日なら大変だろう。
アンコールを所望する大拍手が続いたが、どうやらその気はなさそうだと察した聴衆は、素直に受けとめた。
今回のホールは一階席が満席。バルコニー席や四階までを見上げても、ほぼ観客で埋まっていた。髪を結い上げて着物姿の方達も何人か。私の席は、本当に奮発して、向かって右側のバルコニー席。つまり、ツィメルマン氏の顔の表情までじっと見られる位置だったのだが、冒頭のミスのため、一楽章の20分はホール外。その後、二重扉の中に入らせていただき、5分待ち。ここでは音が聞こえる。一楽章が終わったところで、そっと誘導に沿って一階の立ち見席に。残り30分をそのまま立って聴いたことになる。こんな経験は生まれて初めて。何という勿体ないことを、と思うが、ギリギリの所で助かったことを繰り返し記す。金輪際、このようなことはなしにしたい。
休憩20分の後、第二部の演奏はムソルグスキーの『展覧会の絵』。これほどくっきりとした演奏は、初めて聴いた。大銅鑼と教会の鐘風の楽器は、この曲の数ヶ所のために、わざわざ遙々バイエルンから飛んできたのだ。と思うと、じっくりと目に焼き付けたくもなる。
サイン会はなく、お客さんも慣れた感じでさっさと帰宅の途に向かった。

ヤンソンス氏の指揮は、年齢を感じさせず、情熱的で大ぶりで明るく元気が良い。楽譜は見ている。バイエルン放送交響楽団は、音色が温かく、存在基盤が安定してどっしりとしている。イスラエル・フィルとは明らかに異なる。演奏終了後は、毎度ドイツ式に楽団員同士が握手し合っていた(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071121)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080526)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080923)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091109)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111105)。もう、これは習慣であろう。
しかし、ラトヴィアのリガ生まれのヤンソンス氏は、レニングラード音楽院を卒業され、ムラヴィンスキーの後任に当たる、旧ソ連系統の指揮者。音楽そのものに熱中されているからのか、多分、私が知らないだけなのだろうが、他の音楽家と比べて、インタビューなどで旧ソ連時代の困難を打ち明けるような印象や記憶がほとんどない。ウィーンやザルツブルクなど、早くから西側との接触があったからだろうか。

記念として、CDを1枚購入。ツィメルマン氏のものは、ほぼ全部自宅で揃えたか、図書館で借りて聴いたものばかりだったので、今回は失礼して、バイエルン放送交響楽団にマリス・ヤンソンス指揮のオーケストラ物を。

„Chor und Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks" (Mariss Jansons)
Witold Lutoslawski: Konzert für Orchester
Karol Szymanowski: Symphonie Nr.3 für Tenor, Chor und Orchester, op.27,
Das Lied von der Nacht“
Alexander Tschaikowsky: Symphonie Nr.4 für Orchester und Chor, op.78.

早速何度も繰り返し聴いているが、雄大な合唱曲といった感じで、本来、このようなものを普通に耳にするのが、西欧の古典音楽なのであろう。
今回の来日ツアープログラムは、以下の通り。

11月21日(金)川崎 ミューザ川崎シンフォニーホール A
11月22日(土)京都 京都コンサートホール B
11月24日(月)東京 サントリーホール C
11月25日(火)東京 サントリーホール D
11月27日(木)西宮 兵庫県立芸術文化センター A

Aプログラムをもう一度。

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調Op.15
(ピアノ:クリスチャン・ツィメルマン
ムソルグスキーラヴェル編曲):組曲展覧会の絵
アンコール曲:ドヴォルザーク:スラブ舞曲 No.15

Bプログラムは、ドヴォルザーク交響曲第9番 ホ短調新世界より」、R.シュトラウス交響詩ドン・ファン」Op.20と歌劇「ばらの騎士組曲。CとDプログラムは、その交換組み合わせだとパンフレットにはあった。