ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

改めて仰天したこと

以前からインタビュー記事で知ってはいたが、改めてびっくり仰天したことを数点。

1.1996年にチェコプラハで、ダニエル・パイプス先生が故マーガレット・サッチャー氏と二人で並んだ記念写真。サッチャー氏の強気の改革路線がパイプス先生の思想と合致することは理解していた上、ユダヤ系の自助努力に対して称賛と賛辞をサッチャー氏が示していたことも承知していた(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121106)。が、経歴に雲泥の差があり、私みたいな一般人は、やはり一般人だと後さずりしたくなってしまう。

この頃は、まだ眼鏡をかけていて、表情もきつい印象。いかにも秀才の真面目そうな風貌で、ちょっと怖い感じ。

この翌年に『陰謀』に関する著書を出版された。その中で日本に関連するほんの一部を訳出して、しばらく前に掲載されたのだが(http://www.danielpipes.org/14511/)(http://www.danielpipes.org/14644/)、日本語になったことが相当にうれしかったようで、素直に喜んでくださった。それもこれも、今だからこそ相手にしていただけたようなもので、もし何かの間違いで、あの頃にどこかでばったり遭遇していたとしたら、さっと早口の英語で簡単に品定めされ、あっさりと丁重に無視されていたことだろう。

それにしても、あの大量の執筆と国内講演と海外への講演・会議旅行の日々を、どのように時間調整し、体力を温存し、思考を練っていらっしゃるのだろうか。しかも、その合間をぬって、テレビやラジオでインタビューや討論に出演する日々。最近は数分の出番が増えたが、スタジオに出向く時間調整も難しいのだろうか。

ともかく、私の数倍以上、時間の使い方が濃いというのか、一日を何倍もフルに使っている。だから、私などに訳文を任せるなんて大胆無謀だとしか思えないのだが、それでも今も頻繁にメールを寄こされるのだから、私でもいいのだろうか。

ただし、これはあくまで「公人」(public figure)としての立場。4ヶ月前の4月にお会いした際には(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140508)、予想以上に、いろいろと気さくに話してくださった印象を持っている。顔の表情が柔らかく、とても温かく親しみやすい感じだった。性格的にちょっと脇の甘いところがあるが、相手によって、状況によって、自然に使い分けができる習性をお持ちなのだろう、全体としては非常によく訓練されている方だとも思った。

2.ナタン・シャランスキー氏のバークレーでのインタビューを見た。かなり前のことである。旧ソ連で暮らしていた頃、ユダヤ系として生き残るには、ただ優秀なだけでは駄目で、人の三倍ぐらい秀でていてやっと、というような話。

随分大きな声で威勢良く喋り続ける人なんだなぁと思いながら聞いていたら、突然、胸ポケットからユダヤ教の小さな祈祷書を取り出したのには、びっくりした。大柄でがっちりした強硬派であっても、不安が迫ってくる時などには、この祈祷書がお守り代わりになっているようなのだ。でも、まさかインタビューの途中で実物を取り出すとは、想定外で驚いた。

3.このシャランスキー氏との対談を、パイプス先生が壇上で行っている写真を見たことがある。この時も、なかなかシャープな風貌で、ちょっと近づきがたい感じ。支援者は「格好いい学者みたい」とコメントを寄せていたが、「みたい」じゃなくて「学者」だと呼ばれたいだろうに、と思った。

実を言えば、中東分析について、慣れてくると、それほど高度で深遠なことを主張しているわけではないとわかる。もっとも、中東とはそういう土地柄なのかもしれないし、あえてアラブ知識人の高度な論評を避けて一般世間向けに働きかけているということなのかもしれない。
ただし、昔からずっと同じことを飽きもせず、さまざまに表現を変えて主張し続けられるものだと、その気力にはびっくりさせられる。
生き残りをかけて、ニッチを鋭く察して、人より先に手をつけて発言し、書いてみる。その繰り返しでここまで来られたのだろうか。逞しい生存能力ではある。

日本語に訳しながら、彼我の差違について、毎度のことながら、さまざまな思いが去来する。

「未完だけれども書けたら読んでほしい」と言われている、日本についての著述を完成させる日が、本当にいつか来るのだろうか?(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140616

https://twitter.com/ituna4011
Lily2 @ituna4011
『戦争詐欺師』 菅原 出(著)講談社http://www.amazon.co.jp/dp/4062153424/ref=cm_sw_r_tw_dp_Tnn5tb0WDTESC …)が昨日届き、今日までに大半を読了した。

(転載終)

今日のブログ内容は、実は上記本に影響された心理から。この中にリチャード&ダニエル・パイプス親子先生が登場する(pp.69, 95-7)。ただし、ご両人の批判や悪口は全くなく、その同僚や元上司との過去の関係が書かれているのみ。こういうこともあって、訳文を依頼された2012年2月上旬から、まずはブッシュ政権との関わりとイラク戦争のことが非常に気になっていて、名前を出して責任を明示するつもりでいても、まずは本人がどんな方なのか、確認する二ヶ月の猶予が私には必要だったのだ。
パイプス親子先生は、さすがに経験豊富で賢いのだろう。書き方が微妙に調整されていることに気づいている。例えば、本書には、怪しげな亡命イラク人として、偽情報でアメリカ権力の中枢部に接近したというアフマド・チャラビが出てくる(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140806)。イラク情勢がここまで来ると、果たして誰が陰謀論の持ち主なのか、よくわからなくなってくるのだが、ともかく、パイプス先生の著述で確認してみると、少なくとも2003年から4年ぐらいまでは、称賛し、支持し、一緒に仕事もした相手として時折書かれている。その後はピタリと止まり、せいぜい、2011年に参考情報が少し記載されている程度である。また、かつての上司についても、昔は尊敬していたようだが、とんでもないスキャンダルが発覚したので、今は書くこともない。つまるところ、「人とはわからないもの」というパピ譲りの諦観を前提として、シニカルな態度を保ちつつも、その場その場で自分の論の助けになりそうな人物に接近し、働きかけてきたようなのだ。
このような本にも目を通した上での訳業である。一つの立場として、ご参考までに。