ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

さまざまな視点を学ぶ

昨日の続きです。談話会後、連載執筆中の雑誌のページ上に、記念として、佐藤優氏から手書き署名(サイン)をいただきました。初対面の割にはお互いに話が具体的に通じやすかったためか、立ち話程度に少しお喋りしてくださったのですが、その時、唐突に「ムスリムになったんですか?」と尋ねられました。
インテリジェンスの仕事をされていたならば、たとえわかっていたとしても、相手の性格や身元を知るために、あえてとぼけた質問もされるのだろうと即座に解し、「え!私、ムスリムに見えますか?」と、こちらも驚いてみせました。
その一言で了解されたようで、その先は、個人的に私も存じ上げている先生方の人事の話(含:初耳情報)に移ったのですが、そういう問い方そのものが新鮮でした。
佐藤氏の書かれたものには、一般人のうかがいしれない外務省の内部がエピソード的に語られていますが、なにやら、今の外交官の中には、外国人スパイと(知ってか知らずか)関係を持ってしまう女性や、ムスリムと結婚してイスラーム改宗し、祈祷時間になると絨毯を持って外務省内を歩くような男性がいるのだそうです。その場合に問題となるのが、日本人外交官なのに、対立する相手側の国益の方におもねる言動をとることのようです。例えば、ある改宗した日本人ムスリム外交官ならば、まるでシーア派のような考え方に染まってしまう、とか...。
どうしてそうなるのか。いずれも、外交官試験に合格した時には大変に優秀だが、学校秀才のために、かえって素直過ぎて、研修派遣された国の相手に順応してしまうのだという意味の自説を、しばらく前の文章で述べられていました。
それと似た状況を、私も20年前のマレーシア滞在の3年間で見聞してはいます。年齢的に微妙な難しい年頃に、異文化へ放り込まれて勤務するのですから、相当気をしっかり持たないと、視野が広がったつもりでいて、実際には部分的に感覚も「ずれて」はきます。
そういう意味では、常に母校の先生から無理難題のプレッシャーをかけられていたのは、「軌道修正」のために功を奏したのかもしれません。
ところで、Twitterにも載せましたが、近所の図書館で昨日見つけた、ナイポール(1932年- )の『イスラム再訪』(上)(下)を読んでいます。マレーシアとインドネシアの事例が出ているので、興味をそそられてつい借りてしまいいました。研究者ならば立場上、口を閉ざすようなことに対しても、観察力が鋭く、叙述と描写がなかなかおもしろいです。
2001年ノーベル文学賞受賞者とはいえ、故ジョセ・サラマーゴのように問題発言をするノーベル賞作家もいるわけで、権威になびくつもりは毛頭ありませんが、とにかく、順番が逆になってしまったものの、続けて『イスラム訪問』も読んでみたいという気にさせる作品だと思います。
これらの作品に辛辣な批判があるのは承知していますが、私にもマレーシアの滞在経験があり、その筋の勉強を続けているだけに、いずれにしても、非常に参考にはなります。研究論文だけ読んでいてはだめだということの示唆でもあります。難点は、訳者がイスラーム地域研究者ではないために、訳語に不正確さが散見されることです。複数の専門家に聞き合わせするなど、あと一押し必要だったかと思われます。