ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

リスクを踏まえて前進すること

マレーシアの地方は、今どうなっているのかわかりませんが、少なくとも首都圏は、高層ビル建設ラッシュで、子どもの頃に本で読んだ「未来都市」のような見事な高架道路が街中を縦横に走り、景観は大幅に変化していました。と同時に、あまりにも「開発」を急ぎ過ぎる反動なのか、凶悪な犯罪もクアラルンプールでは頻発しているようです。
私の赴任後1年してマレーシアに仕事で来られ、今は別のシニア外国人用ビザで滞在中の知人から、帰国報告の返事として、「犯罪発生地域:要注意」のチラシが送られてきました。私の行動範囲と重なっていた部分もあり、無事に帰って自宅にいる今の方が、思わずぞっとしました。過去4年も住んでいて、クアラルンプール市内の街名はだいたいわかるので、かえって怖くなるのです。
もっとも、私の場合は、博物館、図書館、大学施設、教会、キリスト教オフィス、本屋さんを回って、人と会って話を聞いたり、参与観察したり、写真を撮ったり、文献を複写したり、本を購入したりするのが行動パターンなので、移動手段さえ確保できれば、それほど危険はないはずです。暗くなる頃には、オフィスも閉まり、自分でも疲れがたまってくるので、自動的に夕食を買ってホテルで休むことになります。それでも、(え!この地区で?)と知ると、やはり恐ろしい気がします。
チラシを見ながら、よく主人が私を単独で出してくれたものだ、とつくづく思いました。いくら言葉に問題がなく、地理感覚も若い頃の体験で身にしみ、友人知人もいるとはいえ、やはり何事も自己責任ですから。
それを言うと、主人が目を少しうるませながら言いました。「リスクを考えていたら、この世の中では何もできない。結婚前から、あの国でリサーチをする、と決めてやっていたんだろう?それを承知で、僕も結婚したんだ。やると決めたからには、やり通さないとな。何かあったとしても、それは覚悟しているよ」「だけど、マレーシアはまだ近い国だからいいんだ。これが、欧米となったら、遠いからなあ」。
そういう考えだったんですか。どうもありがとう!
こちらは、歳もとっているし、普段から地味な格好で歩き回っているし、目的が短期決戦で集中しているので、フラフラしている暇がなく、その点では大丈夫だろうと思いますが、それでも油断は大敵。男性と女性とでは、この点でも違うのですから。
前回から常宿しているホテルでは、堅実な中流層らしき白人カップルが多く、それに地元の華人系やインド系などが混じる客層ですが、朝食時、20代半ばぐらいの日本人女性二人組も見かけました。雰囲気から一目でわかるのと、近づくと日本語でしゃべっているので判明するのですが、内心、(気をつけてね)と思ったりします。ここへ来て、マラヤ大学で働いていた頃の親の気持ちがわかるようになってきました。
最もハラハラさせられるのが、街中で立ち止まって、『地球の歩き方』などのガイドブックを広げて見ている若い単独の女性です。地元の人にとっては、非常に目立つでしょう。いいカモにならなければ、とヒヤヒヤします。オバさんになった証拠でしょうか。

さて、11月8日には、マリス・ヤンソンス率いるバイエルン放送交響楽団を聴きに西宮へ行きます。ソリスト五嶋みどりさんで、曲目はべートーヴェンのコンチェルト。自分の誕生日プレゼントです。
今借りて読んでいるのが、ピーター・L・レーガー(著)森本あんり・篠原和子(訳)『現代人はキリスト教を信じられるか:懐疑と信仰のはざまで教文館2009年)です。その他に、先日、神戸で買ったのは、次の2冊です。
エドワード・W・サイード(著)島弘之(訳)ジャン・モア(写真)『パレスチナとは何か岩波現代文庫 社会1172005/2009年
日本経済新聞社(編)『繁栄の弧のゆくえ イスラム日経ビジネス人文庫2008年

最後の本の執筆者には、かつて私の授業を受講してくださった方も含まれています。ページを見て驚きました。