ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

CDの小話

昨日借りたCDには、ギドン・クレーメルによる含蓄に富む文章が添えられていました。

「未遂の試み
音楽は、語り手も演奏者も実際にはかなわない非常に多くの解釈をそれ自体に内包している。我々演奏家はこの「無限」の王国への案内人として活動しているに過ぎない。音楽を「理解した」と主張する者は、幻想を経験している(または作り出している)のである。」
「バッハの手稿譜の持つ永遠の価値をまず第一に慈しむ者は、博物館や、本や、そしてウェブサイトで、この貴重な記録に触れてみるべきである。スコアに書かれたものを完全に再現し、表現できる演奏家はいない。しかし、多くの録音が示すように、演奏家はそれぞれ何か違ったものをもたらすことができるのだ。それは、生ける魂の息吹である。」(訳:藤井孝一)

さすがは、達意の文章だと思います。以前、彼の演奏会にも行きましたし(参照:2008年9月23日付「ユーリの部屋」)、自叙伝のような3冊も興味深く読みました(参照:2008年9月26日付「ユーリの部屋」)。
今聴いているのが、そのライナーノートの入った『J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ(全曲)』(2005年)ですが、年季が入っているだけに、深い解釈と鋭いテクニックが響いてきます。若手演奏家には、とてもかなわないだろうと思われる演奏です。録音は、2001年9月25日から29日までロッケンハウスの聖ニコラウス教会、そして2002年3月10日から15日までリガ、とのこと。特に、前者は9.11事件直後だけに、ドイツの血を引くユダヤ旧ソ連人として育ったクレーメル氏にとっても、さぞかし思いは複雑だったことでしょう。

その他に借りたのは、次の通りです。
・『内田光子 ピアノ・ソナタ第30番・第31番・第32番Philips2006年
・『ユンディ・リ イン ウィーンDeutsche Grammophon2005年

内田光子さんのソナタとは、もちろんベートーヴェン作曲のものです。
2000年ショパン・コンクールで優勝した若手人気演奏家ユンディ・リさんは、曲目がおもしろそうだったので借りたのですが、どうやらCDに傷が入っていたらしく、最初のスカルラッティソナタ2曲(その昔、私も練習した曲)が終わると、止まってしまい、先に進みませんでした。その旨、図書館に伝えて返却しましたが、かえすがえすも残念です。