ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

演奏会の感想 (その1)

すっかりご無沙汰してしまいました。このところ、かかりっきりになっていた作業があり、それに没頭していました。
もう何年も前から、(一度は納得のいくようにまとめておかないといけないなあ)と思っていたテーマだったのですが、始めてみると、手のかかることかかること...。予定を遙かに上回るほど時間がたってしまった次第です。
インフルエンザの流行ということもあって、外出もせずに家で控えていたのですが、だからこそ時期的には作業に集中できてよかったのだろうと思います。
とはいえ、5月17日は東梅田教会へ毎年恒例の教会音楽会を聴きに行き、5月26日には、シンフォニー・ホールで庄司紗矢香さんのリゲティの熱演を満喫しました(参照:2009年4月26日付「ユーリの部屋」)。音楽あってこその作業の進展。やっぱり音楽はいい!
大阪フィルの定期公演を兼ねての庄司さんの演奏については、また改めて書いてみたいと思います。とにかく、行けてよかった!日本でのリゲティ初演に当たる日にお目にかかれたからでもありますが、この後、東京でN響との共演がどうなるか、楽しみですね。もちろん、テレビ放送も録画する予定です。
この時期なので、演奏会もキャンセルになるのかと思っていましたが、サイン会がなくなった他は、通例通り。教会もシンフォニー・ホールでも大勢の人々が集まっていました。ホールのスタッフは皆マスクをしていましたが、観客の方は、マスクも確かに目立ったけれども、普段通り、落ち着いて演奏に聴き入るという体勢でした。ある大学からは、海外の外国人講師をお招きしての講演会をキャンセルにするとの葉書通知が届きました。社会責任から予防的に、ということらしいですが、それならクラシックコンサートだって、あれほどのホールに人がひしめき合い、しかも、2時間ほどを共に過ごすわけですから、どうなるのかなあ、と。しかし、さすがは音楽会!全く杞憂でした。かくいう私も、花粉用マスクを携帯はするものの、全然使っていません。
それにしても庄司紗矢香さん、最近、画展も開くようになり、ますます才能開花の時期ですね。ホールでもチラシが無料で配布されていました。なかなかセンスのいい、おもしろい絵が掲載されていました。へえ、こういう共感覚で生きている人なんだ、本当の芸術肌なんだなあ、と改めて驚きました。
私の場合、本を読んだり、美術館で絵を見ていたりすると、音楽が頭の中を流れてくるという経験は頻繁にありますが、音楽を聴いたり演奏したりした時に印象が絵に浮かぶという経験はありません。どちらかというと、思い出が蘇ってきたり、まだ見ぬ将来を想像したり、というだけです。つまり、コンサートホールでも、演奏家を食い入るように見つめ、生の音そのものやメロディやリズムに聴き入るのに夢中というのか、終わって初めて(いい時間が過ごせたなあ)と、たゆたうような感覚しかないのですが。
ヴァイオリニストとして絵も描いて公表するということについて、フランスでのインタビューによれば、彼女には「何も恐れるものがない」のだそうです。26歳という若さからくるものでもあると思いますが、「人生は一度きり。音楽だけに縛られなくてもいいと思う」と日本の音楽雑誌でも答えていらしたので、多才な人はやはり違うと思います。
フランスでは、「彼女自身のイニシアティブによって」という点が特に評価されていたようです。音楽と美術のコラボレーションという形のようですが、東京の小さな展示会では、10畳ほどのスペースに、9枚ほどの油絵が並べてあり、そのうちの何枚かの絵に添えられたヘッドフォーンで、彼女の演奏も聴けるというしくみなのだそうです。
確か、まだ10代後半の頃のインタビューでも、実現できるかどうかはわからないけれど、将来やってみたいことは、自分が演奏している時に頭に浮かぶ絵柄をバックに流せたらいいな、ということをおっしゃっていたかと思います。それが、ようやく形になりつつあるということなのですね。これもパリだからこそ?
考えてみれば、あの衝撃的なデビューから早くも10年。化粧っ気の薄い、かわいらしい顔立ちと笑顔、それでいて音楽に没入する真摯な演奏ぶり、とても小柄なのに、想像できないほど大きく伸びやかな音を奏でるヴァイオリンとの対照性、深くユニークな考えを丁寧で落ち着いた話し方で語るところ、ちょっと古風で懐かしくも新しい魅力がまたヴァイオリン界から出てきた、と思ったので、ずっと注目してきたのですが、今までのところ、期待を上回る活躍ぶりです。演奏会も、もうこれで6回目。今年は2回目です。ロンドン交響楽団・コリン・デイビス指揮の京都コンサート・ホールでのシベリウスの協奏曲、ケント・ナガノ指揮の大阪NHKホールでのメンデルスゾーンの協奏曲、アラン・ギルバード指揮のブラームスの協奏曲、兵庫県立芸術文化センターでの小菅優さんとのリサイタル、いずみホールでのイタマル・ゴランとのリサイタル、そして今回の超技巧難曲リゲティ....あの何でも挑戦してみる思い切りの良さと新鮮さが話題作りにも大きく役立っているのでしょう。
しかし「リゲティをレパートリーに入れた」なんて、パンフレットにも書いてしまって、すごい度胸、とも思います。20代の今なら、努力次第で何でも弾けてしまえるのでしょうが、これが40代、50代の体力になっても、同じようにできるかどうか...。でも、せっかく演奏会に出かけても、知っている曲ばかりではおもしろくもありませんから、やはりこういう実力派の人気の高い演奏家に、せっせと新しい曲を披露してもらえれば、こちらも世界が広がり、聴くレパートリーが増えるというわけです!
今回、演奏会チケットを入手したのは一ヶ月前で、音楽雑誌のインタビューを読んで、是非とも生で聴きたいと思ったのでした。A席でも6000円とお安く、前から4列目の右側のソリストがよく見える位置でした。ただ、全体を見渡せなかったのが残念といえば残念。2階席と3階席と正面の席はやや空席が目立ちましたが、それでも1階中央席はほぼ満席でした。
あ、この辺で止めなければ。最近、音楽雑誌も読んでいないので、これから用事も兼ねて、行ってきましょう!