ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

おまけ

11月の三つの演奏会の記録については、中途半端ですが、残りはまた後ほど…。(後注:文体が途中で常体から敬体に変化していますが、自然な印象を出すために修正なしで掲載しました。)

・2012年11月3日 大阪いずみホール 大阪ホテル・ニューオータニ
http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121104)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121105)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121106)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121109

昼食時、何とカシオーリ夫妻が、すぐ隣のテーブルに我々の後から来て座られた。奥様はサラダのみ、カシオーリ氏はトマト・スパゲティ風を注文していた。黒いジャンパー風の上着を羽織り、やや猫背だった。
実は、夫妻にお目にかかったのはちょうど2年前の同じ大阪いずみホールで、同じく庄司紗矢香嬢とのリサイタルの時だった。神経質な天才肌の気難しいタイプかと思っていたが、サインをいただいた際、にこっと大きくうれしそうに微笑んだ表情が、実に天真爛漫で新鮮だったことを思い出す。
とはいえ、こちらに来て座られた直後は、我々もフルコースの食事に夢中になっていて一瞬、どなたなのかわからなかった。スペイン系にしては言葉が聞き取れるような、聞き取れないような感じで、南アメリカのラテン系にしては落ち着き払っていると思い、(どこから来た人達なのだろう?)と不思議だった。
海外からの観光旅行者にしては豪勢なホテルに泊まっているらしく、不釣り合い。お金(と時間)がたっぷりあるにしては若過ぎる。質素な普段着だが、インテリ風できちんとした教養層の風格も漂っていて、(あれ?)と思っていた。
ヒントは、私の右隣に一人で座り、流暢だがくだけた感じの英語で話しかけていた中年女性。自分は「ジャパニーズ・カレー」を注文したのだと言って、笑っていた。「サヤカは後から来る」とか何とか話していたので、(これは世話係の音楽事務所の人なのだろうか?)というところで、ピンときた。
こういう舞台裏の人間関係は、立派なコンサート・ホールで非日常の音楽世界を2時間ほど過ごすだけではわからない面がある。カシオーリ夫妻は、日本側のお世話係のことを、ありがたくも思いつつも、どこか(我々とは別世界の人間だ)という感じで、あっさり対応している様子だった。ビジネスなので、こういうお世話係の存在なしには経営もホール選択も次の演奏会の仕事も入らないのだが、ウマが合うかどうかで、相当、演奏旅行の経験が異なってくることだろう。特にクラシックの演奏家達は、神経質で細やかな性格の人が多そうだから…。
さて、一品ずつのみの注文だったので、我々より後に来られて先にレストランを後にしたカシオーリ夫妻。緊張度が、これから受け身でひとときを楽しむ予定の我々とは全く違うのだろうが、少し休んで着替えて、気合いを入れてホールに向かうのは、慣れているとは言え、海外の場合は、体調管理も大変だろうなぁ…。
余談だが、今回、我々が身分不相応にもホテルでフルコースを堪能したのは、実はこの「ウィーン音楽祭イン大阪」の演奏会チケットとドッキングで割安価格になっていたことを主人がインターネットで発見したため。そもそも、私の誕生日と結婚記念日を兼ねて、何か思い出に残る行事にしよう、と考えてのこと。それにしても、単に平凡な我々の生活にも、期待以上にびっくりするような不思議かつ貴重な出会いというものが、突然降って沸いてくる。
というのは、食事後まだ時間に余裕があり、ホールの入り口も閉まっていたため、天気が悪くはなかったので、外のコンクリートの広場風のところで腰掛けて本でも読もうか、と待っていたところへ、今度は(12時50分頃)、髪の毛を一つにしばり、黒のスラックスにベージュ系セーターという普段着姿の小柄な庄司紗矢香さんが、付き人らしい女性と二人で、ヴァイオリン・ケースを背にしょって、荷物片手に目の前を歩いて来られたからです。あまりにも普通っぽい感じの20代の女性で、ヴァイオリンがなかったら誰だか一瞬わかりませんでした。日本語で、気楽に世間話をしている様子でした。
「あれ?紗矢香ちゃんじゃない?」と、思わず声を出してしまったのですが、あっさりと無視されました。お客さんには公平にというポリシーなのか、(私はタレントじゃないのよ〜)という姿勢なのか、演奏会前の貴重な時間には、余計なエネルギーを消耗したくないということなのか…。(ついでに、サインをいただいた時には、紗矢香さんの目元が非常にきつい感じだったのには驚きました。)

彼女の演奏会は、もうこれで9回目。ここで一覧表にまとめておきますと…。
1.2004年3月 ロンドン交響楽団の日本ツアーでコリン・ディヴィス指揮
シベリウスのヴァイオリン協奏曲(京都コンサート・ホール)
2.2005年4月 ベルリン・ドイツ交響楽団の日本ツアーでケント・ナガノ指揮
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(大阪シンフォニー・ホール)(ユーリ注:2009年5月28日付「ユーリの部屋」(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090528)では、「大阪NHKホール」と間違えて書きました!)
3.2005年12月 北ドイツ放送交響楽団の日本ツアーでアラン・ギルバート指揮
ブラームスのヴァイオリン協奏曲(大阪NHKホール)
4.2007年3月24日 小菅優とのデュオ・リサイタル (兵庫県立芸術文化センター
http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070704
5.2009年1月 イタマル・ゴランとのデュオ・リサイタル(大阪いずみホール
http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090117)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090123)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090126
6.2009年5月 大阪フィルとリゲティのヴァイオリン協奏曲(大阪シンフォニー・ホール)
http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090528)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090602
7.2010年11月 ジャンルカ・カシオーリとのデュオ・リサイタル(大阪いずみホール
http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20101106
8.2011年11月 シドニー交響楽団の日本ツアーでウラディミール・アシュケナージ指揮ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(兵庫県立芸術文化センター
http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111018)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111130
そして今回です。
実は、7番目の演奏会と時期も場所も二年ぶりに見事にドッキングしていて、サイン会のために購入したCDも、紗矢香さん用とカシオーリ使用と、ちょうど色違いとか種類が同系統という、これまた珍しくも記念すべきものとなりました。こういう組み合わせと出会いは、めったにないことだと思い、大切にしたいと思います。

https://twitter.com/itunalily65


3 Nov Lily‏@itunalily65
Gianluca Cascioli ~ L.V. Beethoven (http://www.amazon.com/dp/B0000012WZ/ref=cm_sw_r_tw_dp_4XpLqb1A4KCD5 … …) I bought it in Osaka today and received his signature after the recital.


3 Nov Lily‏@itunalily65
Sayaka Shoji - Beethoven:Violin Sonatas Nos. 7 & 8 (http://www.amazon.com/dp/B008GVGIUQ/ref=cm_sw_r_tw_dp_fWpLqb1M89JNX … …) I bought it in Osaka today and received a signature from her.

なのですが、ちょうど2年前の2010年11月5日に大阪いずみホールで購入した演奏会記念のサイン入りCDは、カシオーリ氏がDeutsche Grammophonの“Bach/Busoni・Beethoven・Debussy・de Falla・Liszt・Prokofiev・Scarlatti”(2010年11月6日付「ユーリの部屋」)、紗矢香嬢とのデュオでは青系のカバーデザインの『ベートーヴェン・ヴァイオリンソナタ 2番9番』でした。
今回も、同じくカシオーリ氏がDeutsche Grammophonの“Beethoven・Webern・Schoenberg・Ligeti・Boulez”、紗矢香嬢とのデュオではオレンジ系の同じカバーデザインの『ベートーヴェン・ヴァイオリンソナタ 7番8番』でした。
確かに、30歳前後の二人が演奏している割には、自然に力が抜けていて、細かな部分も工夫を凝らした音色とテンポと神経が集中していて、素晴らしい演奏ぶりです。何度聴いても落ち着きと深さと心改まるような新鮮な印象を与えられるのです。
話は前後しますが、サイン会の時、握手も言葉掛けも「ご遠慮ください」で、さっさと移動するように指示されましたが、それでも、写真撮影は可能だったようで、気がついたら、携帯で主人がサイン中のお二人の近影を写してくれていました。
写真と言えば、ホール開場前の時間に、70代ぐらいの男性がカメラを出して「撮って欲しい」とのことでした。少しお話を伺うと、三年に一度のここのウィーン音楽祭には来ていたものの、今年で終わりになってしまったとの由。それはそれは、記念すべき時に我々も運良く参上できたのでした。「次に開催される時には生きているかな?」と。「もちろん、お元気でいらしてください」と私。こういう一期一会の気持ちで、音楽会を楽しみにされている日本人もいるということこそが、いくら景気が悪く、国力が落ち目である日本だとは言え、文化を支えているのだということです。(かくいう我々も?)
実は、9月半ば、ホールか音楽事務所から電話があり、「庄司さんの強い希望で曲目変更があったのですが、お葉書を出しましょうか」と言われました。相変わらず、忙しくしていた頃でもあり、演奏会とは、余程珍しい曲や売り物とする曲目でない限りは、特に私としてはこだわりがありません。何年も前に決めてあったプログラムで型にはまった演奏をされるよりは、「これを是非とも」という会心の作で演奏していただける方がありがたいからです。
ただ、その時の電話の調子では「紗矢香さんの都合で、お客様にご迷惑をおかけして…」と言いたそうな雰囲気を感じました。確かに、チケットを購入した名簿を見ながら、一人一人に電話をかけるだけでも大変な作業ですし、ブログなどを事前に見ていたところ、曲目変更をした紗矢香さんを「音楽だけに生きているようなタイプで、周囲の人々のことを30近くにもなったのに考えていない人ですね」などと、責めるような言葉も見出され、なかなか難しいところだと思った次第です。(後日、西宮のツィメルマン氏も、同じように曲目変更されました。この時には、電話連絡ではなく、お葉書が届きましたし、プログラムにもその旨お断りが書いてありました。)
プログラムです。

11月3日(土・祝)午後2時開演
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調op.24《春》
ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ

(休憩20分)

ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
シューベルト:幻想曲 ハ長調D.934, op.159

《アンコール》

この続きは来年のお楽しみに….。